【介護業】技能実習を受け入れるために必要な対応と受け入れ中の注意点
介護業界は現在、国内の人材不足という問題に直面しており、2035年には約79万人の人手が不足すると言われています。そんな介護業界で注目されているのが、外国人材です。
介護業において外国人材を雇用する方法はいくつかあり、今回はそのなかでも「技能実習制度」に着目して受け入れの方法や、注意点について説明します。
介護業における技能実習生の受け入れ状況
技能実習制度とは、外国人である技能実習生が日本の企業や個人事業主などと雇用関係を結び、出身国において修得が困難な技能を修得するための制度です。
本来は海外への技術移転のための制度、つまり国際貢献の意味合いを持つものですが、日本人の人材を雇うことが難しい分野で、若く精力的に働く人材を呼び込むためにも活用されています。
介護業においては、平成29年11月より、技能実習制度の対象職種に介護が含まれるようになりました。申請件数は年々伸びており、2020年1月末時点では、申請数10,225件で、認可数8,652件となっています。
日本の介護業を学びたいと考える外国人が、順次入国して全国の介護事業所で働き始めているのです。
介護事業所で技能実習生を受け入れることのメリット・デメリット
介護事業所で技能実習生を受け入れる場合、下記のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
一定期間人材確保が可能
技能実習評価試験の3級相当に合格すると、実習生は最長5年間日本国内への在留が可能となります。それに加え、基本的に技能実習制度では転職が認められていません(2023年4月現在)。
この2つから、同じ人材が一定期間継続して就労することになります。人手不足や離職でお悩みの介護事業所にとっては、問題解決に大きく貢献することになります。
介護業務の経験者を受け入れられる
技能実習「介護」の制度には、技能実習生側の要件として「同等業務従事経験(いわゆる職歴要件)」と呼ばれるものがあります。
外国において、日本で従事する業務と同等の業務に従事した経験を持つ人や、技能実習に従事することを必要とする特別な事情がある人でないと技能実習生として来日できません。
そのため、ある程度の経験を持つ人を自社に受け入れることができるのです。
また、介護は業務上日本語でのコミュニケーションが必要不可欠です。そのため、日本語能力の要件も他の分野の技能実習生よりも厳しく設定されています。
よって、介護の経験を積んでおり、ある程度日本語での交流が可能な人材が集まるのです。
デメリット
コミュニケーションの難しさ
メリットの項目で、介護の技能実習生は他の分野の技能実習生よりも日本語に習熟している、とお伝えしました。介護の技能実習生の場合、1年目でN4レベル(基本的な日本語を理解することができる)を求められ、2年目では、N3レベル(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解しうることができる)が求められます。
しかし、介護の専門的な用語を挟んだ会話や、入所者の体調などの細かなニュアンスを伝える場合などは、レベルが不足することも考えられます。
日本人スタッフ以上にケアをする必要がある
技能実習生は外国から遠く日本にやってきて仕事をするため、最初は日本の文化などを何も知らない可能性が高いです。
日本人スタッフ以上に気にかけて、ケアをし、こまめな教育が求められます。
もし、社内にあるマニュアルが日本語のものしかないのであれば、必要に応じて翻訳版を作成するなどの対応が必要です。
技能実習「介護」で受入れを行う場合のフロー
技能実習「介護」で外国人材を受け入れる場合、フローを簡単にまとめると、
①送り出し機関による事前選考/面談
②日本への入国
③監理団体による入国後講習
④介護事業所での受入れ
⑤帰国
となります。それぞれのフローについて説明します。
①送り出し機関による事前選考/面談
送り出し機関とは、日本で働きたい、日本の技術を習得したいと考える外国人を集め、日本へ送り出す機関のことを指します。
送り出し機関が募集要件によって応募者を募り、選考を行って応募者を絞ります。この段階から受入れ先の施設が面接や実技試験等を行うこともあります。
人材が決まれば、雇用契約を締結します。送り出し機関は、入国前に必要な事前教育(日本語教育など)を実施します。国や送り出し機関によって異なりますが、約8ヶ月ほどかかります。
② 日本への入国
外国人材が入国するまでに受入れ体制の準備をします。技能実習計画認定を作成し、申請が通らなければならないのですが、そこには、技能実習における技能実習責任者、技能実習指導員、生活指導員を記載する必要があります。
これらの役職は、常勤役職員から各1名以上の選任が必要です。
その他、技能実習生が日本で暮らしていけるように、住居の確保や生活用品の用意などを進めておき、実習生の来日を待ちます。
なお、それぞれの要件を満たしていれば、3者ともに兼務が可能です。
③監理団体での講習
入国後は、実際に介護事業所に配属される前に、監理団体が入国後講習と呼ばれるものを実施します。
学ぶ内容としては大きく分けて、
・日本語
・入管法令/労働関係法令等
・日本の文化、生活のルール
などがあります。
受講期間は一般的に1ヶ月程度の期間がかかります。
④介護事業所での受入れ
入国後講習が終われば、いよいよ就業する介護事業所へ移動します。一般的には、このときの引率は監理団体の職員が行い、役所での転入手続きや住民票の取得、銀行口座の開設等を行います。
その後は受入れ企業にて入社時のオリエンテーションや安全教育等を実施し、技能実習がスタートします。
⑤帰国
技能実習制度は、就労期間により、1号~3号の3つに分けられています。1号の資格で1年、2号の資格で2年、3号の資格で2年の合計5年間実習が可能です。
1号から2号、2号から3号へ移行するためには定められた試験を受けて合格する必要があります。
5年間の実習が終わったら、基本的には実習生は帰国します。
が、業務に習熟した実習生に引き続き働いてほしいと考えるのであれば、在留資格を特定技能への切り替えたり就労ビザへの切り替えたりするなどの手段が考えられます。
技能実習「介護」で受入れを行うための要件
技能実習「介護」で受入れを行うためには、受入れ企業の側でいくつかの要件をクリアしなくてはなりません。
なかでもいくつか代表的な要件について説明します。
①技能実習指導員の設置
②受入れ可能な職種・事業形態
③受入れ人数制限の確認
①技能実習指導員の設置
技能実習生受入れのフローの項目でも触れましたが、技能実習生を受け入れるためには、「技能実習指導員」を設置しなければなりません。
この役職は、実習生を直接指導する人のことを指します。技能実習が計画通りに行われているか、実習生がきちんと技術を学べているかを監督・指導する役割を果たします。
技能実習指導員は誰でもなれるわけではありません。要件として、
・実習を行う技能について、5年以上経験があること
・技能実習生が実習を行う事業所に所属していること
などがあります。
技能実習指導員の他にも、事業所ごとに専任され、技能実習全体の管理や運営を行う「技能実習責任者」や、実習生の日常生活をサポートする「生活指導員」などの役職の設置も必要です。
②受入れ可能な職種・事業形態
技能実習生「介護」を受入れできるのは、
・設立から3年以上が経過している
・「介護」の業務が実際に行われている
という2点をクリアしている事業所です。
ただ注意が必要なのが、上記2点をクリアしていたとしても、訪問系サービスを行う施設で受入れることはできません。
通所介護や、施設系のサービスを運営する事業所が受入れ可能です。
さらに、実習生が従事できる業務内容にも細かい規定がありますので、詳細を知りたいとお考えの方はぜひ弁護士へご相談ください。
③受入れ人数制限の確認
団体監理型の技能実習制度(監理団体を活用する方法)で実習生を受け入れることを検討しているのであれば、事業所ごとに受入れられる技能実習生に制限があることに注意が必要です。
上記のように、優良な実習実施者と認められれば、受入れ可能人数を増やすことができます。
弊事務所でサポートできること
弊所では、介護業で技能実習生を受入れたいとお考えの企業様に下記のサポートを実施しております。
外国人材採用支援
御社の就業規則や雇用契約書を確認して、実習生受け入れに際して変更が必要な項目についてアドバイスをいたします。
外国人材を受け入れる場合、外国人本人だけでなく、マネジメントをしたり一緒に業務を行う日本人の側にも制度の知識や理解が必要不可欠です。
受け入れをする体制を整えるため、必要な準備や社内研修もご提案させていただきます。
外国人雇用顧問
技能実習生を始めとした外国人材は、「受け入れてそれで終わり」ではありません。
継続的に受け入れ体制を見直し、法令改正などがあればそれに合わせていく必要があります。万が一受け入れに問題が発生した場合は、それに適切に対処することも求められます。
弊所では、外国人雇用顧問というサービスを提供しています。継続的に専門家が携わることで、採用前の体制づくりから、採用後のトラブル対応まで対応が可能となります。
法令違反対応
外国人材を自社で受け入れるのであれば、入管法の理解と遵守が必須です。しかし、入管法は非常に複雑で、網羅的に理解している専門家は非常に少ない法令だといえます。
弊所では、入管法に造詣が深い弁護士が皆様のサポートをいたします。実際に法令違反のトラブルが発生してしまったときの対処だけでなく、今後同じ問題を発生させないための対策のご提案を差し上げます。
監理団体・現地送り出し機関の紹介
弊所では、監理団体や外国の送り出し機関と連携を取りながら、各社の外国人雇用のサポートを行っております。
連携する監理団体や外国の送り出し機関をお探しの場合は仲介したり、ご紹介することが可能です。
弊所では、ベトナム、ネパール、インドネシア等の送り出し機関と連携しております。一度お問い合わせください。
介護業はこれからも需要が高まり、人材の確保が各社で激化することは必至です。
技能実習制度を活用すれば、海外の若く、学ぶ意欲のある人材を受け入れられます。弊所がていねいにサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。