外国人の雇用の基礎知識

1、外国人を雇用する際の留意点

(1)外国人を雇用する場合と日本人を雇用する場合との相違点

 

Q 雇用する外国人と日本人の違いは何ですか。外国人を雇うことはできますか。

 

 日本人なら、会社側が了承すれば「学歴・経験不問」で社員として採用可能で、原則としてどんな業務に従事することもできます。

 しかし外国人の場合は、就労可能な在留資格が許可されなければ仕事に就くことができないのです。

※詳細については下記をご覧ください。

 

A 1 概説 

 日本人なら、会社側が了承すれば「学歴・経験不問」で社員として採用可能で、労基法や最賃法などを守っていれば、単純労働を含め、原則としてどんな業務に従事することもできます。

 しかし外国人の場合は、就労可能な在留資格が許可されなければ仕事に就くことができないのです。日本人と外国人の雇用で一番違う点はこの点です。

 この在留資格は、車の運転免許と同様に、行政機関(法務省入国管理局)が与える許可の一種です。外国人が在留資格で許可された範囲を超えて活動すると違法になる場合があるので注意が必要です。

 就業可能な在留資格は、一定の経験年数や学歴がなければ許可されません。また、保育士やヘアメイクなどの職種に加え、単純労働的な仕事には就労の在留資格が許可されません。

 

2 対応方法

 就労可能な在留資格が許可され、日本国内で仕事に就くことが可能になると、日本人に適用される法律は、原則、外国人にも適用されます。

 労基法や最賃法、労災保険の適用や社会保険の加入、税金の取り扱いなどは、基本的に日本人と同様に外国人社員にも適用されます。

 また、大学・専門学校の外国人留学生のアルバイト雇用にも注意が必要で、入管局の「資格外活動の許可」を得ていることが必要となり、アルバイトは週28時間以内に限り可能です。なお、まあじゃん店、ナイトクラブなど風俗営業の業種ではアルバイトすると「不法就労」となる為、アルバイトできません。

 

3 本件ではどうすべきか

 社員として雇用するときは、まずは「就業可能な在留資格」が許可されているかを確認します。外国人留学生の場合は、入管局の「資格外活動の許可」を得ているかを確認して下さい。

 許可を得ていれば決められた範囲内で日本国内で仕事に就くことができますが、その際、日本人に適用される法律は、原則、外国人にも適用されますので、労基法や最賃法、労災保険の適用や社会保険の加入、税金の取り扱いなど、基本的に日本人と同様にきちんと外国人社員にも適用して雇用手続きを進めていくことになります。

 

 

(2)外国人を雇用する場合適用される法令

 

Q 外国人を雇い使うときの注意点はありますか。

 

A 1 概説

 日本人と同様に外国人にも労基法や最賃法、社会保険が適用されます。その上でさらに、外国人の場合は入管法のルール・制限を守らなければなりません。

 

2 対応方法

 日本人と同様に法令を守り、労働条件・保険・税金も日本人採用者と同じ扱いにする必要があります。さらに日本人にはない在留資格のルールを守る必要があります。

 不法就労は、雇用した会社の社長や外国人本人が罰せられます。

 密入国の不法滞在の外国人が日本で働いたり、働くことが入館管理局から許可されていない外国人が、無許可でアルバイトをすることは不法就労となります。

 また、外国人留学生が週28時間を超えてアルバイトをすることや、専門的な仕事をするための就労ビザを持つ外国人が、単純労働しかしていない場合も不法就労に当たります。

 このように、外国人は、日本人と同じようには働くことができないのです。

 

3 本件ではどうすべきか

 外国人を雇うときは、日本人従業員と差別することなく雇い、そのうえで外国人の在留資格を守ることが必要となるので、

 ・労基法などの法令を守り、社会保険・税務を正しく取り扱う

 ・外国人の在留を管理する入管法を理解し、外国人に「不法就労」をさせない

ことが重要です。

 労基法は労働条件について、外国人に差別的取り扱いをすることを禁じています。賃金、労働時間、休日他の労働条件は日本人と同様の取り扱いになります。

 健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険などの社会保険や、所得税・住民税も原則、日本人と同様の取り扱いになります。また、平成24年7月から日本人と同様に、外国人住民にも住民票が作成されるようになっています。

 外国人を雇うときのルールは、入管法で決められており、ルールを破ると不法就労となり、雇用主である社長や事業主に懲役3年以下または300万円以下の罰金が科せられます。

 外国人の雇用が初めてで知らなかった、悪意はないがうっかり不法就労の状態になっていた、ということは一切通用しません。

 在留資格、入国管理局の手続きや外国人雇用状況の届出などについて正しく理解し、正しく手続きをする必要があります。

 

 

(3)就労ビザが出ない職種・分野

 

Q 就労ビザが出ない職種や分野はありますか

 

A 1 概説

 あります。日本は移民を受け入れない国ですので、どんな仕事でもいいから日本で仕事がしたいと外国人が希望しても、入管局は就労の在留資格を許可しません。

 単純労働のような仕事には就労の在留資格がありません。専門的・技術的分野の仕事なら在留資格が許可されます。

 現在の入管法では、「27種類の在留資格(※)」に属さない業務があり、それらは「該当する在留資格なし」として、在留資格が与えられないのです。

 この考え方は、専門学校の学科(専攻)によっては、学校を卒業しても日本で就職できないという形で現れます。

 例えば、美容師、ヘアメイク、保育士、救急救命士などは、現在の入管法では街頭する在留資格が「ない」ので、就労できないのです。つまり、日本人と同じようには採用できない職種・分野がある、ということです。

 

※27種類の在留資格(平成28年4月現在)

「外交」「公用」「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」、「興行」「技能」「技能実習」「分化活動」「短期滞在」「留学」「研修」「家族滞在」、「特定活動」「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」

 

2 対応方法

 外国人の受入れを判断する日本の入管局の判断基準は

①専門的、技術的分野の外国人の受入れを積極的に推進する

②いわゆる単純労働者の受入れについては、十分慎重に対応することとしている。

 

 入管局が単純労働と判断する業務には、就労の在留許可を出しません。入管法には、単純労働に従事することを目的とした在留資格は設けられていないのです。

 例えば、外国人留学生が大学や専門学校に在学中に単純労働に該当するアルバイトをしていて、卒業後にその仕事で正社員になりたいと本人が希望しても、就労の在留資格の許可はでません。

 

3 本件ではどうすべきか

 入管法が考える単純労働、入管法で決められた「27種類の在留資格」に属さない業務には在留資格が「ない」ですので、就労ができない、つまり、雇用できないということに注意が必要です。

 その為にはやはり、まずは「就業可能な在留資格」が許可されているかを確認する必要があります。 

 

 

(4)就労に制限のある在留資格・制限のない在留資格

 

Q 就労に制限のある在留資格とはどんな資格ですか

どんな在留資格が就労に制限がなく、どんな在留資格は就労に制限があるのだろう・・・?

お答えします!!

 

この4つ以外の在留資格は「在留資格で許可された範囲に限り就労可能」か「就労不可」のいずれかです。

ありがとうございます。不法就労にならないように注意してみるようにします。

 

 

 

A 1 概説

 在留資格は就労の制限の有無で2つに分かれます。

 

<就労に制限がない在留資格>

「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」の4つです。

 

<就労に制限がある在留資格>

①在留資格で許可された範囲に限り就労可能

 「技術」、「人文知識・国際業務」、「技能」、「研究」、「教育」など。 

②就労不可

 「留学」、「家族滞在」、「短期滞在」など。

 

 

2 対応方法

 

<就労に制限がない在留資格>

「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」の4つです。

これらは日本人と結びつきの強い身分や法律上の地位を持つ外国人です。この4つは「身分系」の在留資格と呼ばれることがあります。

 これらの在留資格が許可されていると、日本人と同様にどんな仕事にも就くことができます。単純労働的な仕事に就いても問題ありません。在留カードの「就労制限の有無」欄には「就労制限なし」と書かれています。

 

 一方で、この4つ以外の在留資格は「在留資格で許可された範囲に限り可能」か「就労不可」かのいずれかになります。

 

<在留資格で許可された範囲に限り就労可能>

 「技術」、「人文知識・国際業務」、「技能」など。在留カードの「就労制限の有無」欄には「在留資格に基づく就労活動のみ可」と書かれています。

 例えば、製造業の理工系エンジニアに与えられる「技術」の外国人が、工場の製造ラインで製品の梱包作業に従事したり、配送業務に就くことは認められていません。もしそういった業務についていると、資格外の活動をしていることに当たり、不法就労になります。

 

<就労不可>

 「留学」、「家族滞在」、「短期滞在」など。在留カードの「就労制限の有無」欄には「就労不可」と書かれています。つまり、日本で働くことが認められていない在留資格です。

 ただし、入管局からあらかじめ「資格外活動の許可」を得ていれば、週28時間以内などの範囲内でならアルバイトをすることができます。

 

 

3 本件ではどうすべきか

 まずは「就業可能な在留資格」が許可されているかを確認し、許可されていれば『在留カードの「就労制限の有無」欄』がどのような記載になっているかを確認する必要があります。「就労制限なし」であれば日本人と同様にどんな仕事にも就けますが、「在留資格に基づく就労活動のみ可」と記載があれば、在留資格で許可された範囲内での活動に制限され、違反すると「不法就労」になりますので注意が必要です。

 

 

2,外国人を派遣社員として受け入れる場合

 

Q 派遣社員として外国人を受け入れる際に注意すべき点はありますか。

派遣社員で外国人を雇い使うときに注意すべきことはあるんだろうか・・・?

お答えします!!

派遣社員の外国人の場合の注意点がよくわかりました。ありがとうございました。

 

A 1 概説

 日本人の派遣社員と同様の扱いとなります。派遣先と派遣社員(外国人)との間で雇用関係はなく、派遣元と派遣社員(外国人)間に雇用関係があります。健康保険・厚生年金保険・雇用保険などに加入しているかを確認し、適切な雇用関係であることが必要です。

 なお、「人文知識・国際業務」、「技術」など就労の在留資格の外国人が働く場合、従事業務は「専門的・技術的な分野」に限られます。庶務業務は派遣社員にしてもらおうという扱いをすると、単純労働的な業務に従事していると見なされ、不法就労になることがありますので注意が必要です。

 

2 対応方法

 派遣社員を受け入れるときの手続は、原則、日本人と同様となります。派遣会社と派遣先(受け入れ先の会社)で労働者派遣契約を結んでから勤務を開始します。

下記については日本人と同様です。

・派遣が可能な職種

・事前面接禁止

・派遣元管理台帳の作成義務あり

 

 派遣先は派遣会社に業務の指示(指揮・命令)をしますが、直接の雇用関係はありません。もし派遣先で労災事故が起た場合、派遣元が加入している労災保険で治療費や休業補償が行われます。

 外国人が派遣社員として働くには、「派遣元との雇用関係が適正である」ことが前提です。

 外国人から「私は派遣期間が2か月なので、雇用保険に入っていません」というような話があったら要注意です。平成22年4月からは31日以上の雇用見込みがある人は、雇用保険の加入対象者とっています。これは日本人も外国人も同じ扱いです。

 労働保険・社会保険は社員が希望する・しないに関係なく、法令で決められた内容に該当する場合には加入する義務があります。

 外国人が社会保険への加入を拒否したり、派遣先?(元?)が社会保険の対象者を加入させていない場合は問題です。

 労働保険料・社会保険料の事業主負担が増えるので、派遣社員には労働保険・社会保険に加入させない、という派遣会社が時々あるようです。労務管理がずさんな派遣会社では、会社と社員が守るべき法律上の義務・手続きを適切に行っていないことがあります。

 外国人が日本の法令を守らずに働くことは入管局が最も嫌うことです。その状態が続くと、外国人の在留状況が不良と判断され、在留資格の更新や変更が難しくなる場合があります。

 

 

3 本件ではどうすべきか

 派遣社員として受け入れる前に、日本人の派遣社員と同様に社会保険等に加入しているか、雇用関係が適切かどうかを事前に派遣元に確認してください。

 

 

3,外国人を雇用する社長や代表者の義務と責任

 

Q 外国人を雇用するときの社長(代表者)の義務と責任にはどんなものがありますか。

責任、義務

外国人を雇用するとき、社長にはどのような義務や責任があるのだろう・・・?

お答えします!!

不法就労をさせない!

そのために入管法の決まり、制限は最低限理解し、不法就労になるケースを正しく理解することが必要です。また、外国人を雇用したときは、社員、アルバイトを問わず、「外国人雇用状況届」をハローワークに届け出る必要があります。

※詳細は下記をご覧ください。

ありがとうございます。不法就労にならないように、社長と人事部で入管法のルールをきちんと理解しておくようにします。

A 1 概説

 不法就労させないために、入管法の決まりと制限を最低限理解しておくという責任があります。

 日本人従業員を雇うときの法令を守ることは当然ですが、それに加えて入管法のルール、制限を守ることが必要です。外国人が不法就労をすると、入管法により外国人本人が処罰されます。悪質な場合は退去強制(国外追放)され、日本への再入国が5年間禁止されることがあります。さらに、法就労をさせた者として、外国人を雇っていた会社の社長(事業主)も不処罰されます。

 

 入管法により、次の場合には3年以下の懲役か300万円以下の罰金が科せられます(両方の場合もあり)。

・事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者(入管法第73条の2第1項第1号)

・外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者(同第1項第2号)

 

 また、雇用対策法で、外国人を雇ったときは、社員、アルバイトを問わず、「外国人雇用状況届」をハローワーク(職安)に届け出ることが義務付けられています。これは、雇入れたとき、離職したときに届出をします。(雇用対策法第28条)。

 正社員など雇用保険に加入する外国人は、「雇用保険被保険者資格取得届」の備考欄に、国籍・地域、在留資格、在留期間、資格外活動の許可の有無、などを記入し届出します。

 一方、留学生のアルバイトは雇用保険に加入しませんが、その場合も、「雇入れ・離職に係る外国人雇用状況通知書」を届出します。アルバイトで採用したときと離職したとき、どちらも届け出る必要があります。

 

 平成24年7月に入管法が改正され、外国人に関する届出義務が増えました。会社が外国人を雇ったり、雇終えたときは「所属機関による届出」として、入管局に届け出るように努めなければならない(努力義務)とされています(入管法第19条の17)。ただし、この届出は、「雇用対策法第28条による届出」(ハローワークへの届出)を行っていれば、あらためて入管局に届出する必要はありません。また、就労に制限のない永住者などの外国人はこの届出は不要です。

 

2 対応方法

 社員・アルバイトを問わず外国人を雇うときの社長・代表者の義務は下記のとおりです。

①日本人従業員と同様に、労基法などの法令を守り、社会保険・税務を正しく取り扱う。

②日本での外国人の在留を管理する入管法のルール、制限を理解し、守る。

 

 「法律違反をするつもりは全くないのに、うっかり不法就労になっていた」とならないように注意が必要です。下記のケースは全て不法就労にあたります。

 ①在留期限の切れた「不法滞在者」が働く

 ②「留学」、「家族滞在」、「短期滞在」など就労が認められていない在留資格の外国人が働く(あらかじめ「資格外活動の許可」を得ていれば就労可能。)

 ③在留資格で許可された範囲を超えて働く(例:「技術の外国人が単純労働者として働くなど)

 例えば、「資格外活動の許可」を得ていない外国人留学生に、許可を得ていないことを知らずに親切心からアルバイトを紹介しても不法就労になります。「知らなかった」というのは通用しません。

 

3 本件ではどうすべきか

 労基法、最賃法などに従った条件で働かせ、健康保険・厚生年金保険・雇用保険、労災保険に正しく加入し、所得税・住民税を正しく取り扱うことが必要です。

 そして、入管法のルール、制限を正しく理解することが必要です。

 また、社員・アルバイトを問わず、外国人を雇ったとき・離職したときは、「外国人雇用状況届」をハローワーク(職安)に届け出ることも義務付けられていますので、忘れないように注意が必要です(雇用対策法第28条)。特に留学生のアルバイトの場合、雇用保険には加入しませんが「外国人雇用状況届」の届出は義務となっていますので、要注意です。

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