外国人の労務管理における注意点とは?入管法・労働法に精通した弁護士が解説

1、外国人労務管理の注意点

(1)日本文化と外国文化の違いを教育する

 

Q 外国人の労務管理で注意すべきことは何がありますか。

 まず、日本人と差別しないことです。そして、外国人との文化や風習の違いや宗教を理解し、外国人を会社全体で受け入れることが大切です。

 

A 1 概説
 まず、社内や職場の処遇で日本人と差別しないことです。一方で日本人社員とのバランスを考えることも重要です。外国人社員が働きやすい職場環境をつくることが重要ですが、外国人に過剰に配慮することで、逆に日本人社員の不満を招かないようにすることも必要です。
 日本人社員の多くが、「人事部が勝手に外国人を採用している」と考えると問題です。
 会社として、日本人にはない外国人の発想や感性、バイタリティーに期待して採用したことや、会社・職場全体で受け入れていく、という姿勢・方針を会社のトップが示すことが重要です。外国人を会社全体で受け入れる、ということです。
 会社が外国人を採用する理由は様々です。事業の海外展開にともない相手国の出身者を確保したい、語学力、技術分野で会社に不足している能力、人材を確保したい、国籍を問わずレベルの高い人材を確保したい、などです。
 そして外国人の活用実績のある会社では、日本人社員にグローバルな視点が浸透する、社内に多様な属性を活用する機運が生まれる、海外展開やインバウンドの分野で外国人の持つ言語能力、文化理解を活用できる、といったメリットが生まれると感じています。
 こうした会社の姿勢、方針を経営トップが明らかにし、会社全体で受け入れることが重要です。
 外国人は日本人と同じ面もありますが、基本的な物の考え方が違うことが少なくありません。外国人を雇う立場で、外国人が持つ風習や文化の違い、宗教に対する理解・配慮が必要となります。
 例えば、アジア出身者、特に中国人にとって春節(旧正月)の時期は休暇を取って家族・親族が集まることがとても重要です。しかし日本では一般的な会社には春節休暇制度はありません。またイスラム教の社員にとって一日5回の礼拝や、毎年行う断食は日常生活に深く溶け込んでいます。
 日本人だけで仕事をしてきた会社では、自分たちとは異なる文化、習慣を持った外国人に戸惑うことが少なくありませんが、こうした違いを理解して、多様な価値観を認め合うことが大切です。
 また、外国人にとって不慣れな日本の労働慣行をわかりやすく説明し、働きやす職場環境をつくることも大切です。一般的に日本の会社では、口には出さないけどお互いに分かり合っていることを夜陰に期待するという文化があります。言葉では言わないけど、互いに相手のことを考えて仕事を進めるという風土です。
 また、そこまで言わせるなとか、もっと空気を読めという言葉にあらわされるように、その場の雰囲気を理解することを社員に期待しています。
 外国人がこうした日本の企業文化・風土を理解しているかどうかは、日本での仕事の経験の有無や、生活状況などにより一人ひとり異なります。
 
・職場では「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」が重視される。また、チームワークや協調性が大切
・日報、月報の作成、朝礼参加、連絡ミーティングなども仕事の一つ
・始業前・就業時の整理整頓・清掃(3S)や改善活動への参加も仕事の一つ

 このようなことは、日本人ならあまり疑問に思わないかもしれませんが、日本の会社で働いた経験の少ない外国人には、「それは私の仕事ではありません」と感じることもあります。
 このような社内の日常的な仕事の進め方やルール、暗黙のルールも含め、外国人社員が理解・納得できるように説明することが必要となります。
 外国人の母国の状況に詳しい人や、母国語ができる人を世話役として付け、しごとや日常生活の相談がしやすい体制をつくる場合もあります。

 

2 対応方法
 まず、日本人と差別しないことです。そして、日本人とは基本的な物事の考え方が異なることを前提にして対応します。単に個人の人事上の問題ではなく、外国人との文化や風習の違いや宗教を理解し、外国人の受入れを会社全体の方針として考え、対応していくように注意してください。

 

(2)日本的労務慣行を教育する

 

Q 外国人を採用することで発生すると考えられる職場での摩擦を防ぐためには

互いに違いを理解して、新しい価値、社会風土を生み出すことが大切です。そして、他の従業員と一緒に働きやすい職場環境づくりが重要です。

※詳細は下記をご覧ください。


A 1 概説
 日本と外国の文化・習慣のどちらが正しいかというのではなく、互いに違いを理解して、新しい価値、社会風土を生み出すことが大切です。日本人にはない外国人の発送や完成、バイタリティーを大切にして、多様な価値観を認め合う企業文化を大切にしましょう。
 外国人は日本人と同じ面もある一方で、基本的な物の考え方が異なることが少なくありません。
 外国人が日本の会社で働き続けるためには、他の従業員とコミュニケーションよく働ける職場環境づくりが欠かせません。
 気軽に日常生活や職場の仕事の相談ができる仕組みをつくることが望まれます。外国人の母国の事情に詳しい人などを世話役としてつけることがあります。
 日本人社員なら当然に思い、疑問に感じないことでも、外国人社員にとっては、戸惑うことが少なくありません。日本の法律などで決められている手続きやイベント、日本の職場慣行、仕事を第一に考える企業文化などです。
 下記は、外国人社員が不満に思ったことで、トラブルにならないようにあらかじめ説明して理解してもらうのが望ましいことです。
①健康診断や年末調整のように、日本の法律に基づいた手続きやイベント。
②報告・連絡・相談を重視する職場慣行。社内の日報、月報が必須の職場も。
③日本では3S(整理・整頓・清掃)も仕事の一つです。「改善活動」など従業員の役職や所属に関わりなく、社員全員で(会社全体で)取り組む活動があることが少なくない。
④職場ではチームワークが重視される。「次の工程(関係者)はお客様」と考えて対応することを求められることが多い。

 

2 対応方法
 基本的な物の考え方が異なる人と一緒に働くので、違いをお互いに理解して、新しい価値、会社風土を生み出すことが大切です。そして、他の従業員と一緒にはたらきやすい職場環境をつくるのです。外国人社員は日本の職場慣行に戸惑うことも多いです。トラブルにならないようにあらかじめ説明して理解してもらうのが望ましいです。

 

 

2、労災保険

 

Q 外国人の労災保険の適用はどのようになっていますか


A 1 概説
 労災保険は会社に雇用される労働者を対象とした強制保険です。
 強制保険とは、従業員が希望する・しないに関わらず、一定の条件に当てはまる人は全員加入する保険です。労災保険が適用される会社に勤務する人は、会社役員などを除き、全員が労災保険の対象になります。
 労災保険の対象にならない人は、会社の代表者、取締役などに限定されます。会社役員ではない管理社員も当然、労災保険の加入対象です。
 労災保険の保険料は全額会社負担で、社員が労災保険料を負担することはありませんし、健康保険のように被保険者証や加入者であることの証明書があるわけではありません。
 そのため社員の立場では労災保険に加入していることを実感しにくいことがあります。
 社員やアルバイトとして働く人は日本人も外国人も労災保険に加入します。労災保険の適用事業所で働く場合は、一日限りのアルバイト従業員も労災保険に加入します。もちろん、アルバイトの外国人留学生も労災に加入します。国籍や労働時間・勤務時間・勤務期間を問わず、労災保険に加入します。
 アルバイト留学生の立場から見れば、雇用保険などの社会保険に加入することはありませんが、留学生でもアルバイト中は労災保険に加入しているということです。
 また、不法就労の外国人にも労災保険は適用されます。会社経営者の立場では、まずは不法就労をさせないことが大原前提です。しかし、万が一不法就労者がいて業務上、負傷したときでも労災保険が適用されます。労災保険は労働者を保護するため、必要な保険給付を行うことを目的とした法律だからです。不法就労者に対しても、厚生労働省の管轄する労基署が労災給付の至急・不支給を判断します。

 

2 対応方法
 労災保険は会社に雇用される労働者を対象とした強制保険ですので、会社で働く労働者は国籍に関わりなく、日本人も外国人も、アルバイトも留学生も、労働時間や勤務期間の長短に関わらず労災保険の対象となるので加入手続きをします。

 

 

3、社会保険

(1)社会保険

 

Q 外国人の社会保険の適用はどのようになっていますか

日本国内で採用され社員として働く外国人には、日本人と同様に労働・社会保険が適用されます。これらは保険の要件に該当する人は全員加入しないといけない強制保険で、外国人社員も原則、同様です。

※詳細は下記をご覧ください。

 

A 1 概説
 日本の会社員は勤務先の会社・団体が違っても、労働保険・社会保険に加入し、下記5つの公的保険が適用されます。

<労働保険>
・労災保険
・雇用保険

<社会保険>
・健康保険
・介護保険
・厚生年金保険

 これらの公的保険は本人が希望する・しないに関わらず保険の要件に該当する人には必ず適用される強制保険であり、要件に該当する人は全員加入しなければなりません。この取り扱いは日本人だけでなく、外国人社員も原則、同様です。そして、労災保険以外は保険料の本人負担分を給料・賞与から控除します。
 外国人留学生を新入社員として採用したときや、外国人の転職者を採用したときも、原則、日本人と同様に上記5つの社会保険が適用されます。入社時には雇用保険の被保険者資格取得の届出や、健康保険・厚生年金保険の資格取得の手続、健康保険被保険者証の交付などの手続が必要となります。配偶者や子どもがいる場合の扶養家族の取扱いも日本人と同様です。もし外国人社員が、自分は数年後には母国に帰るので厚生年金保険に加入したくないと申し出たとしても、外国人だけ加入させない、といった取扱いはできません。
 なお、外国にある企業に雇用され、日本国内の事業所に赴任して勤務する場ケースなどで、「企業内転勤」の在留資格で日本で働く外国人などは、原則、雇用保険は適用されません。 こうした外国人は日本国内での勤務が終われば帰国するのが普通ですので、雇用保険の失業給付を受けることがないため、雇用保険の被保険者とはしない取扱いが行われています。また、社会保障協定が適用される場合は、日本での健康保険、厚生年金保険への加入が免除されます。
 日本人・外国人を問わず、大学などに通う昼間学生には雇用保険は適用されません。行政手引きにより雇用保険の被保険者になる場合・ならない場合が定めれれていますが、昼間学生は専門学校、日本語学校の学生を含め、雇用保険の被保険者にはなりません。
 留学生がアルバイト可能な時間は、週28時間以内に限定されています。週28時間というと、フルタイム勤務の社員が週40時間勤務する事業所では、社員の所定労働時間の4分の3未満ですので、留学生が健康保険・厚生年金保険の被保険者の要件を満たすことはありません。そのため、アルバイト留学生は労災保険のみ適用となります。
 なお、留学生は扶養家族も含めて原則、市町村の国民健康保険に加入します。また国民年金には第1号被保険者として加入しますが、状況に応じて学生納付特例やその他の免除申請が可能です。

 

2 対応方法
 社会保険は要件に該当する人は全員加入しないといけない強制保険ですので、日本国内で採用され社員として働く外国人には、日本人と同様に社会保険が適用されます。原則、労働保険、社会保険の全てに加入し、労災保険以外は保険料の本人負担分があるので、給料・賞与から控除します。

 

(2)外国人からの厚生年金加入拒否への対処法

Q 外国人社員が厚生年金に入りたくないと言ったらどう対応すればいいですか?

まず厚生年金に加入しないで健康保険のみ加入することはできないことを説明します。そして厚生年金が障害年金や遺族年金の制度もある保険であることや、母国へ帰った場合は脱退一時金という一時金で受け取ることもできることを説明して理解を得ましょう。

※詳細は下記をご覧ください。

 

A 1 概説
 会社で働く人は、外国人も日本人と同様に給料・賞与から税金や社会保険料が控除されます。法令で定められた条件を満たすと本人が希望する・しないにかかわらず社会保険に加入となり、給料・賞与から保険料が控除されます。これは日本の法律に基づいた制度です。
 外国人社員が入りたくないと希望しても、加入しないということはできません。厚生年金保険は国が運営する公的な保険であり、加入者には老齢年金以外にも下記のようにいくつかのメリットがあります。
 厚生年金というと、年をとってからもらう年金(老齢年金)のイメージが強いかもしれませんが、厚生年金保険には、社員の心身に一定の障害が残ったときに受け取る「障害年金」や、社員が死亡したときに一定の遺族に支払われる「遺族年金」の制度もあります。年をとってからもらう年金だけでなく、障害や死亡に対する所得補償の役割を果たす総合保険なのです。このような補償が自動的に付いていますので、万一のときにも安心という総合保険の強みを外国人にも理解してもらうようにします。
 また、数年日本で働いて自国へ帰る外国人など、厚生年金保険料を支払っても老齢年金の受け取りにつながらない外国人のために、掛捨て防止を目的とした厚生年金保険の「脱退一時金」というものがあります。これは、外国人社員が会社に6ヶ月以上勤務して帰国した場合に、日本年金機構に請求すると日本年金機構から支払われる一時金です。支給時には20.42%の税金が控除されますが、後日、日本国内の納税管理人を通して還付請求が可能です。
 このように、厚生年金保険料は掛捨てにはならないので、制度についてきちんと説明することが賢明です。

 

2 対応方法
 まず、厚生年金に加入しないで健康保険だけに加入することはできないことを説明します。また、厚生年金保険は障害年金や遺族年金の制度もある、国が運営する公的な総合保険であるので、万一のときも安心であることを説明します。そして、支払った保険料が将来の老齢年金につながらない場合も、帰国後に請求すれば脱退一時金という一時金として受け取ることができる制度もあることを説明し、理解を得るように努めてください。

 

(3)「私は脱退一時金をいくらもらえますか」と聞かれたときの対応は

Q 外国人の従業員から「私は厚生年金の脱退一時金をいくらもらえますか」と聞かれたらどのように対応すればいいですか

日本出国後に日本年金機構に請求すれば、給与等から控除された保険料が、3年分を上限に払い戻しされます。概算額は自分でも計算できますが、出国前に日本年金機構に尋ねても、1円単位での正確な回答は得られません。

※払い戻しの条件等詳細は下記をご覧ください。

 

A 1 概説
 脱退一時金は、短期滞在の外国人を対象に、年金の掛け捨てを防止するために厚生年金保険から支払われる一時金です。外国人が日本出国後に日本年金機構に請求すると、給与・賞与から控除された厚生年金保険料が3年分を限度に払い戻しされる制度です。
 日本の老齢年金は「年金に25年以上加入した人が、65歳以上になったらもらえる」制度です。そのため、外国人が例えば日本で5年間働いて母国に帰国した場合、日本で支払った厚生年金保険料が「掛捨て」になることがあります。
 アメリカ、オーストラリア、ブラジルなど日本と社会保険保障協定を結んでいる国の外国人は、老齢年金の要件である年金加入期間を計算するときに「日本での年金加入期間」と「本国での年金加入期間」が通算されますので、日本で払った厚生年金保険料が掛捨てになりません。
 一方で、まだ日本と社会保障協定を結んでいない国・地域の外国人は、日本での年金加入期間が本国の年金加入期間と合計(通算)されません。現在、韓国以外のアジアの国・地域は日本と社会保障協定を結んでいないため、中国、ベトナム、タイ、フィリピン、インドネシアなどのアジア圏の外国人は、日本出国後に脱退一時金を請求する人が多いです。

~日本と社会保障協定を結んでいる国~

(日本と年金加入期間の通算措置のある国)

 

アイルランド●アメリカ●イギリス●オーストラリア●オランダ●カナダ●韓国●スイス●スペイン●チェコ●ドイツ●フランス●ブラジル●ベルギー(●イタリア●インド●ハンガリーは署名済み)(平成25年8月現在)

 脱退一時金を受給するための要件は下記の通りです。

① 厚生年金保険・共済組合等の加入期間の合計が6月以上あること

② 日本国籍を有しない方であること

③ 老齢厚生年金などの年金の受給権を満たしていないこと

ただし、次のいずれかに該当した場合は請求することができません。

・国民年金の被保険者となっているとき

・日本国内に住所を有するとき

・障害厚生年金などの年金を受けたことがあるとき


 
 上記の条件にすべて当てはまる外国人が、日本を出国後2年以内に請求すれば受け取ることができます。
 脱退一時金は「日本に住所がないこと」が支給要件の一つですので、日本を出国時に、市町村に「転出届」の届出を行うことが必須です。
 脱退一時金を受け取った場合は、計算の前提となった期間は、年金の加入期間ではなかったことになります。

 
 脱退一時金の計算式は下記の通りです。

脱退一時金=厚生年金保険の加入期間の平均標準報酬額※1×支給率

※2{(保険料率※3×1/2)被保険者期間に応じた数}

※3「保険料率」とは、厚生年金に加入した最終月の前年10月時点の保険料率   (最終月が1~8月の場合は、前前年10月時点での保険料率)。

 

脱退一時金の支給率

被保険者期間

(厚生年金保険加入期間)

係数

(支給率計算に用いる数)

6月以上12月未満

6

12月以上18月未満

12

18月以上24月未満

18

24月以上30月未満

24

30月以上36月未満

30

36月以上

36


厳密に計算するには、毎月の標準報酬月額とボーナス時の標準賞与額を集計する必要があります。多少の誤差があっても早く知りたいという場合には、「年収の約8%が3年分を上限に脱退一時金として支給されます。」と説明するのがよいです。概算額でよいなら、この計算方法でおおよその脱退一時金の金額水準がわかります。
 脱退一時金の見込額を出国前に日本年金機構に尋ねても、1円単位の正確な回答は得られません。自分で計算するには、まず給与・賞与から控除された厚生年金保険料の総額を把握してください。年金事務所の窓口で「被保険者記録照会回答票」を請求すれば、過去の保険料支払い実績として知ることもできます。そして過去に支払った厚生年金保険料の総額を合計し、1月あたり平均額(平均標準報酬額)を算出します。その算出金額の36ヶ月分を上限に脱退一時金が支払われることになります。
 脱退一時金の支給額は、厚生年金保険の加入月数(被保険者期間)に応じて計算されます。この一時金は、支給されるときに20.42%の所得税(復興特別所得税を含む)が差し引かれ、残額が支給されることになります。

2 対応方法
 日本の会社で6ヶ月以上働いたことのある外国人が、日本出国後に日本年金機構に請求すれば、給与・賞与から控除された年金保険料が、3年分を上限に払い戻しされます。概算額でよいなら、「年収の約8%が3年分を上限に脱退一時金として支給されます。」と説明するのがよいです。見込額を出国前に年金機構に尋ねても、1円単位の正確な回答はしてもらえません。厳密に計算したいという人には、自身で毎月の標準報酬月額とボーナス時の標準賞与額を集計の上、上記計算式で計算する方法もあることを伝えてください。

 

 

4、健康診断

(1)健康診断

 

Q 外国人社員にも健康診断は実施するのですか

日本人と同様に外国人社員にも、

・雇入れ時の検診

・定期検診

・特定業務従事者の検診

 

が義務付けられています。

社員を雇用する事業主には、安衛法によってこれらの検診の実施が義務付けられています

※詳細は下記をご覧ください。

 

A 1 概説
 日本では中学・高校や大学でも定期的に健康診断が実施され、会社に入社した後も年1回の健康診断を受診するのが普通です。会社で受診する健康診断は、安衛法(第66条)で事業主に実施が義務づけられています。
 事業主は健康診断の結果を健康診断個人票を作成して記録し、5年間保存する義務があります。常時50人以上の労働者を使用する事業主は、定期健康診断結果報告書を労基署に提出しなければなりません。
 この取扱いは日本人も外国人も同様ですので、日本人と差別・区別することなく、法定の健康診断を実施し、その結果を社員に通知する必要があります。

<雇入時の健康診断>
 雇入時に実施する健康診断は、すべての業種で常時使用する労働者を雇い入れたときに実施する必要があります。
 ただし、3か月以内に医師による健康診断を受診した人が、検診結果の証明書を提出しなときに限り省略可能です。それ以外は省略が認められません。
<1年以内ごとに1回実施する定期健康診断>
 常時使用する労働者を対象に、1年以内ごとに1回実施します。多くの会社では、毎年1回定期的に実施しています。
 なお、深夜業など「特定業務」の従事者には、6ヶ月以内ごとに1回の特定業務従事者検診が義務付けられています。

 健康診断の結果に基づき、異常の所見がある労働者については、事業主は3か月以内に医師または歯科医師の意見を聴かなければなりません。そして必要があると認めるときは、就業場所の変更、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの措置をとらなければなりません。長時間労働により過労死を防ぐ目的で、社員の労働時間を適切に管理することが従来以上に求められます。
 就業場所の適切な作業環境を確保するなど、事業主に求められる義務・責任は大きいです。

 

2 対応方法
 日本人と同様に外国人社員にも、雇入れ時の検診、1年以内ごとに1回の定期検診、深夜業などに従事する場合の6ヶ月以内毎に1回の特定業務従事者の検診が安衛法によって、社員を雇用する事業主に義務付けられています。

 

(2)外国人が健康診断を拒否した場合の対処法

Q 外国人が会社の健康診断は受けたくないと言ったらどうすればいいですか。

まずは、受けたくない理由を確認してください。会社の健康診断を受けなくても、従業員が自分で選んだ医師の健康診断を受けることは可能です。ただし、会社に検診結果を通知する必要があります。

※詳細は下記をご覧ください。

 

A 1 概説
 日本では中学・高校などの学生時代から定期的に健康診断が行われ、会社に入社してからも定期的に会社で健康診断を受診するのが普通です。会社で行う健康診断は、安衛法(第66条第1項)で事業主に実施が義務付けられているものです。学生時代から毎年、健康診断を受け続けていることもあり、日本人には会社が実施する健康診断にもあまり抵抗がない人が多いと思います。
 また、同時に安衛法第66条第5項では、労働者は事業者が行う健康診断を受けなければならないと定めています。社員も会社が実施する健康診断を受診する義務がある、と定めているのです。
 しかし、この健康診断の取扱いは世界各国共通ではありません。現在、自分は健康で会社の仕事をするのに何も問題がない、個人のプライバシーだから会社が関わらないでほしい、という考えの外国人もいます。外国人が受診したくないというときは、まずその理由を聞きましょう。そして、会社が実施する健康診断は日本の法令に基づいたもので義務であること、そしてもし健康診断の結果、どこか悪いところが見つかったとしても、そのことが直ちに解雇の理由になったり、優先的に解雇されたりしないことを説明して理解を得るのが賢明です。
 それでもどうしても会社の健康診断は嫌だと拒否されたときは、自分で健診を受けて、その結果を会社に通知してくださいという対応をすることは可能です。
 安衛法第66条第5項では、事業者の指定した健康診断を受けることを希望しない場合、他の医師の行う健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出することが認められています。この安衛法の取扱いにより、会社以外の医師による健診を受けることも可能になっています。 

 

2 対応方法
 まずは、なぜ会社の健康診断を受けたくないのか、その理由を確認してください。そして、もし健康診断の結果が悪くても直ちに解雇につながることはないことを説明してください。それでも受けたくないと拒否されれば、会社の健康診断を受けない場合、自分で選んだ医師の健康診断を受けることは可能です。ただし、結果を会社に通知することは必要となります。会社で行われる健康診断は日本の法令により、会社と従業員にその実施と受診が義務付けられたものであるのです。

 

 

5、賃金の支給

(1)賃金の支給

Q 外国人への賃金の支給で注意すべきことは何でしょうか

賃金の取扱いは日本人と同様で、労基法や最賃法などの法令が適用されます。また、給与支払いの際は、税金と社会保険料の控除が必須ですので、労働条件に提示している賃金額に比べ、本人の手取額は少なくなることを入社前に説明しておくように注意しましょう。

※詳細は下記をご覧ください。

 

A 1 概説
 労基法第3条では、労働者の国籍を理由として賃金、労働時間などの労働条件について、差別的取扱いをすることを禁止しています。
 外国人だからということを理由に、給料・賞与を日本人と差別してはいけない、ということです。日本人と同等の処遇でなければなりません。
 また、会社が給料・賞与を支払うときは税金と社会保険料の控除が必須です。税金として所得税、住民税、社会保険料として雇用保険料、厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料(40歳以上)を控除します。税金の金額は扶養家族の人数などによって変わりますので、全員同じ割合ではありませんが、税金と社会保険料の合計で給料の約20%は控除されます。
 なお、アルバイト従業員には都道府県別の最低賃金が適用されます。これは日本人も外国人も同様です。
 「技術」、「人文知識・国際業務」など就労の在留資格で働く外国人の給与は日本人が同じ仕事に従事する場合に受ける給与水準と同等額以上であることが必要です。この「給与の水準」は、入管局が就労の在留資格の決定・変更・更新を審査するときの重要な判断ポイントとなります。会社が雇用契約で明示した給料を、実際の入社後は全額支払っていないような場合には、就労の在留期間が更新されないことがあります。
 雇用契約を守らない行為は決して行ってはなりません。

 

2 対応方法
 外国人の採用を内定した際に、「初任給は〇〇万円」と伝えて終わるだけでは不十分です。法律に従って給料・賞与から税金と社会保険が控除されるということ、それにより労働条件として伝える賃金額と本人が実際に受け取る手取額は違うことを説明します。手取額の方が少なくなることをあらかじめ伝えておくことが必要です。労働条件としての賃金額全額を自由に使えるわけではありませんので、このことを最初に本人に説明してください。全額を自由に使えると思い込んで、後で生活費に困ることがないようにすべきです。
 また、最低賃金の見直し(金額の改定)が例年10月頃に実施されますので、アルバイト従業員などの時給単価を最低賃金と同額に設定している会社では、毎年この時期には金額改定の情報を得て対応することが必要です。

 

(2)「入社2年目から突然住民税が引かれて困ります」と言われた場合(特別徴収拒否)の対処法

 

Q 入社2年目の外国人社員から、突然住民税が引かれて困ると言われたらどう対応すればいいですか?

入社前、もしくは入社時に、給料から控除される税金と社会保険料の取扱いについてきちんと説明をしておくことです。さらに、入社2年目の5月には、6月から(注)住民税の控除が始まることを再度説明するのが賢明です。

(注)会社の住民税の取扱いによっては時期が多少前後する場合あり

※詳細は下記をご覧ください。

 

A 1 概説
 日本人・外国人を問わず、3月まで学生だった人が4月から社員として入社した場合は、入社後の給料から控除される税金・社会保険料について、従業員に事前に説明することが必要です。
 学生時代の収入がないことが前提で、一般的に給料から次のとおり税金、社会保険料が控除されます。
①入社月の4月(1月目)・・・所得税、雇用保険(4月分)
②入社翌月の5月(2月目)・・・所得税、雇用保険(5月分)、健康保険・厚生年金保険(4月分)、以降「入社2年目の5月」まで同様に続きます。その間、住民税の控除はありません。
③入社2年目の6月~・・・所得税・住民税、雇用保険(当月分)、健康保険・厚生年金保険(前月分)
 このように、学生から社会人になった場合,学生時代に収入がない,もしくはあっても所得が一定額以下であれば,入社1年目は住民税の控除はありません。入社2年目の6月ら住民税の控除が始まります。そのため,1年目と2年目で給料が同じ金額の場合,住民税が控除される分だけ,社員の手取金額は2年目の方が少なくなります。
 住民税は前年1月~12月の1年間の所得に応じて課税される税金で,毎年5月に市町村から会社に社員一人ひとりの住民税の特別徴収税額通知書が通知されます。その通知書に記された住民税を社員の毎月の給料から控除し,会社が市町村に納付します。前年(1月~12月)に収入がなければ住民税はありません。
 これは日本国内のどの会社に勤めても同様に取り扱われる税金(住民税)の制度です。
 このような住民税の仕組みを知らないと,日本人でも6月から急に手取り額が減ったけれど給与計算を間違っていないかと疑問に思うことがありますので,外国人はなおさらです。

 

2 対応方法
 住民税の取り使いについての説明不足による誤解が出ないように,下記の点に注意してください。

●給与からは税金と社会保険料が控除されるので,給与額と実際に受け取る手取り金額は異なることを入社前に説明する。
 税金(所得税,住民税)と社会保険料(雇用保険,健康保険,厚生年金保険)の合計で給料の約20%程度が控除され,本人の手取金額は「給与額」の約80%程度になります。ただし,住民税の控除は多くの場合は入社2年目から始まります。

●入社2年目の5月に,市町村から来た特別徴収税額通知書の内容を本人に通知してください。6月から毎月,住民税の控除が始まることを事前に伝え,あらかじめ理解・納得をしてもらうのが賢明です。

 

 

6、労働時間・休日

(1)労働時間・休日

Q 外国人の労働時間や休日について注意すべきことは何でしょうか

労働時間や残業、休日は日本人と全く同じ処遇となります。労基法を守り、就業規則に基づいて労務管理を行います。なお、資格外活動の許可を得て働く外国人は、原則、週28時間以内しか働けません。

※詳細は下記をご覧ください。

 

A 1 概説
 労働時間や時間外労働、休憩、休日の処遇は日本人と差別・区別なく、全て同じになります。社員の労働時間・休日の前提となる法律は労基法です。労基法を守り、就業規則に基づいて労務管理を行うことが必要です。まず、労基法では社員の国籍によって労働条件を差別することを禁じています。国籍に関係なく日本人と同等に処遇しなさいということです。
 「技術」、「人文・国際」などの就労の在留資格の外国人は日本人と同様に週40時間勤務ができます。さらに、36協定(時間外協定)の範囲内で残業することも可能です。
 日本国内の会社で働く社員は、労働時間は原則1日8時間、週40時間という労基法が適用されます。週40時間を超えて残業する場合は、事前に労使間で36協定(時間外協定)を締結し、労基署への届出が必要です。外国人が残業をする場合も、36協定で定めた時間外労働の範囲内で残業することが可能です。 
 休憩についても日本人と同様に、労働時間が6時間を超える場合は45分以上の休憩を与え、労働時間が8時間を超える場合は1時時間以上の休憩時間を労働時間の途中に与えなければなりません。
 休日についても、原則、毎週少なくとも1回の休日を確保しなければなりません。会社の就業規則で週休2日制や、1日の所定労働時間が7時間30分という制度が導入されているときは、就業規則に基づいて日本人と差別・区別することなく処遇します。
 入管局から「資格外活動の許可」を得てアルバイトする留学生や家族滞在の外国人は、残業時間を含めて週28時間以内が勤務時間の上限となります。
 日本人のアルバイトスタッフが、1日6時間×週5日勤務(週30時間勤務)する職場でのアルバイトの場合は、日本人と異なり週28時間までしか勤務できません。越えると不法就労となりますので注意が必要です。
 
2 対応方法
 労基法を守り、就業規則に基づいて、労働時間、時間外労働、休憩、休日のすべてにおいて日本人と同等の処遇および労務管理を行います。
 たとえば、法定労働時間を超えて残業した場合は、日本人と同様に残業代の支払いが必要となります。午後10時~午前5時までの深夜労働に対する割増賃金(深夜業手当)、法定休日に出勤した場合の休日労働の割増賃金の取扱いも日本人と同様です。

 

(2)外国人の「旧正月に長期休暇」請求への対応

 

Q 外国人社員から、旧正月に長期休暇を取りたいと言われたらどのように対応すればよいですか

東アジア・東南アジアでは旧正月は1年で最も大事な祝日とされ、春節休暇が数日間続きます。多くの場合は、年次有給休暇を使って休んでもらうことになります。

※詳細は下記をご覧ください。

 

A 1 概説
 旧正月とは「旧暦の正月」のことです。春節とも呼ばれます。旧暦の正月初一から初五の5日間にあたります。中国、香港、台湾、韓国、ベトナム、シンガポールなどでは、毎年その時期が大型連休になっており、春節は親族が集まり祝う1年で最も重要な祝日と考えられています。そのため、この時期には長期間の休みを取ることが普通なのです。家族にとっても大事な祝日なので、日本に来ている留学生もこの時期に合わせて帰国する人が少なくありません。
 日本では一般的に春節休暇の制度はなく、年末年始の連休明けから日が少なく、年度末の忙しい時期でもあるので、休みたくてもなかなか休めません。中国人従業員が多い職場では、毎年全員が連休を取ることは難しいかもしれませんが、会社への不満がたまらないように2年に一度くらいは春節に帰国できるように、会社も協力することが大切です。中には2週間以上の休暇を希望する外国人も少なくないようです。
 
2 対応方法
 外国人従業員から春節休暇を取りたいという申し出があったら、会社の就業規則にもとづいて、春節休暇という休暇はないことを説明し、まずはこれを納得してもらうことが重要です。
 そのうえで、年次有給休暇を使うことが可能なら、休みを取れるように事前に業務スケジュールの調整を行って休むなどの対応をします。本人の業務スケジュールの調整だけでなく、会社も事前の対応や工夫をすることが必要です。外国人をいくつかにグループ分けして順番に帰国できるように配慮するのも対応策の一例です。

 

(3)懇親会で外国人からアルコールを拒否された場合

 

Q 外国人従業員からアルコールを勧めないで欲しいと言われたらどのように対応すべきですか

イスラム教のタブーを理解しましょう。イスラム教では宗教上の理由で、アルコールを飲まない、豚肉を食べないなど、禁止事項があります。

※詳細は下記をご覧ください。

 

A 1 概説
 会社が主催する会食などで、インドネシア、マレーシアなどの外国人が「私にアルコールを勧めないでください」と言ったら、それは宗教上のタブー(禁忌)なので私はアルコールを飲めません、という意味です。
 イスラム教では聖典コーランの中で、お酒を飲むことや、豚肉を食べることが禁止されています。決してアルコールや豚肉を勧めないでください。軽く一口だけでもどうですかという対応は厳禁です。そのようなレベルの話しではありません。イスラム教では1日5回の礼拝、ラマダーン時期の断食など、宗教にもとづいた習慣や行動様式が日常生活に深く結びついています。「日本とは異なる分化を理解し尊重する」ことが大切です。
 イスラム教の外国人が参加するパーティーや会食では、必ずノンアルコールのウーロン茶、オレンジジュース、コーラなどの飲料も用意してください。乾杯の挨拶時もビールではなく、ノンアルコールの飲料をグラスに注ぎます。
 また、豚肉以外の鶏肉やシーフードを中心にアレンジするのが賢明です。何も食べられなくなりますので、少なくとも豚料理しかない状況をつくらないでください。肉料理に豚肉が含まれていないか、醤油の原料にお酒が使われていないかなど、食材の確認をする質問をされることもあります。飲料だけでなく、醤油、みりんなどの調味料、ゼリー、デザートなどの中にお酒が含まれているものは口にすることができないからです。決して無理やり勧めないでください。
 国連加盟国約190か国の約3分の1(約60か国)はイスラム教徒の多い国です。インドネシア、パキスタン、バングラディシュ、インド、ナイジェリア、エジプト、イラン、トルコ、サウジアラビア、マレーシアなどの国です。これらの国の人と接するときには飲食物をはじめ、1日5階の礼拝の場所と時間を確保することにも配慮が必要です。

 

2 対応方法
 イスラム教のタブーを理解し、決して無理に勧めないでください。イスラム教では、アルコールを飲まない、豚肉を食べないなど宗教上の理由で禁止されていることがあります。会食などではノンアルコールの飲料を必ず準備しましょう。

 

 

7、日本人の配偶者である外国人を雇用する場の注意点

Q 日本人と結婚している外国人を採用したいのですが留意点はありますか。

「日本人の配偶者等」の在留資格は就労に制限がありません。日本人と同様にどんな職にも就くことができます。しかし、日本人と離婚した場合は、配偶者の身分を失いますので、他の在留資格への変更が必要になるので注意が必要です。

※詳細については下記をご覧ください。

 

A 1 概説
 「人文知識・国際業務」、「技術」など就労の在留資格は、許可された範囲内の仕事しか認められていません。その在留資格では認められていない業務を行うと不法就労になります。しかし「日本人の配偶者等」の外国人にはこのような就労の制限はありません。永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者。この4つはすべて「就労の制限がない」在留資格です。
 ただし、「日本人の配偶者等」の外国人が、日本人と離婚すると日本人の妻または夫としての身分を失い、「日本人の配偶者等」の在留資格の更新はされなくなります。よって、日本での在留を続けるためには、他の在留資格に変更しなければなりません。平成24年7月から、「日本人の配偶者等」の外国人が離婚したときは14日以内に入管局へ届出をすることが義務づけられています。
 そして、引き続き日本で生活したいときは、別の在留資格への変更が必要になります。どの在留資格に変更できるかは一律ではありません。
 日本人の実子を扶養する外国人の場合は「定住者」への変更を検討するのが一般的です。子がなく「人文知識・国際業務」、「技術」などの在留資格に該当する仕事に就いている外国人の場合は、就労の在留資格に変更することもあります。

 

2 対応方法
 「日本人の配偶者等」の在留資格は就労に制限がありません。日本人と同様にどんな職にも就くことができます。しかし、日本人と離婚した場合は、配偶者の身分を失いますので、他の在留資格への変更が必要になるのでその点に注意が必要です。

 

 

8、日本人の配偶者である外国人社員が離婚した場合の対応

Q 日本人と結婚している外国人が離婚したときはどのような対応が必要ですか

在留資格「日本人の配偶者等」の外国人は、離婚すると配偶者の立場を失います。「日本人の配偶者等」の在留資格が更新されることはありません。日本での在留を続けるには、他の在留資格に変更することが必要です。


A 1 概説
 「日本人の配偶者等」の外国人が日本人と離婚したときは、外国人本人が14日以内に入管局に届出をすることが必要です(入管法19条の16第3号)。
 この届出義務に違反したときは、20万円以下の罰金が科せられます(入管法第71条の3)。また、平成24年7月の入管法改正によって(入管法第22条の4第1項第7号)、
離婚後6ヶ月以上経つと正当な理由がなければ、在留資格が取消しされることもあります。離婚したときは、すぐに届出をすることが必要です。在留資格が取消しされると、外国人が日本にとどまることができなくなり、本国に帰国する以外の選択肢がなくなる場合があります。
 外国人が日本人と離婚すると、それ以降「日本人の配偶者等」の在留資格は更新されませんので、引き続き日本にとどまりたい場合は、在留資格の変更が必要です。どの在留資格に変更するかは、外国人一人ひとりの状況によって異なります。「人文知識・国際業務」などの就労の在留資格に変更する人もいれば、日本国籍の子を持つ母の場合は定住者の在留資格を検討する人もいます。
 入管局は外国人が法律や届出義務を守らないことを嫌います。日本で長く生活するためには日本の法律をきちんと守っていることが不可欠です。日本は法治国家で、法律によっていろいろな制限が多いと感じる人も多いかもしれませんが、逆に法律を守って暮らしている人は、法律によって守られることもありますので、必要な届出や手続きを適切に行ってください。

 

2 対応方法
 まずは、離婚後14日以内に外国人本人が入管局へ「離婚の届出」をしてください。そして、離婚後も日本にとどまることを希望する場合は、在留資格の変更が必要不可欠ですのでその点を注意してください。

 

 

9、母国語を教える外国人が転職した場合、在留資格の変更は必要か

 

Q 母国語を教える仕事なら、勤務先が変わっても同じ就労ビザで良いというのは本当ですか?

そんなことはありません。同じ母国語を教える仕事でも外国人がどんな仕事をするか、どこで仕事をするかにより、許可される在留資格は異なります。

※詳細については下記をご覧ください。

 

A 1 概説
 アメリカ、オーストラリアなど英語圏出身の外国人が日本で英語を教える仕事に就くケースで言うと、一般的に、英会話学校の講師なら「人文知識・国際業務」、中学校・高等学校の英語教師なら「教育」、大学教授なら「教授」の在留資格になります。このように、どの在留資格に当てはまるのかは、外国人が日本で誰に何を教えるのかや、勤務先がどんな組織かによって判断されます。
 入管局が在留資格を許可する基準は、入管法第7条1項第2号(入国審査官の審査)の基準を定める省令によって決められます。
 「人文知識・国際業務」、「教育」、「教授」などの在留資格の決定には、それぞれの在留資格の要件である資格該当性、基準適合性を満たしているかどうかが審査されます。 
 在留資格の決定は法律で定められた基準への当てはめですので、入管職員はこの「資格該当性」、「基準適合性」に当てはまるかどうか、という視点で審査します。
 「教育」、「人文知識・国際業務」などの在留資格は、外国人の学歴・実務経験などが重要な要件となります。

2 対応方法
 同じ母国語を教える仕事でも外国人がどんな仕事をどこでするかによって、許可される在留資格は異なります。誰に何をどこで教える仕事なのかによって必要な在留資格は「人文知識・国際業務」、「教育」、「教授」など変わってきますので、従前も転職後も母国語を教える仕事だとしても、入社前に確認する事が必要です。

 

 

10、不法就労を防止するための注意点

 

Q 採用した外国人が不法就労者とわかったときはどのような対応をすべきですか

適法に就労できる状態ではないときは、外国人に仕事をさせてはいけません。まず、採用前に不法就労に該当しないことを必ず確認してください。そのためには、どんなことやどんな状態が不法就労に当たるかを予め理解することが重要です。

 

A 1 概説
 正しい確認ときちんと手続を行って外国人を採用していれば、採用した後に不法就労だとわかったということはないはずです。そのためにも、まずは不法就労になるのはどんなケースかを理解することです。下記のケースはすべて不法就労となります。

 

(1)不法滞在者が働く

日本への入国が認められていない密入国者や、在留期限の切れたオーバーステイの外国人が働く場合がこれにあたります。

(2)働く許可を受けていない外国人が働く

観光目的の「短期滞在」で来日した外国人が働いたり、留学生や「家族滞在」の外国人が、資格外活動の許可を得ずに働く場合がこれにあたります。

(3)就労を認められた範囲を超えて働く

「技術」の在留資格の外国人が、倉庫内の運搬担当者として働く場合など、在留資格で就労を認められている業務の範囲外の業務を担当させてしまうとこれにあたります。

 

(1)、(2)は外国人の「在留カード」を確認すればすぐに確認できるものです。(3)の状態を起こさないようにするためには、在留資格の制度を正しく理解することが大切です。

 もし外国人の在留カードに記載された在留期間が過ぎていたり、在留カードを持っていない場合は、(1)に該当するおそれがあります。日本に滞在できないオーバーステイの状態で、不法滞在者の可能性があります。外国人が不法滞在であることがわかったときは、入管局は「すみやかに最寄りの入管局に出頭させてください」としています。不法滞在者が自ら入国管理局に出向いて、出国命令制度に基づき、帰国することを勧めています。もし、自ら出頭しない場合は、退去強制の事由に当たるため、入管局の行政手続きにより身柄が収容され、日本国外に強制的に退去させられることになります。

 

2 対応方法
 例えば、留学生が「資格外活動の許可」を得ていないとき、転職予定の外国人の在留資格の変更手続きが終わっていないときなどは適法に就労できない状態です。そのような適法に終了ができる状態ではないときは、外国人に仕事をさせてはいけません。これに違反すると、会社が不法就労をさせたことになり、事業主に3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。両方が科されることもあります。

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