【介護業】在留資格「介護」で受け入れる為に必要な対応と雇用中の注意点

在留資格「介護」

平成29年9月1日より、新しい在留資格「介護」が創設されました。この在留資格は、外国人が介護施設で働くためのものです。

この在留資格を持っていれば、日本の公私の介護事業所と契約をして介護の業務に携わることができます。

日本国内では、介護業に携わる人材の不足を補うことが急務とされており、なかでも外国人材には大きな期待が注がれています。

在留資格「介護」は、日本の国家資格である「介護福祉士」の資格を取得した人でないと許可を受けられません。

つまり、在留資格「介護」の人材を受け入れれば、日本の介護の知識を持つ人材を確保できるということになります。

新設された在留資格なのでまだまだ取得者は少ないのですが、これからますます需要も人材も伸びるだろうと考えられています。

この記事では、在留資格「介護」についての説明と、人材を受け入れる際の注意点などについて説明します。

在留資格「介護」による在留外国人数

厚労省が発表している「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、2023年度には233万人、2040年度には280万人と、介護職員の必要数は年々増加していくことが見積もられています。

様々な業種の人材不足がニュースを騒がせている中で、特に必要な人材数が増えることが見込まれるのが介護業界なのです。

在留資格「介護」によって日本に在留している外国人は、令和2年6月末で1,324人と、他の在留資格に比べるとまだまだ人数が少ないのが現状です(同じ時期で技能実習の在留資格を持っている人は、402,422人です)

その理由としては、在留資格「介護」には取得するための要件があることが考えられます(詳しくは後述します)。

介護の知識、実績や、日本語能力についても、介護業に従事可能な在留資格の中でも特に厳しい基準があるため、まだまだ取得できる方が少ないのです。

逆に言えば、より高い技能を持つ方の採用を検討されているのであれば、在留資格「介護」の人材雇用を検討すると良いでしょう。

まだまだ母数の少ない在留資格「介護」ですが、今後は他在留資格からの変更(特定技能など)によって増加が見込まれますので、選択肢の1つに加える企業も今後増えていくでしょう。

在留資格「介護」を取得するための要件

在留資格「介護」は、介護業務に従事できる在留資格のなかでも特に要件が厳しく定められています。

ここでは、特徴的な要件についてご説明します。

①介護福祉士の試験合格

在留資格「介護」を取得するためには、日本で介護福祉士の試験に合格しなければなりません。この介護福祉士は日本の国家資格の1つで、多くの日本人も受験しています。

日本の資格試験ですので、当然試験は日本語で行われ、外国語対応はありません。

外国人受験者は、試験で問われる介護知識だけでなく、日本語の読解能力も問われることになります。多くの外国人受験生は、介護の専門学校で勉強したり、実際の介護施設で実務を行いながら試験の対策を行うことになります。

②日本人と同等以上の報酬を受ける

在留資格「介護」は、介護福祉士の資格を持つ人に付与されますので、それに応じた報酬を受けなくてはなりません。他の介護福祉士の日本人と同じ扱いで雇用する必要があります。

外国人だからと日本人と区別した不当な内容の雇用関係を結んだ場合は、在留資格そのものが認められなくなる可能性があります。雇用する介護事業所は、この要件について十分に注意を払わなくてはなりません。

在留資格「介護」を取得するためのパターン

在留資格「介護」を取得するためには、いくつかのパターンがあります。具体的には、

①留学生が養成施設で学び試験を受けるパターン

②技能実習生として実務に従事した後試験を受けるパターン

③EPA・特定技能として実務に従事した後試験を受けるパターン

があります。それぞれについて説明します。

①留学生が養成施設で学び試験を受けるパターン

このルートでは、外国人材は次のようなステップを踏むことになります。

・留学生として来日する

・介護福祉士養成施設で、実習を含む学習を2年以上行う

・介護福祉士の国家試験を受験し、合格する

・入国管理局へ在留資格の変更を申請して、許可を得る

・雇用契約を結んだ介護施設で就労を開始する

このケースでは、介護福祉士の試験を受けるまでは「留学生」の在留資格を取得し、実際に介護施設に採用されるときに「介護」の資格に変更することになります。

②技能実習生として実務に従事した後試験を受けるパターン

このパターンでは、外国人材は下記のようなステップを踏むことになります。

・技能実習生として来日する

・介護施設で3年以上の就労と研修を実施する

・介護福祉士の国家試験を受験し、合格する

・入国管理局へ在留資格の変更を申請して、許可を得る

・雇用契約を結んだ介護施設で就労を開始する

このパターンでは、来日当初は技能実習の在留資格を取得し、介護福祉士の試験に合格した時点で「介護」の資格へ切り替えることになります。

③EPA・特定技能として実務に従事した後試験を受けるパターン

このパターンでは下記のステップを踏んで在留資格を取得します。

・特定技能の在留資格を取得して来日する

・介護施設等で通算5年就労する

・介護福祉士の国家試験を受験し、合格する

・入国管理局へ在留資格の変更を申請して、許可を得る

・雇用契約を結んだ介護施設で就労を開始する

この場合、来日時は特定技能の在留資格を取得し、試験に合格したら「介護」の資格へ切り替えることになります。

介護事業所で外国人雇用を検討する際に注意すべき点

外国人材のキャリアステップの構築

在留資格「介護」を取得する場合、当該外国人は介護福祉士の資格を持って来日することになります。よって、この在留資格を取得する方は資格を活かして日本で長く働きたいと考えている方が多いです。

そのため企業としては在留資格「介護」だけでなく、その後の「定住者」や「永住者」、帰化申請等も見据えた対応を検討していくましょう。

長期間にわたって日本で活躍いただくために、生活しやすい環境となるようキャリアステップを構築してあげることが重要です。

試験受験を見据えた労働環境の整備

介護業界では、慢性的な人手不足が発生しており、国内でも大きな話題を呼んでいます。

どの事業所も人が必要な状況ですから、労働者の売り手市場はまだまだ続くと考えられます。それは日本人労働者だけでなく、外国人労働者にも当てはまります。

より良い労働環境の介護事業所があれば、外国人材側もそちらへ流れる可能性があるのです。

そのため、外国人材にも満足してもらえるように労働環境を整備したうえで、本人の業務成果に見合った給与の支払いをすることが重要となります。

イレギュラーが発生した際の対応方法の確立

外国人雇用においては、日本人を雇用する場合と異なる対応を求められるケースが少なくありません。

例えば、退職や休職などが発生した際の対応策も検討しておくことが重要になります。

もし、不法就労助長罪に問われてしまえば、外国人本人だけでなく会社も罰則を与えられる可能性があります。法令違反を起こさないよう、事前に可能性の芽をつんでおくことが非常に重要なのです。

弊社で対応できること

弊所では、介護業で外国人材の雇用を考えておられる企業様のサポートをさせて頂いております。

外国人材採用支援

御社の雇用契約書や就業規則のチェックをいたします。

外国人材の雇用に必須の項目が記載されているか、内容の変更が必要な項目がないかを確認し、レビューさせていただきます。

それに加え、受け入れ可能な職種や在留資格、人物のセレクトも対応いたします。

外国人材を雇用するのであれば、外国人側だけでなく、一緒に働く日本人の従業員にも制度の知識や理解が必要です。

外国人材と日本人材が一緒に気持ちよく働ける環境を作るために、必要な社内研修なども提案・実施いたします。

外国人雇用顧問

外国人材の雇用には、事前の受け入れ体制の構築も勿論必要ですが、雇用後のフォローも非常に重要です。

受け入れ体制を実際に運用してみて、不備や調整が必要な部分があれば継続的に見直していくことが必要です。さらに、万が一トラブルが発生した場合はケースに合わせた適切な対応が求められます。

弊所では、外国人雇用顧問サービスを提供しております。外国人を採用する前の体制の整え方、採用した後に発生したトラブルの対処法まで包括的にご相談いただけます。

継続して専門家のアドバイスを受けたいとお考えの方は、ぜひご活用ください。

法令違反の対応

外国人雇用をする企業が適法な対応をしていなければ、不法就労助長罪に問われる可能性があります。近年ニュースとしてよく取り上げられるので、耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

入管法や外国人雇用に関する法令は非常に複雑で、様々なケースを事前に検討しておかなければなりません。

しかし、肝心のそれらの法令を専門としている法律家はまだまだ少ないのが現状です。そのため、現在懇意にしている法律専門家に相談しても有意義な答えが得られない可能性があります。

弊所では、外国人雇用に関する実績があり、経験豊富な弁護士が対応させていただきます。

外国人雇用にご興味のある方、現在の雇用体制に不安をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

お気軽にご相談ください
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