【介護業】外国人材雇用のポイントと受け入れ方
日本の少子高齢化に伴い、介護業界では人材不足が顕著になってきています。
国は将来の介護人材確保のための対策として、外国人材の活用を視野に入れた環境整備を進めています。その対策が功を奏し、少しずつ外国人材の数が増えてきているのが、近年の介護業界のトレンドと言えるでしょう。
そのため、これから外国人材を受け入れようと考えている企業様も増えてきています。
介護業界の動向
厚生労働省が公開している「外国人介護職員の受け入れと活躍支援に関するガイドブック」には、近年の外国人介護職員の受け入れ増加について次のような数字が記載されています。(※「特定技能」については出入国在留管理庁の公式サイトより最新の数値を反映)
経済連携協定(EPA)を活用して入国する人
平成20年に始まった受け入れから、年々人数が増加し、令和2年1月1日現在では、804箇所の施設等において、3,587人が雇用されています。
在留資格【介護】をもって在留する外国人数
平成29年末には、18人でしたが、令和元年末には592人にまで増加しています。
技能実習生として介護に従事する外国人数
平成29年11月より、外国人技能実習制度の対象職種に介護職種が追加されました。
令和2年1月現在で、介護職種の技能実習計画の申請件数は10,225件であり、そのうち8,652件が認定されています。
特定技能
平成31年4月から施行された制度ですが、令和2年2月末までに介護技能評価試験、介護日本語評価試験の合格者数は、それぞれ2,382人、2,411人となっています。
また、出入国在留管理庁の公式サイトでは「特定技能外国人数の公表」として、令和4年6月末段階では、10,411名が特定技能の在留資格を取得して、日本で就労をしています。
介護業界における外国人雇用のメリット
介護業界における外国人材採用のメリットには、大きく分けて3つのメリットがあります。
人材不足の解消
下の2つのメリットにも通じますが、外国人雇用を検討される介護事業所様の主な理由は、人材確保です。日本国内の介護人材が不足するなかで、人手を確保できるのは大きなメリットであると言えるでしょう。
若い労働力の確保が可能
日本で働きたい!と来日する外国人は若い人材が多いです。体力が必要な介護業界では大いに活躍してくれることが期待できます。
また、受け入れる外国人の国籍によっては、宗教や文化などで年長者を大事にする国もあります。そういった文化で育ってきた人材は、介護業界でも重宝されるでしょう。
地方の介護施設でも人材が確保できる
日本人の介護職を募集する場合、どうしても人口が集中している都市圏でないと確保が難しい傾向にあります。
外国人を雇用する場合、勤務地よりも雇用条件を重要視する人が多いです。そのため、日本人だと応募の少ない地方の介護士施設であっても、採用できる可能性が十分にあるのです。
介護業界で雇用可能な在留資格
現在、介護業において外国人材を採用するためには、下記の4つの在留資格を取得して働いてもらう方法があります。
EPA
在留資格「介護」
技能実習
特定技能
それぞれについて概要を整理していますが、より詳細な内容はこちらで解説しておりますので、ご覧ください。
「介護業で外国人を採用するには?受け入れるための4つの在留資格を解説」
EPA(経済連携協定)
EPAとは、特定の国同士で貿易や投資を促進するために、規制や関税を緩和したり、あるいは撤廃したり、環境整備を行うことを取り決めた条約を指します。
介護業に関しては、外国人が日本の国家資格の一つである「介護福祉士」の取得を目指す制度を導入する内容でEPAを締結しています。ちなみに、この制度が適用されるのは、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国です。
あらかじめ看護や介護に関する知識をある程度持った人材が、日本語教育を受けてから来日し、技能研修のために日本で働きます。
そのため、その他の制度と比べて高い介護技術やコミュニケーション能力を持った人材を受け入れることができます。
ただし、彼らの目的はあくまでも「介護福祉士」の資格取得であり、入国後4年めには国家試験を受ける必要があります。
受入期間は彼らの資格取得のためのサポートを実施しなければなりません。
EPAについては、こちらの記事でより詳細に解説をしております。詳しくは下記の記事をご覧ください。
「【介護業】EPA(介護福祉士候補者)で受け入れる際に注意すべきポイント」
在留資格「介護」
「介護」という在留資格は、2017年9月に新しく作られました。
日本で介護職として就職するための在留資格で、「介護福祉士」の資格を所有している人や、あるいは介護福祉士養成校を卒業した外国人が対象となります。
介護福祉士の資格試験はすべて日本語なので、この試験に合格した、あるいは合格を目指している人はかなりの日本語能力があると考えられます。
介護の在留資格の特徴として、在留期限の上限がないことと、家族の帯同が認められることがあげられます。
そのため、日本で長く働き続けたいと考えている人を採用できるのです。
在留資格「介護」については、こちらの記事でより詳細に解説をしております。詳しくは下記の記事をご覧ください。
「【介護業】在留資格「介護」で受け入れる為に必要な対応と雇用中の注意点」
技能実習
技能実習制度とは、日本から諸外国への技能または知識の移転を目的とした制度です。介護が技能実習の対象に加わったのは、2017年11月のことです。
日本に入国した技能実習生は、1~2ヶ月の間日本語や介護の基礎知識に関する講習を受けます。その後各受け入れ機関に配属されて実際に就労を開始します。
また、技能実習の1年目と3年目の修了時には、試験を受けて合格しなければなりません。
受入機関や監理団体が優良と認定され、かつ実習生自身も試験に合格すると最長5年まで実習できます。
しかし、技能実習については、受入機関や監理団体の法令違反や、ブローカーによる引き抜きを原因とした失踪などが社会問題になっているのも事実です。
円滑に技能実習生を受け入れるためには、適法な運営や、監理団体選びが重要になってきます。
技能実習については、こちらの記事でより詳細に解説をしております。詳しくは下記の記事をご覧ください。
「【介護業】技能実習を受け入れるために必要な対応と受け入れ中の注意点」
特定技能
特定技能の「介護」という在留資格は、2019年4月に施行された新しい在留資格です。
技能実習が、あくまで発展途上国への技術の移転を目的とした制度であるのに比べて、特定技能1号は人材不足の解消不足を目的につくられた制度です。
介護の技術や日本語でのコミュニケーション能力をはかる試験に合格した後、介護事業所で最大5年間働くことができます。
また、その間に介護福祉士の国家試験に合格すれば、在留資格「介護」に切り替えが可能となり、期限なく働けるようになります。
3年目までに修了した技能実習生については。特定技能1号で必要な試験が免除される場合があります。
他の在留資格で働いていた人材に、継続して働いてもらう手段としても活用が可能です。
特定技能については、こちらの記事でより詳細に解説をしております。詳しくは下記の記事をご覧ください。
「【介護業】特定技能外国人を受け入れるために必要なこととは」
雇用後の管理で注意すべきこと
外国人を雇い入れる場合、日本人を雇う時とは違う注意をすべき点があります。
その中でも特に注意が必要なものについて、全在留資格全般に言えるものと、特定技能に関して言えるものに分けてお伝えします。
全在留資格全般
社会保険への加入
外国人だからといって、社会保険への加入を怠ってはなりません。
・医療保険(健康保険)
・年金保険(厚生年金)
・雇用保険
・介護保険
・労災保険
については、必ず手続きを行うようにしましょう。
また、外国人の多くが日本の保険制度に馴染みがありません。自分の給料からなぜお金が引かれているのか「天引き」について疑問を持つケースも非常に多いです。
雇った外国人が不安にならないよう、事前に日本の保険の仕組みについては簡単に説明しておき、理解をしてもらう努力が必要でしょう。
年末調整
外国から日本に働きに来る方の多くが、母国にいる家族を扶養に入れているかと思います。
その場合、年末調整までに保有の扶養証明書に記載がある家族への送金証明書を保管しておいてもらうように伝えなければなりません。
こちらは、年末調整のときに、扶養控除申告書と一緒に提出します。
留学生をアルバイトとして雇う場合
留学生をアルバイトとして雇う場合は、他の在留資格とまた違うポイントに注意しなければなりません。まず、「資格外活動の許可」を得ているかどうかを確認します。
留学生の在留資格は本来就労が認められていないので、入管に申請して特例を認めてもらう必要があるのです。
さらに、1週間の労働可能時間は28時間以内です。それ以上働くと不法就労となり、外国人本人だけでなく雇用している企業にも罰則が適用されます。
ただし、夏休みなど学校の長期休暇機関に限っては、週40時間まで就労できます。
特定技能
特定技能外国人への生活支援・就労支援が必要
特定技能で外国人を受け入れる場合は、下記の項目において支援を実施することが求められます。
これらの対応は自社で行うことも可能ですが、見て頂くとわかるようにかなりの量があり、たくさんの労力を費やします。
自社での対応が難しい場合は、登録支援機関を頼る方法もあります。
登録支援機関とは、特定技能外国人が所属する機関から委託を受けて、特定技能外国人の支援計画の実施を全て行うものを指します。
費用はかかりますが、その分十分な支援を行ってくれるので、多くの受入企業が登録支援機関を活用しています。
特定技能協議会への加入
介護分野で特定技能外国人を受け入れる場合は、特定技能協議会への加入が必要です。
加入の際には、いくつかの書類を用意して申請しなければならないので、事前に準備を行いましょう。
下記のものが主に必要となります。
・雇用条件書
・特定技能1号の外国人支援計画書
・介護分野において業務を行う事業所の概要をまとめた書類など
・日本語能力を証明する書類
・介護技能の水準を証明する書類
・在留カード
弊事務所のサポート内容
弊所では、介護業で外国人雇用を検討されている方に向けて様々なサポートを実施しております。
外国人材採用支援
御社の就業規則や雇用契約書を確認し、外国人材を雇用する場合に調整が必要な項目などのレビューを実施します。
受け入れ可能な職種や、人材の選定などもお手伝いいたします。
外国人を受け入れる場合、外国人本人だけでなく、マネジメントをしたり一緒に働いたりする日本人従業員にも知識や理解が必要です。
受け入れ体制を整えるために必要な社内研修なども弊所がご提案・実施させていただきます。
外国人雇用顧問
外国人を雇用する場合、事前に適切な体制を整えることはもちろん大切ですが、「受け入れたらそれで終わり」とはなりません。
継続的な体制の見直しも必要ですし、万が一トラブルが起こった場合に適切な対応が求められます。
弊所では、外国人雇用顧問サービスを提供しており、採用前の体制づくりから採用後のトラブル対策まで包括的にご対応させていただいております。
継続して専門家に相談したいとお考えでしたら、是非ご活用ください。
法令違反対応
ニュースなどで、適法な外国人雇用を行わなかった企業が不法就労助長罪などの罪に問われている事例などが良く報道されています。
入管法や、外国人雇用にかかわる法令は非常に複雑な上、精通している専門家が少ないためトラブルの発生リスクが高いと言えます。
弊所では、万が一御社が法令違反や改善勧告を受けた場合などに、どのように対応すべきかについてアドバイスをいたします。
各種手続き対応
外国人を雇用する場合、様々な機関へ申請をしたり書類を提出する必要があります。
それぞれの書類の作成は細かなルールに則る必要があり、作業に慣れていない方だと準備に膨大な時間と労力が必要となります。
弊所では、受け入れ企業様に変わって手続きを行ったり、提出書類の作成を行ったりすることが可能です。
当事務所では介護事業所様における顧問プランもご用意しております。
外国人雇用に留まらず、事業運営において起きる様々な法的課題に対して顧問弁護士としてアドバイス・相談対応が可能です。
それ以外のご相談につきましても柔軟に対応いたしますので、ご不安をお持ちの事業者様はどうぞお気軽にご相談ください。