【介護業】特定技能外国人を受け入れるために必要なこととは

介護業と特定技能外国人

深刻な国内の人手不足を受け、介護業では外国人材を広く受け入れて働いてもらう傾向が強くなってきています。

介護業界で外国人に働いてもらう場合、下記4つの在留資格のうちいずれかを取得してもらわなくてはなりません。

(日本人の配偶者や永住者など、就業に制限のない在留資格は省いたものです)

EPA

在留資格「介護」

技能実習

特定技能

この中でも近年特に注目されているのが、特定技能です。

特定技能の在留資格を取得する人は年々増える傾向にあり、これから主流になっていくと考えられます。

この記事では、介護業を営む企業が特定技能外国人を雇用する際におさえておきたいポイントについて説明します。

介護業における特定技能外国人受け入れ状況

特定技能という新しい在留資格が創設され、施行されたのは平成31年4月です。令和2年2月末までの介護技能評価試験と介護日本語評価試験の合格者数は、それぞれ2,382人、2,411人となっています。

これからも合格者は増加し、本格的に特定技能外国人が介護業界で受け入れられていくと考えられます。

ただし、特定技能外国人はいくらでも受け入れられるわけではありません。

外国人の介護従事者ばかりが増えていくと、日本人の雇用に影響が出てしまうからです。特定技能外国人を受け入れられる人数は、業界別に上限が定められています。

介護分野においては、平成31年からの5年間において30万人ほどの人材不足が予想されています。そのため、6万人を上限として特定技能外国人を受け入れることになっているのです。

外国人が介護分野の特定技能1号を取得するまでの流れ

外国人が特定技能1号の在留資格を取得するためには、

①介護技能評価試験と日本語能力試験の両方に合格

②介護福祉士養成施設を修了する

③「EPA介護福祉士候補者」として在留期間満了(4年間)

④「技能実習2号」を良好に修了

といった4つの場合が考えられます。

それぞれについて説明します。

①介護技能評価試験と日本語能力試験の両方に合格

このケースの場合、外国人は、

・介護技術の知識をはかる試験である「介護技能評価試験」と、

・基本的な日本語能力をはかる試験(「国際交流基金日本語基礎テスト」あるいは「日本語能力試験N4以上」)と、

・介護業務における日本語能力をはかる「介護日本語評価試験」

の3つに合格しなければなりません。

介護技能評価試験では、特定技能外国人に求められる技能水準を満たしているかどうかをチェックします。厚生労働省が発表している技能水準とは、

「介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を自ら一定程度実践できるレベル」

だとされています。

試験は実施する国の言語で行われます。学科試験と実技試験に分かれており、模擬問題なども公開されているので事前に対策しておくことが重要です。

介護以外の特定技能の場合は、前者2つしか在留資格取得の条件に含まれていません。つまり、技能試験と日本語能力試験の2つだけです。

しかし、介護業の特殊性から、そこで働く外国人にはより現場に即したコミュニケーション能力が求められます。そのため、介護現場で通用する日本語能力をはかる試験が追加されているのです。

②介護福祉士養成施設を修了

本来であれば、上記の試験を受けて合格することが求められますが、介護福祉士養成施設を修了した人は、十分な介護の技能と日本語能力を有しているものとして、試験が免除されます。

介護福祉士養成施設とは、「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づいて認可された施設です。

養成施設では十分な技能を身につけるためのプログラムが組まれており、修了後には即戦力として働けるような技術や知識を有すると考えられます。

また、養成施設の入学前には、日本語教育のための機関で6ヶ月以上日本語を学習することが要件です。それに加えて養成課程でも2年以上をかけて日本語による実習プログラムがあるため、修了後には十分なコミュニケーション能力を身につけられるのです。

③「EPA介護福祉士候補者」として在留期間満了(4年間)

EPA介護福祉候補者とは、EPA(経済連携協定)に基づいて、日本の介護施設で研修と就労を続け、日本で介護福祉士の資格取得を目指す方のことを指します。

候補者となった外国人は、介護福祉士養成施設で学習するか、それと同等レベルの設備や制度が整った介護施設で研修を受けることになります。

4年間に及ぶ学習と研修が適切に行われたのであれば、十分な知識や技術、経験を有していると考えられます。

また、就学・研修の要件の一つに、あらかじめある程度の日本語能力を備えていることと、来日後に日本語の研修を修了することが含まれています。

施設での研修が始まってからも、介護福祉士の国家試験を想定した日本語での研修や実習が行われます。

コミュニケーション能力についても一定のレベルを有していると考えられます。

④「技能実習2号」を良好に修了

技能実習生として、第2号技能実習を良好に修了した人は、十分な介護の技術、日本語でのコミュニケーション能力があるとして、試験が免除されます。

というのも、技能実習2号で求められる技能は、特定技能「介護」で求められる要件と同じ水準であると考えられています。よって、その修了者は介護の現場で即戦力として働くのに必要な技能をすでに習得しているのです。

また、技能実習2号を修了するまでに約3年間日本で生活し、日本語で実習を行ってきたということですから、コミュニケーション能力についても問題ないと判断されるのです。

介護分野の特定技能1号外国人を受け入れるには

介護分野で、特定技能1号外国人を受け入れるためには、まず外国人に「特定技能」の在留資格を取得してもらわなくてはなりません。

特定技能「介護」は、在留資格は原則1年です。6ヶ月あるいは4ヶ月ごとに更新が可能で、通算5年までであれば延長可能です。

特定技能「介護」の申請書類

特定技能「介護」の在留資格を申請するために必要な書類の一例は以下の通りです。こちらでは主な書類を取り上げます。ケースによってはこれら以外の資料の提出が求められる場合があります。

・特定技能外国人の在留書申請に係る提出書類一覧・確認表

・在留資格認定証明書交付申請書

・特定技能外国人の報酬に関する説明書

・特定技能雇用契約書の写し

・雇用条件所の写し

・事前ガイダンスの確認書

・支払い費用の同意書及び費用明細書

・徴収費用の説明書

・特定技能外国人の履歴書

・技能試験の合格証明書の写しまたは合格を証明する資料

・日本語試験の合格証明書写しまたは合格したことを証明する資料

上記の必要資料は、介護技能と日本語能力の試験を受けて技能を証明するパターンのものです。

在留資格「技能実習」からの移行などの場合は別途技能を証明する資料が必要になります。

特定技能「介護」に許される業務・職種・雇用形態・報酬について

そもそも、特定技能「介護」の在留資格を持つ人が行うことができる業務は、

・技能試験などにより確認された技能を用いた身体介護

(入浴、食事、排泄の解除など)

・上記業務に従事する日本人が通常従事することになる関連業務

(物品の補充や、施設内のお知らせなど掲示物の管理)

・就業場所は「介護」業務の実施が一般的に想定される範囲、具体的には、介護福祉士国家試験の受験資格要件において「介護」の実務経験として認められる施設

です。

介護の特定技能においては、外国人が従事できるのは「直接雇用」の場合のみです。派遣雇用が認められているのは農業と漁業の分野だけなので、混同しないよう注意しなくてはなりません。

また、雇用契約の締結の際は、下記の条件を満たさなくてはなりません。

・報酬の金額が日本人従事者の金額と同等以上である

・外国人が一時帰国を希望した場合には、休暇を取得させる

・報酬の金額や福利厚生などの待遇で差別的な扱いをしないこと

特定技能「介護」の場合、来日して就労した時点から、法律で定められた基準に基づいて就業し、報酬が算定されます。

所定の研修や実習を経てようやく就労報酬が発生する技能実習や、EPA介護福祉士候補者(就労コース)とは異なりますので注意してください。

受け入れ企業の注意点

特定技能の在留資格を持つ外国人を受け入れる場合、受入企業は次のような条件を満たしていないとなりません。

・労働や社会保険、租税に関する法令を遵守していること

・1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を、非自発的に離職させていないこと

・5年以内に出入国・労働法令違反がないこと

介護分野では人材不足の状況が地域によって大きく異なります。そのため、事業所ごとに特定技能資格者を受け入れられる人数枠が設定されています。

その点にも注意が必要となるでしょう。

また、「特定技能外国人支援計画」を策定し、実際に支援を行うことや、特定技能協議会への参加が求められます。

特定技能外国人支援計画

受入企業は、特定技能外国人が安心して就労したり生活したりできるように、体制を整えなくてはなりません。

具体例としては、日本での住居を確保する、生活で困ったことが起きたときに相談できる場を設ける、日本の生活文化のオリエンテーション、生活のための日本語学習、外国人と日本人の交流促進などがあげられます。

これらについて、外国人を受け入れる前に支援計画を策定することが重要です。

かといって上記の対応は、非常に手間と時間がかかり、自社で完結させるのは難しいかと思います。

そういった企業に向けて、登録支援機関の制度が設けられています。

登録支援機関とは、受入企業から委託を受けて特定技能1号を円滑に行うための在留期間における支援計画の作成と実施を行います。

登録支援機関を活用することで、受け入れ企業の負担を大きく減らすことができるので、自社での実施が難しい場合は検討することをおすすめします。

分野別特定技能協議会

特定技能外国人を受け入れる企業は、分野別特定技能協議会への参加が義務づけられています。

この協議会は、所轄省庁・関係省庁・業界団体・学識経験者などで構成されています。

協議会では、制度の周知やコンプライアンスの啓発、各分野における人手不足の状況の分析や、特定技能人材の受け入れに関して地域の偏りの是正などが行われます。

外国人介護人材受入環境整備事業

介護業界では今後も特定技能外国人材の増加が見込まれているため、現場で外国人が円滑に就労し定着できるように「外国人介護人材受入環境整備事業」が令和元年に創設されました。

この事業は今後も拡充が図られる予定です。

上記事業により、各自治体や公募で選ばれた民間団体によって、

・送り出し国における試験実施

・各地方での人材の受け入れ促進(説明会や相談会の実施など)

・集団での研修

・日本語学習環境の整備

・外国人の悩み相談に対する支援

などが実施されます。

要件を満たした取り組みに対しては、予算の範囲内で自治体より補助金が交付されます。

詳しく知りたい方は、大阪府の事業案内ページをご参考にしていただければと思います。

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