【解決事例】偽造在留カードを所持する外国人を雇用したため不法就労助長罪の嫌疑を受けたが弁護士の介入により不処分に終わった事例
業種 :運送業
外国人の国籍 :ベトナム
外国人の在留資格 技能実習
外国人の職種:運送業
(刑事事件関係)被疑罪名:不法就労助長罪 入管法73条の2 労働施策推進法28条
事案の説明
A社は大阪府 泉佐野と梅田2カ所と奈良県に1カ所事業所をもつ運送会社(倉庫業及び運送業)でした。従前雇用していたベトナム人の紹介でアルバイト雇用していたベトナム人20名を倉庫でピッキングの作業をさせていたところ、ある日突然大阪府泉佐野の事業所に警察がきて、そのときいたベトナム人のアルバイト3名を任意同行していきました。
A社社長の田中さん(仮称)は驚いて、弊所にご相談に来られました。
相談の背景
A社の泉佐野事業所は配送センターの倉庫でピッキングした物品を運送する事業を行っていましたが、支店長佐野さん(仮称)は外国人の在留カードが「留学」になっており、資格外活動許可の記載もあったため、入管庁の在留カード失効照会で失効していないことを確認してアルバイトとして20名のベトナム人を雇用していました。
しかし、その在留カードは「技能実習」を「留学」に偽造したものであり、在留期間自体は偽造されていなかったために失効表示されなかっただけでした。当該外国人は技能実習実施場所から逃走して偽造した在留カードを利用してアルバイトしていたのでした。
不法就労助長罪の特徴
入管法73条の2 1項1号の不法就労助長罪
外国人に不法就労活動を「させた」とは
「外国人との間で何らかの対人関係上優位に立っており、外国人が事故の指示通り不法就労活動に従事する状態にあることを利用して積極的に働きかけ、そのことにより外国人が不法就労活動に従事するに至ったことを意味する」のが判例です。
すなわち、事業主 経営者でなくても会社の上司という立場(監督的立場)でも不法就労助長罪は成立します。
入管法73条の2 2項では不法就労であることを知らないことを理由として処罰を免れないと規定しており、
同項但し書きでは「ただし、過失の無いときは、この限りでは無い」として過失が無かったことの立証を事業主側に負担させています。すなわち、不法就労にあたることを過失無く知り得なかったことを立証しなければ罪を逃れられない構成になっています。
過失=確認に当たって尽くすべき手段を全て尽くさなかったことを意味する。
尽くすべき手段を全て尽くしたとは言えず「過失」に該当することになります。
解決ポイント
弁護士が介入して、これまでの雇い入れの経緯を聴取し、すぐに外国人らの雇用に当たり徴収した資料を保存整理させました。
さらに取調が任意であり、自分が話していない調書の記載には訂正を求めサインを拒絶するべきであることなど取調に対する対応を徹底しました。
また、今後の給与支払については本人確認のためにパスポートを持参させて写しをとること本人確認がしっかり出来ない以上は支払を保留すべきことを指示しました。
ただ、不法就労の外国人を通報は法的義務では無いために保留としました。
また、労働施策推進法28条の外国人雇用状況の届出について未了であったので速やかにハローワークへの届出を履行させました。
さらに外国人が利用していたロッカーを整理させ残留物から偽造カードがでてきたのでこれを警察に届出させました。
警察にはタイムカード、在留カードの写し等押収され、支店長も取調をうけましたが、弁護士からの働きかけにより、無事不起訴処分で前科がつくこと無く終了することが出来ました。
その後は、弁護士が外国人を雇用する際に逐一チェックをすることにより安心して外国人を雇用して事業継続することが出来ております。