外国人を受け入れる体制の整備

「外国人が求人に応募してきたが、これまで外国人を雇用したことが無い。外国人を雇用しても大丈夫だろうか。何かすべきことはないだろうか。」

 

企業が外国人を雇用する場合、日本人を雇用する場合と異なる問題が生じます。1つは、在留資格等の入管制度上の問題です。もう1つは、外国人の人間関係や業務への適応といった、外国人の労働環境の整備に関する問題です。入管制度上の問題についてはこれまでに説明してきましたので、本記事では、外国人の労働環境の整備について説明します。

 

外国人の労働環境の整備

言語や生活様式の違い等から、日本人にとって常識と思えることであっても外国人が知っているとは限りません。そこで、外国人が働きやすいように、社員全員を対象とした事前のセミナーを行ったり、外国人を対象として事前のガイダンスを行うことが、外国人が社内に溶け込み、業務への適用をスムーズにするために必要となります。

 

「特定技能1号」の外国人を雇用する際の支援計画

外国人の労働環境の整備については、「特定技能1号」の在留資格により来日する外国人の支援計画についての諸規定が参考になりますので、その一部をご紹介させて頂きます。

 

「特定技能1号」の在留資格を有する外国人を雇用する場合、支援計画を策定し、それに基づいた支援を行わなければなりません(改正入管法2条の5第6項)。そして、基準省令により、支援計画の内容として、以下のものを定める必要があります。

①入国前の事前ガイダンスの提供

②出入国する際の送迎

③適切な住居の確保に係る支援

④生活に必要な契約に係る支援

⑤生活オリエンテーションの実施

⑥日本語学習の機会の提供

⑦外国人からの相談・苦情への対応

⑧各種行政手続についての情報提供・支援

⑨日本人との交流促進に係る支援

⑩外国人の責に帰すべき事由によらないで雇用契約を解除される場合の転職支援

⑪定期的な面談の実施、行政機関への通報

 

支援計画の具体的内容

そして、「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」には、支援計画に基づき実施すべき具体的事項が、義務的支援事項と任意的支援事項に分けて、具体的かつ解りやすく記載されています。

 

例えば、③適切な住居の確保に係る支援として、一人当たり最低7.5㎡以上の社宅を提供するか若しくは賃貸不動産を紹介する必要があり、紹介する場合には連帯保証人となるか緊急連絡先となることとされています。ほかにも、⑤生活オリエンテーションとして、金融機関の利用方法(出入金や振込の方法、ATMの使い方)、交通ルール(歩行者は右側通行、車両は左側通行で歩行者優先等)、電車の利用法や切符・定期券の購入方法の説明、ゴミの廃棄方法等の生活マナー、犯罪となる行為、社会保障や税金、マイナンバー制度、等について、外国人が十分に理解できる言語により説明しなければならないとされています。また、⑨日本人との交流促進支援として、地域住民との交流の場に関する情報の提供や、自治体による地域の行事に関する案内等を行わなければなりません。

 

「特定技能1号」以外の在留資格を有する外国人を雇用する場合には、上述の様な支援計画を実施する必要は必ずしもありません。しかし、母国を離れ精神的に不安を抱える外国人を雇用する場合、外国人をサポートする体制を整えることは、社内の人間関係の向上、生産性の向上につながり、ひいては会社の利益に大きく関わることとなり得ます。そこで、外国人を受け入れたいという事業主の方は、ぜひ一度、「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」に目を通して見ることをお勧めします(法務省HP)。

 

弁護士によるサポート

2019年4月に新設された「特定技能」の在留資格制度に伴い、様々な業界において外国人労働者が増加すると同時に、会社と外国人労働者の間のトラブルも増加すると考えられます。また、労働関係法令自体が複雑なことから、外国人を受け入れた経験のない企業の方が独自で外国人労働者を受け入れるための体制を整備することは、相当の困難を伴います。

 

当事務所は、多くの外国人労務問題についての実績があります。また、企業法務に関しては、2度目の法律相談までは無料となっておりますので、どうぞお気軽にご相談下さい。企業と外国人労働者の間の架け橋となれる様、全力でサポート致します。

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