外国人刑事事件トラブル

「友人の外国人留学生が万引きで逮捕されました。強制送還されないでしょうか。」

「雇用している外国人従業員が突然逮捕されました。雇用を続けても問題ないでしょうか。」

 

外国人労働者が逮捕された場合、外国人自身は、有罪判決を受けるか否かという点の他に、強制退去事由に該当し本国への強制送還(強制退去処分)されないか、という点について不安を抱えることとなります。一方、当該外国人を雇用している企業の側においては、犯罪を犯した外国人の解雇するか、もしくは雇用を継続するかを検討することになります。それでは、外国人従業員が逮捕された場合、どの様に対応すればよいでしょうか。

 

外国人の強制退去事由

入管法では、外国人が1年を超える実刑判決を受けた場合、強制退去事由となると定められています(入管法24条4号リ)。また、入管法別表第一の在留資格を持つ外国人については、窃盗罪や薬物事犯等、所定の犯罪で有罪判決が確定することにより、強制退去事由に該当することとなります(入管法24条4号の2)。もっとも、強制退去事由に該当しても、在留特別許可によって日本に留まることができる場合もあります。

 

したがって、「留学」の在留資格を有する外国人留学生の方が、窃盗罪で逮捕された後に起訴されると、執行猶予つきの有罪判決であっても強制退去事由に該当するため、強制退去手続が取られる可能性が生じます。

 

逮捕された外国人の解雇の可否

逮捕されたことを理由とする解雇は懲戒解雇となります。労働者を懲戒解雇する場合には、就業規則等に懲戒事由(懲戒理由と効果)を定め、従業員に周知した上で、「解雇の客観的合理性、社会的相当性」が認められる必要があります(労働契約法16条)。

 

1.逮捕後に起訴猶予処分若しくは無罪判決を受けた外国人の解雇

逮捕されたからといって、その方が必ずしも犯罪を犯したとは限りません。実際、逮捕された人が、「嫌疑不十分」として起訴されないケースは沢山あります。また、裁判の後に無罪となる可能性もありますし、懲戒理由として主張した起訴事実が認定されない可能性もあります。それにもかかわらず、逮捕されたという理由で解雇すれば、「解雇の客観的合理性、社会的相当性」が認められず、懲戒権の濫用として解雇は無効となると考えられます。

 

2.逮捕後に有罪判決を受けた外国人の解雇

就業規則に「有罪判決を受けたこと」を懲戒事由と定めた上で、従業員に周知していた場合、「解雇の客観的合理性」(懲戒事由該当性)は認められます。しかし、懲戒解雇という選択が、犯罪行為の性質や、会社の社会的信用の低下の程度と比べて相当といえる場合でない限り、「社会的相当性」は認められず、解雇権の濫用として解雇は無効となります。具体的な判断は、会社の業務内容・規模、職務内容、採用経過、解雇理由、過去の懲戒歴等の事情によって異なります

 

したがって、会社の業務と何ら関わらない軽微な犯罪で外国人従業員が逮捕され、有罪となったとしても、当該外国人を懲戒解雇することは、解雇権の濫用として無効となるおそれがありますので、懲戒解雇の判断は慎重に行う必要があります。

 

3.不法就労(資格外活動罪)として逮捕された場合

外国人従業員が不法就労により逮捕された場合、当該外国人を雇用していた企業には、不法就労であることを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかったときを除き、不法就労助長罪が成立します。

 

そのため、外国人を雇用するにあたっては、当該外国人が保有する在留資格や在留資格該当性の範囲等をしっかりと確認する必要があります。また、在留期限を超えて就労していることが判明した場合等は、当該外国人の雇用を継続してはいけません。

 

外国人従業員が逮捕された場合に取るべき対応

まず、就業規則で「起訴休職」に関する規定を設けた上で、逮捕後、少なくとも有罪判決が確定するまでは休職扱いにすることが考えられます。そして、起訴猶予処分となるか、無罪であることが確定した場合には、復職の手続を取ることが適切であると考えられます。

 

仮に有罪が確定したとしても、上述した様に、解雇権の濫用となる危険がありますので、懲戒解雇をするか否かについては慎重な判断が求められます。しかし、従業員に有罪判決が出された場合、事業主の側としては、会社の評判が落ちる危険から冷静な判断ができない場合も考えられます。そのため、懲戒解雇の可否の様な複雑な判断に関しては、専門家に一度相談してみることをお勧めします。

 

当弁護士事務所は、外国人労務問題について多くの案件を処理しております。とくに、企業法務に関しては、2度目の相談までは無料となりますので、どうぞ、お気軽に弁護士にお尋ねください。

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