外国人の団体交渉

「外国人従業員を解雇したところ、労働組合から団体交渉を申し入れられた」

「外国人従業員が会社外の合同組合(ユニオン)に加入しており、その合同組合から団体交渉を申し込まれた」

 

近年、外国人労働者の増加に伴い、外国人が労働組合を結成し、使用者と団体交渉を行う例も増えてきています。団体交渉とは、労働者の団体(労働組合)が、労働時間、貸金、その他の労働条件に関して、使用者と交渉を行うことをいいます。そして、雇用する労働者の所属する労働組合の代表者からの団体交渉の要求があった場合、使用者には誠実交渉義務があり、正当な理由なく拒否することは認められません(労組法7条2号)。

 

労働者が解雇後に労働組合に加入した場合

外国人労働者に限らず、労働者の方々の中には、懲戒解雇された後に労働組合に加入し、加入後に労働組合法等の法律を学んだ上で、団体交渉を申し入れる場合が見られます。

 

労組法7条2号が使用者に団体交渉を義務付けているのは、「使用者が雇用する労働者」の代表者が申入れを行った場合です。そうすると、既に解雇された労働者は、もはや「使用者が雇用する労働者」ではないので、解雇された労働者の加入する労働組合からの団体交渉は拒否できるとも考えられます。

 

しかし、当該労働者の解雇が、要件を満たさない等により無効となった場合、当該労働者は「使用者が雇用する労働者」に当たることとなります。そのため、労働組合が、当該労働者の解雇の無効を主張して団体交渉を求めてきた場合には、会社は団体交渉の要求を安易に拒否することは適切とはいえません。相手方の主張と会社の行った解雇手続を参照した上で、解雇の要件を満たしているか否かを慎重に検討したうえで、団体交渉に応じるべき場合があります。

 

労働組合の要求を受け入れる義務はない

団体交渉に応じた場合、会社には誠実交渉義務が生じますが、労働組合の要求を受け入れる義務は生じないことに注意が必要です。誠実交渉義務は、あくまで労働組合との交渉の席につき、誠実な交渉を行う義務でしかありません。

 

会社が当該外国人を解雇した解雇理由を丁寧に説明し数度の交渉を重ねた後、互いの主張が平行線をたどり譲歩の余地が無い様な場合には、交渉を打ち切っても誠実交渉義務違反として不当労働行為とならない場合もあります。

 

合同組合(ユニオン)との団体交渉

合同組合とは、会社内部ではなく、一定地域を団結の場として組織された労働組合のことをいいます。外国人技能実習生や特定技能の外国人労働者の多くは中小企業で就労しており、中小企業内部では外国人が労働組合を結成することは難しいため、外国人労働者は合同組合に加入することが多くなります。

 

外国人にも労組法は適用されるため、当該合同組合が労組法2条の「労働組合」の要件を満たし、労組法7条各号の義務的団交事項について団体交渉の申入れがなされた場合には、正当な理由なく拒否することは不当労働行為として違法となります。

 

外国人の労働組合と団体交渉する際の使用言語

東京都労働委員会は、中学校の外国人教師の加入する合同組合が英語での団体交渉を求めた一方、学校側は日本語での交渉を求めた事件で、「日本語による交渉…に固執することなく、誠実な団体交渉に応じなければならない。」との救済命令を発しました。

 

この救済命令により、外国人の加入する合同組合との団体交渉全てにおいて、労働組合側の母国語により団体交渉を実施しなければならなくなったとは限りません。しかし、会社には誠実交渉義務がありますので、双方の言語知識や交渉能力を考慮した上で、対応が可能なのであれば、使用言語に配慮することが必要と考えられます。

 

団体交渉の申入れがあった場合には、是非弁護士にご相談下さい

団体交渉の申入れがあった場合、そもそも団体交渉に応じなければならないのか、応じる必要があったとしても、要求にどの程度応じる必要があるかについて、会社の側では判断の付かない場合が多いと思われます。また、合同組合の様に、広範囲の地域で団体交渉を行っている労働組合の中には、強い交渉力を背景に不当な労働協約を締結し、会社を実質的に支配しようとする組合も存在しえます。

 

このような場合に、経営者のみで判断することは、会社に大きな損失を生じさせる危険があります。当弁護士事務所は、企業法務に関しても多くの実績を有しており、企業法務に関しては2度までの法律相談は無料となっております。簡単な相談で解決することもございますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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