外国人の賃金・残業代トラブル
「外国人の雇用を考えているが、どのような条件で雇用すればいいのでしょうか。」
「外国人労働者から残業手当を請求されたのですが、支払わなければならないでしょうか。」
厚生労働省の発表によれば、現在、外国人労働者の数は146万人を超え、この10年間でほぼ3倍に増えています。そして、外国人労働者の増加に伴い、外国人雇用に関する紛争も急増しています。それでは、外国人を雇用する際、企業はどのようなルールを守る必要があるでしょうか。
外国人を雇用する際に企業が守らねばならないルール
日本では、労働者保護を目的として、労働基準法・最低賃金法等の労働者保護法が制定されています。そして、これらの法律は強行法規となりますので、日本で働く全ての労働者(外国人を含む)に適用されます。そのため、企業と外国人労働者の間で、これらの法令に反する取り決めをしても無効となります。
外国人も日本人と同等の労働条件で雇用する必要があります
労働基準法では、労働者がその国籍、宗教等の理由から賃金や労働時間などの労働条件について差別的な取り扱いをしてはならないことが規定されています。そのため、外国人であることを理由に日本人と違う賃金が支払われることは、違法となります。
また、労働基準法37条1項により、時間外労働、休日労働に対する割増賃金の支給が義務付けられています。そのため、外国人が時間外労働や休日労働をした場合には、残業手当や休日手当を支給しなければなりません。
このほか、最低賃金法により、地域別・産業別の最低賃金が定められています。最低賃金は頻繁に改訂されますので、最低賃金を下回っていないかは注意が必要となります。
法令違反に対する罰則
最も重い罰則としては、外国人を「タコ部屋」などで強制労働させた場合、労働基準法第117条により、「1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金」に処せられます。ほかにも、事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせた者には、不法就労助長罪が成立し、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処せられます(入管法73条の2第1項1号)。たとえば、2018年3月6日、ラーメン店「一蘭」の経営者らが、ベトナムや中国からの留学生計10人を、週28時間を超えて働かせたことにより、不法就労助長罪として書類送検されています。
このほか、「技能実習」の外国人を受け入れている企業が違法行為により改善命令や許可・認定の取消しを受けた場合には、企業名等と共に法令違反の事実が公示されます(技能実習法15条2項、16条2項)。記憶に新しい事件としては、2019年1月25日、三菱自動車やパナソニックといった日本を代表する大企業が、技能実習計画の認定を取り消されたと公表されました(法務省プレスリリース)。このように、法令違反を犯すと企業名とともに法令違反の事実が公表され、企業イメージも大きく傷つくこととなります。
また、違法行為の発覚により、5年間「特定技能」「技能実習」の外国人労働者を雇うことができなくなりますので(入管法2条の5第3項、特定技能基準省令第2条4号ロ、技能実習法10条6号)、注意が必要となります。
まとめ
上述の様に、外国人を雇用する企業は、前もって、労働基準法や最低賃金法の他、様々な法令に違反しない形で労働条件を設定し、外国人労働者との間でトラブルにならないよう準備しておく必要があります。しかし、どのような対策を講じるべきか、外国人を雇用した経験のない事業主の方にはなかなか判断が付かないことが多いかと思います。
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