外国人の失踪トラブル
「契約していた外国人技能実習生が音信不通になりました。どうすればよいでしょうか。」
2019年4月1日より、人材を確保することが困難な産業分野において、新たに「特定技能」での外国人材の受入れが可能となりました。しかし、受け入れる外国人数が増加する一方で、受け入れた外国人が失踪する事例も増加しています。外国人の受け入れを考えている企業としては、どのように対応すればよいでしょうか。
技能実習生の失踪数の増加
法務省による発表によれば、平成24年度から平成30年度にかけて、外国人技能実習生の失踪者数は、2,005人から9,052人に増加しています。このような外国人失踪者数の急増に対応するため、技能実習制度の運用に関するプロジェクトチームが組まれ、その原因や対策について報告書が作成されています(法務省HP)。
※平成30年度は、総数9,052人が失踪していると発表されています。
※技能実習生の受入れ件数も増加しているため、失踪者の総技能実習生の数に対する割合は、おおむね3%前後で推移しています。
失踪の原因
平成30年11月1日の国会答弁で引用された技能実習生の失踪動機調査によると、7割弱の方が「低賃金」が理由で失踪しており、「実習終了後も稼働したい」「指導が厳しい」「労働時間が長い」と続いています。また、比較的高賃金が支払われている建築業の外国人就労者では、失踪者の割合が1%程度であることからすれば、低賃金であることが失踪の主な理由であると考えられます。
また、技能実習生の方は、日本に入国する前に、ブローカー等に多額の借金等をしている場合があるため、その返済のために高賃金の職場を求めて失踪することもあるようです。
外国人が失踪しない体制の整備
日本では、外国人労働者を安価な労働力と考える誤った認識を持っている方が多い様に感じられますが、技能実習生等の外国人にも、労働基準法や最低賃金法といった労働者保護法が当然に適用されます。そのため、最低賃金以上の給与や公的保険への加入が必須となります。受入れ企業はこれらを理解した上で、法令遵守を徹底し、定期的な研修や面談を通し、積極的にコミュニケーションを取ることが大切です。
外国人が失踪した場合の対応
万が一、特定技能外国人や技能実習生が失踪してしまった場合は以下の対応をする必要があります。
1.警察への届出・・・何かしらの犯罪やトラブルに巻き込まれている可能性があります。
2.母国の家族に連絡・・・日本での仕事が合わないことや、母国の家族のトラブルによって、急に帰国してしまっていることがあります。
3.出入国在留管理局や外国人技能実習機構に報告する・・・速やかに出入国在留管理局や
外国人技能実習機構に報告することで、会社が受ける不利益を軽減することができる場合があります。
なお、ノーワークノーペイの原則により、失踪時から契約満了までの給与を支払う必要はありません。未払い賃金がある場合には、振込先口座があれば振り込んでおくのが適当です。もし、賃金を直接手渡しする契約となっている場合には、帰ってきたときに支払う事が出来るように、現金を準備しておく必要があります。
当弁護士事務所によるサポート
外国人を雇用する企業は、前もって、労働基準法や最低賃金法の他、様々な法令に違反しない形で労働条件を設定し、外国人労働者との間でトラブルにならないよう準備しておく必要があります。しかし、どのような対策を講じるべきか、外国人を雇用した経験のない事業主の方にはなかなか判断が付かないことが多いかと思います。
当弁護士事務所は、外国人労務問題について多くの実績をもっております。簡単な相談で解決することもございますので、一度、どうぞお気軽にご相談下さい。