外国人の就労に関する入管法の規制

外国人の就労に関する入管法の規制

外国人を雇用する上で経営者に求められるのが、入管法(出入国管理及び難民認定法)に対する理解です。

日本で外国人を雇用する場合、入管法が認める範囲を超えて就労することは、全て不法就労にあたります。

不法就労は、実際に働いた外国人本人だけでなく、雇用した事業主に対しても罰則があります。

本記事では、入管法によって定められた規制について説明します。

具体的には、

◯在留資格とは

◯就労可能資格と不能資格

◯罰則について

以上の項目に関して説明致します。

在留資格とは

在留資格制度は、全ての外国人の入国と在留の公正な管理を行うために設けられたもので、日本国籍を離脱した者または出生その他の事由により上陸許可の手続きを受けることなく日本に在留することとなる外国人も、在留資格を持たなければなりません。

よく、在留資格のことを指して「ビザ」という方がいらっしゃいますが、正確にはビザと在留資格は異なります。

ビザ(査証)とは、外国にある日本の大使館あるいは領事館が発給するものです。

大使館ないしは領事館では、外国人のパスポートを確認し、その人が日本に入国しても問題ないという「推薦」をします。

簡単な言葉でいうと、ビザとは、日本の大使館や領事館が発行する日本入国のための推薦状なのです。

一方、在留資格は、入国審査時にビザに記載された日本での滞在理由を踏まえて、在留する資格を付与するものです。

ビザの発給は外務省(日本大使館や領事館は外務省管轄です)が担当しますが、在留資格を与えるのは法務省が管轄する入国管理局です。

外務省と法務省では、それぞれに独自の審査基準があります。

よって、ビザが発給されたからといって、必ず望んだ通りの在留資格が付与されるわけではありません。


その点には十分注意してください。

現在、在留資格には28種類あります。そのなかには、日本での就労が可能な資格と、不可能な資格があります。

次の項目では、就労可能な資格と就労不可能な資格について説明します。

就労可能資格と就労不能資格

まず、以下の画像をご覧ください。

在留資格一覧表

これは、法務省が公開している、在留資格の一覧表です。

この一覧表にはそれぞれの資格が就労可能かどうかについて詳しく記載されています。

在留資格は、大きくわけて

①就労可能な資格(活動制限あり)…表の部分

②就労可能な資格(活動制限なし)…表の部分

③就労の可否は指定される活動によるもの…表の水色部分

④就労が認められないもの…表のオレンジ部分

にわけられます。

このように在留資格は、就労できる人とできない人、あるいは就労できるが就ける職業に制限がある人、に区別します。

付与された資格で許可された範囲を超えて就労した場合は、資格外活動罪(入管法70条1項4号 もしくは73条)が成立します。

また、不法就労活動をさせた者についても、不法就労助長罪(入管法24条3号の4イ)が成立するのです。

そのため、就労可能な資格と就労不可能な資格の分類を把握することは、外国人を雇用する上で非常に重要なことなのです。

※ポイント

上記の表内オレンジで示されている「就労が認められない在留資格」については、資格外活動の許可を受けた場合は、一定の範囲内であれば就労が可能になります。

入管法における罰則

外国人雇用については、入管法に従っていない場合には罰則があります。

具体的には、

◯資格外活動罪

◯不法就労助長罪・資格外活動幇助罪

が考えられます。

資格外活動罪

資格外活動罪とは、付与された在留資格の範囲を超えて就労した場合に課せられる罪です。

たとえば、「技術・人文知識・国際業務」という在留資格は、上記の表内では青色の「就労可能な資格(活動制限あり)」という分野に当てはまります。

この資格について、入管法別表1の2には「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する知識を必要とする業務又は、外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一部抜粋)」

に限って、就労可能であると記載されています。

このように、就労可能な活動に制限がある資格を持つ人が、その制限を超えて就労する場合は資格外活動罪にあたります(入管法70条1項4号 もしくは73条)。

たとえば、以下のような事例があります。

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神奈川県内など関東を中心に展開する中華料理店「梅蘭(ばいらん)」で不法に働いたとして、県警が中国人の20~30代の男女7人について、出入国管理法違反(資格外活動)の疑いで逮捕したことが、捜査関係者への取材でわかった。

 捜査関係者によると、7人は今年1月以降、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格にもかかわらず、同県や東京都内の店舗で、接客など資格外の活動をした疑いがある。県警は数年間にわたり不法に働いていた可能性があるとみている。県警は9日午前、横浜市内の運営会社「源玉商事」を同容疑で家宅捜索しており、雇用形態などについて調べる。

朝日新聞DIGITAL より抜粋)

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この事例は「技術・人文科学・国際業務」の在留資格を持つ外国人を、資格の範囲でない接客やレジ打ちなどの業務に就かせたことが問題点となりました。

不法就労助長罪

外国人に不法就労活動をさせた場合は、不法就労助長罪が成立します(入管法73条の2第1項1号)。

不法就労助長罪に問われた場合、事業主には3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が課されます。

 

不法就労助長罪について入管法には、「事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者」について罪が成立すると規定しています。

これまでの裁判例を見てみると、裁判所は活動をさせた「者」(行為主体)の定義、活動を「させた」(実行行為性)の意義のどちらに関しても、かなり広義に解釈しています。

 

つまり、不法就労助長罪が成立する範囲は、事業主が思っているよりも広いということを理解しておかなくてはなりません。

 

たとえば、活動をさせた「者」の解釈について、監督的な立場にない、ただの従業員も該当すると判断した例もあります(東京高裁平成5年9月22日判決)。

 

さらに、活動を「させた」という実行行為性の解釈についても、外国人に対して不法就労活動をするよう指示を出すなどの働きかけをする程度で同罪が成立すると判断した事例もあります。

不法就労助長罪とは?不法就労助長問題の対応実績を豊富に持つ弁護士が解説>>>

資格外活動幇助罪

少なくとも、不法就労活動を命じたといえるほど優位な立場にある人間でなくとも、資格外活動幇助罪(入管法70条1項4号、刑法62条1項) が成立する可能性があります。そして、実際にこの資格外活動幇助罪の摘発が近年増加傾向にあります。

 

さらに、平成21年には、入管法の改正があり、入管法73条の2第2項が追加されました。

事業主などが雇用する外国人が不法就労者であると知らなかったとしても、過失※がある場合には処罰されることとなりました。

よって、不法就労助長を疑われた事業主は、在留カードの確認をした記録などを残しておき、過失がないことを証明しなくてはならないのです。

 

裁判所はこの「過失」自体も広義に解釈しています。確認にあたって尽くすべき手段(在留カードの確認など)を全て行ったかどうかをチェックします。

 

また、これまでは不法就労を行った外国人本人は逮捕されるものの、不法就労助長をしたものは書類送検されるだけ、というケースが多かったです。

しかし、最近では、不法就労助長や資格外活動幇助による逮捕事例も多いのです。

資格外活動幇助罪で企業が摘発された事例には、以下のようなものがあります。

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法務省と厚生労働省は3日、愛媛県宇和島市の縫製会社「エポック」(松本重昭・社長)による外国人技能実習生の実習計画の認定を取り消した、と発表した。

同社が入管難民法違反罪で罰金を科されたためで、技能実習適正化法が昨年11月に施行された後の取り消しは初めて。同社は今後5年間、実習生の受け入れができない。

 

 法務省によると、同社は今年5月、短期滞在資格で入国した中国人2人に不法に縫製の仕事をさせたとして、入管難民法違反(資格外活動幇助〈ほうじょ〉)罪で罰金30万円の略式命令を受けた。

実習生の保護のため、受け入れ企業や団体の監督強化を目的に制定、施行された技能実習適正化法はこうした場合、5年間にわたって実習計画の認定が受けられないと定めている。

 

 同社は現在、3人の中国人を実習生として受け入れているが、2人は帰国または帰国予定で、1人は別の企業での実習を希望しているという。

別の中国人1人も実習生として入社予定だったが、新たな受け入れ先を探すという。

 

出典:朝日新聞デジタル

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このように、不法就労に関しては厳罰化の傾向が見られます。

企業としては、罰則のリスクを理解し、外国人を雇用する際は入念なチェックが必要なのです。

外国人雇用のご相談は弊事務所へ

入管法による外国人への規制は、年々複雑になってきています。それに加えて、入管法違反をした場合の罰則も、厳罰化傾向にあります。

不法就労助長罪の検挙数も増加しており、外国人従業員の需要が高まる中で企業としてはより慎重な対応が求められています。

 

しかし、なにぶん入管法は複雑で分かりづらい分野です。全ての弁護士が外国人労務に関する知識や実績があるわけではないのです。

専門的な知識を持つ弁護士も少ないため、企業が普段付き合いのある顧問弁護士などに相談しようとしても、うまく対応してもらえない可能性があります。

 

そのような場合は、外国人雇用の知識や実績が豊富な弁護士からセカンドオピニオンを得ることが重要です。

 

弊事務所には、外国人労務に明るい弁護士が在籍しており、実績もございます。

不法就労にならないようチェックしたり、アドバイスしたりすることも可能です。


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