特定技能外国人を採用するために知っておきたいことと採用までの流れ
日本国内の人材不足が顕著になるなか、若く精力的に働く人材を求めて、特定技能外国人の採用を検討する企業が増えてきています。
特定技能の在留資格を得るには、あらかじめ対応業種の専門知識を問われる試験や日本語能力を問われる試験を突破する必要があります。
そのため、特定技能外国人は採用した時点で、「即戦力」として働けるメリットがあるのです。
しかし、やはり外国人人材ですので、日本人を採用する場合とは異なる要件や準備などがあります。特定技能外国人を受け入れたいけれど、受け入れ体制の整え方や採用方法がわからなくて断念する企業様も多いのです。
本記事では、特定技能外国人を採用する際のポイントについて説明します。
自社の受け入れ要件の確認
まず第一に、自社が特定技能外国人を受け入れられるのかどうかを確認しなければなりません。
特定技能の在留資格は、全ての仕事で活用できるわけではありません。
法務省が指定した産業分野に属する受け入れ企業かつ、指定された範囲の業務に従事する外国人にだけ申請が許可されるのです。
よって、特定技能外国人を受け入れられるかどうか知るためには、
・まず自社が法務省が指定した産業分野に属するか確認する
・外国人が従事する業務が指定された範囲内であるか確認する
という作業が必要になります。
下記に、特定技能1号の受け入れが可能な14の産業分野について掲載しますので、ご参考になさってください。
・介護
・ビルクリーニング
・素形材産業
・産業機械製造業
・電気/電子情報関連産業
・建設
・造船/舶用工業
・自動車整備
・航空
・宿泊
・農業
・漁業
・飲食料品製造業
・外食業
これらの業種に属しない場合は、特定技能外国人の雇用は難しいです。また、一方で、これらの業種にあてはまっていても、対象外となる場合もあります。
(例えば、「宿泊業」のなかでも、カプセルホテルやラブホテルは対象外となります)
自社が対象業種に入っているか不安な場合は、弊所へご相談ください。弁護士がその後の対応も含めて確認・アドバイスいたします。
採用可能なケースと注意点
特定技能外国人を採用する場合、国内で採用するケースと、海外で採用するケースが考えられます。
それぞれ手続きの方法や順番が異なりますので、自社がどういった手順を取るかよく検討しなければなりません。
それぞれのパターンについて説明します。
国内採用
国内で採用するパターンとしては、
①国内に在留する外国人に試験を受けてもらって、採用する
②試験不要の外国人(技能実習修了)を採用する
の2つが考えられます。
①の国内に在留する外国人に試験を受けてもらって採用する 場合
これは、留学生などを採用する場合に用いられる方法です。アルバイトとして雇っていた外国人留学生が優秀だから、引き続き雇用したいというケースもあるかもしれません。
在留資格を「特定技能」に変更するには、各分野の専門知識を問われる試験と、日本語能力の両方に合格しなければなりません。
日本語能力の試験では、いわゆるN4レベル以上が求められます。N4レベルは、基本的な日本語でのコミュニケーションが取れるレベルと言えます。
逆に言えば、「特定技能」の在留資格をもつ外国人は、従事する業務の基礎知識と、日本語によるコミュニケーションが取れる「即戦力」なのです。
②の試験不要の外国人(技能実習修了)を採用する
外国人技能実習制度の2号や3号を修了した外国人は、各分野の試験と日本語の試験を受けなくても「特定技能」の在留資格に変更できます。
というのも、技能実習生は1~3号の区分に分かれていますが、1号から2号、3号へと移行するためには、学科試験と実技試験を受けなければなりません。
つまり、2号や3号を修了した実習生は、一定程度の知識と技術を持っていると評価されるのです。
元技能実習生は、試験を受けずに特定技能へと移行できるため、スムーズな手続きが可能です。
また、技能実習を修了しても特定技能で働きたいという人材は、真面目で前向きな方が多く、既に日本での就労経験もあります。
外国人に働いてほしい企業にとっても、日本で働き続けたい外国人にとってもメリットがあるのです。
海外採用
特定技能外国人を海外で採用するには、
①海外で試験を受けてもらって来日後に採用する
②母国に帰った技能実習修了生に来日してもらい採用する
の2つのパターンが考えられます。
それぞれについて説明します。
①海外で試験を受けてもらって来日後に採用する
新規で日本に入国する外国人を採用するのであれば、国内採用の①のケースと同様に、事前に技能と日本語の試験に合格しなければなりません。
試験合格前に内定を出すことはできますが、入国時に必要な「特定技能の在留資格」の申請をするときには、合格した状態でないと許可されませんので注意が必要です。
海外の居住地で必要な試験を受けてもらっても構いませんが、試験が実施される地域は限られており、採用したい人材の居住地近辺で試験が受けられるとは限りません。
その場合は、短期滞在ビザ(観光ビザ)を取得して来日し、日本国内で試験を受けることも可能です。
②母国に帰った技能実習修了生に来日してもらい採用する
既に技能実習を終了して母国に帰った元技能実習生も、国内採用②と同じ理由で、特定技能の在留資格に必要な試験を免除されます。
彼らは求人募集に直接申込みができますし、職業紹介事業者から斡旋されて受け入れ期間と雇用契約を結ぶこともあります。
応募者に求められる要件
先程から何度も記していますが、特定技能の在留資格を得るためには、応募者である外国人がパスしなければならない試験があります。
・技能評価試験
・日本語能力試験
の2つです。
これらの試験に合格しないと、在留資格の許可がおりません。
技能評価試験
技能評価試験は、各産業分野ごとに指定の試験があります。
各産業分野ごとに、管轄の省庁のWEBサイトに試験情報が発表されますので、事前に一度確認されることをおすすめします。
試験内容としては、あまり高度な内容ではなく、あくまで専門知識の入門編にあたる難易度のものが多いです。しかし、難しい試験ではない分逆に油断を招きやすく、勉強時間が不足して不合格になってしまうケースもあります。
日本語能力試験
日本語能力試験については、
国内で試験を受ける場合は、
・日本語能力試験(N4以上)
・国際交流基金日本語基礎テスト
国外で試験を受ける場合は、
・国際交流基金日本語基礎テスト
を受けなければなりません。
日本語能力試験(N4以上)は、基本的な日本語でのやり取りが可能なレベルとされ、最低限日本で仕事をするために必要な語学力だと定められています。
ただし、前述した通り、これらの試験は内定時点では合格していなくても構いません。法務省が公開している特定技能に関するQ&A
にもその旨が記載されています。
あくまでこれらの試験への合格が求められるのは、「特定技能の在留資格を申請するとき」であり、内定を出すときではありません。
内定を出す→指定の試験へ合格→特定技能の在留資格申請 の流れであれば、何ら問題は無いのです。
ただし、内定後に試験合格を目指す場合は、入社の時期から逆算して、いつ在留資格を申請するか、いつ試験を受験するかをスケジュール調整しなければなりません。
企業に求められる要件
特定技能外国人を雇用するためには、受け入れる企業側に求められる要件もあります。前述した、
・介護業
・ビルクリーニング業
・素形材産業
・産業機械製造業
・電気/電子情報関連産業
・建設業
・造船/舶用業
・自動車整備業
・航空業
・宿泊業
・農業
・漁業
・飲食料品製造業
・外食業
の分野のいずれかを行う企業でないとならない、という要件があります。
それだけではなく、出入国在留管理庁は、受け入れ機関に関する基準も定めています。(出入国在留管理庁「在留資格『特定技能』について」より抜粋)
①労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
②1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
③1年以内に受け入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
④欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと
⑤特定技能外国人の活動内容に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えておくこと
⑥外国人等が保証金の徴収等をされていることを受け入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと
⑦受け入れ機関が違約金を定める契約等を締結していないこと
⑧支援に要する費用を、直接又は間接に外国人に負担させないこと
⑨労働者派遣の場合は、派遣元が当該分野に係る業務を行っている者などで、適当と認められる者であるほか、派遣先が①~④の基準に適合すること
⑩労災保険関係の成立の届け出等の措置を講じていること
⑪雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること
⑫報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと
⑬分野に特有の基準に適合すること
これらの要件をすべて満たさないと、特定技能外国人を雇用できません。
また、これらの他に、支援体制に関して満たさなければならない基準もあります。
初めて特定技能外国人の雇用を検討する企業については、「自社が受け入れ要件を満たしているのか」「満たしていない部分があれば、どう改善すべきか」といった疑問が出てくるかと思います。
弊所の弁護士にご相談いただければ、御社の状況を鑑みた上で、適切なアドバイスを致します。
支援計画の策定ステップ
企業が特定技能外国人を雇用する場合、受け入れ企業は当該外国人が日本で安心して働けるように、支援を行う必要があります。
この「支援」というのは、仕事をする上で必要なものだけでなく、社会生活上必要なものも含まれます。
外国人が在留資格を申請するときには、この支援をどのように行うかを記した支援計画書を提出しなければなりません。よって、特定技能人材を受け入れる際には支援計画の策定が必須なのです。
支援の内容については、下記のものが義務付けられています。
(画像は、新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組【出入国在留管理庁 公開】 より抜粋)
①事前ガイダンス
②出入国する際の送迎
③住居確保・生活に必要な契約支援
④生活オリエンテーション
⑤公的手続き等への同行
⑥日本語学習の機会の提供
⑦相談・苦情への対応
⑧日本人との交流促進
⑨転職支援(人員整理等の場合)
⑩定期的な面談・行政機関への通報
上記の支援は最低限義務付けられているものなのですが、受入企業側からするとたくさんの準備が必要となります。支援をすべて自社で行うのが難しい場合は、「登録支援機関」に委託することも可能です。
登録支援機関とは、受入企業にかわって支援計画の策定や実施をしてくれる機関です。委託料がかかりますが、自社で支援体制を整える費用や手間暇を確保するのが難しい場合は、利用を検討すると良いでしょう。
事実、多くの企業が登録支援機関を活用しています。
在留資格申請
受入体制が整えば、ついに特定技能の在留資格申請を行います。
在留資格申請に必要な書類は、主に①外国人本人に関わる書類、と②受入企業に関わる書類、の2種類があります。
それぞれについて、主に必要な書類について説明します
外国人本人に関わる書類
1 在留資格認定証明書交付申請書(海外から新たに来日する場合)
2 在留資格変更許可申請書(既に日本に在留している外国人を採用する場合)
3 証明写真
4 特定技能外国人の報酬に関する説明書
5 特定技能雇用契約書の写し
6 雇用の経緯に係る説明書
7 徴収費用の説明書
8 健康診断個人票
9 1号特定技能外国人支援計画所
10 登録支援機関との支援委託契約に関する説明書
などが、主に必要な書類です。
(その方のケースや受入れの形態によって、これら以外の書類の提出が求められることもあります)
受入企業にかかわる書類
1 特定技能所属機関概要書
2 登記事項証明書
3 業務執行に関与する役員の住民票の写し (個人事業主の住民票の写し) →受入先が法人か個人事業主かによって異なる
4 特定技能所属機関の役員に関する誓約書
5 社会保険料納入状況回答票または健康保険・構成年金保険料領収書の写し
受入企業に関しては、主に上記の書類が必要です。
ただし、企業が初めて特定技能外国人を受け入れるのか、既に受け入れているのかなど、様々な条件によって必要書類は異なりますのでご注意ください。
提出書類はケースによって大きく変わる
上記をご覧いただくとわかるように、特定技能の在留資格申請にはたくさんの書類が必要となります。
さらに、外国人本人の状況や、受け入れ先の状況によって必要な書類も変わってきます。
そして、すべての書類について正確に作成することが求められます。これは、既に外国人労働者を受け入れている企業様でもなかなかに難しく、労力のかかる作業だといえます。
「確実に申請手続きを進めたい」「そもそもどうやって手続きを進めればいいかわからない」といったお悩みをお持ちであれば、専門家へご相談されることをおすすめします。
例えば弊所へご相談いただければ、必要書類の選別から作成、手続きの代行まですべて専門家である弁護士が実行いたします。
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初回のご相談は無料でお受けしておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。