外国人を雇用する際の注意点とは?就労ビザまで解説
多くの経営者の方が、「うちで外国人労働者を雇用するのは難しそうだ」と考えていらっしゃいます。
確かに、外国人を雇用する場合には、「日本人と同じ法律・ルールに則って雇用しなくてはならない部分」と「外国人を雇用する場合特有のルールがある部分」に分かれており、複雑なのも確かです。
本記事では、弊事務所に寄せられた質問事例にお答えする形式で、企業が外国人を採用する場合に注意すべきポイントについて解説します。
Q 外国人を雇用する場合と日本人を雇用する場合の違いは何ですか?弊社でも外国人を雇用できますか?
A 日本人であれば、会社側が了承すれば「学歴・経験不問」で社員として採用可能で、原則としてどんな業務に従事することも可能です。
しかし、外国人の場合は、就労可能な在留資格が許可されなければ仕事に就くことができません。
概説
日本人であれば、会社側が了承さえすれば「学歴・経験不問」で社員として採用可能です。労基法や最賃法などを守っていれば、単純労働を含め、原則としてどんな業務にも従事できます。
しかし、外国人の場合、就労可能な在留資格が許可されなければ仕事に就くことができないのです。日本人と外国人の雇用で一番違う点はこの点です。
この「在留資格」は、車の運転免許と同様に、行政機関(法務省入国管理局)が与える許可の一種です。外国人が在留資格で許可された範囲を超えて活動すると違法になる場合があるので注意が必要です。
就業可能な在留資格は、一定の経験年数や学歴がなければ許可されません。また、保育士やヘアメイクなどの職種に加え、単純労働的な仕事には就労の在留資格が許可されません。
対応方法
就労可能な在留資格が許可され、日本国内で仕事に就くことが可能になると、日本人に適用される法律は、原則、外国人にも適用されます。
労基法や最賃法、労災保険の適用や社会保険の加入、税金の取扱などは、基本的に日本人と同様に外国人社員にも適用されます。
また、大学や専門学校の外国人留学生のアルバイト雇用にも注意が必要で、入管局の「資格外活動の許可」を得ていることが必要となり、アルバイトは週28時間以内に限り可能です。
なお、麻雀店やナイトクラブなど風俗営業の業種では、アルバイトすると「不法就労」となるため、アルバイトできません。
本件ではどうすべきか
社員として雇用するときは、まずは「就業可能な在留資格」が許可されているかを確認します。外国人留学生の場合は、入管局の「資格外活動の許可」を得ているかを確認してください。
許可を得ていれば決められた範囲内で日本国内で仕事に就くことができますが、その際、日本人に適用される法律は、原則、外国人にも適用されますので、労基法や最賃法、労災保険の適用や社会保険の加入、税金の取扱など、基本的に日本人と同様にきちんと外国人社員にも適用して雇用手続きを進めていくことになります。
Q 弊社で外国人を雇用しようと考えていますが、どんな日本人を雇う際と異なる点はありますか
A 日本人と同様に外国人にも労基法や最賃法、社会保険が適用されます。そのうえでさらに、外国人の場合は入管法のルール・制限を守らなければなりません。
対応方法
外国人を雇用する際は、日本人と同様に法令を守り、労働条件・保険・税金も日本人採用者と同じ扱いにする必要があります。
しかし、日本人にはない在留資格のルールも守らなくてはなりません。
不法就労は、外国人本人だけでなく、雇用した会社やその社長も罰せられます。
不法就労とは、具体的には、密入国をした外国人が日本で働いていたり、働く許可を得ていない外国人が無許可でアルバイトをしたりすることを指します。
また、外国人留学生が週28時間以上アルバイトすることや、専門的な仕事をするための就労ビザを持つ外国人が単純労働をする場合も不法就労に該当します。
このように、外国人は日本人と全く同じルールのもとで働くことはできないのです。
本件ではどうすべきか
外国人を雇う時は、日本人従業員と差別することなく雇い、そのうえで外国人の在留資格を守ることが必要となるので、
・労基法などの法令を守り、社会保険・税務を正しく取り扱う
・外国人の在留を管理する入管法を理解し、外国人に「不法就労」をさせない
ことが重要です。
労基法は労働条件について、外国人に差別的取扱をすることを禁じています。賃金、労働時間、休日他の労働条件は日本人と同様の取扱になります。
健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険などの社会保険や、所得税・住民税も原則、日本人と同様の取扱になります。
また、平成24年7月から日本人と同様に、外国人住民にも住民票が作成されるようになっています。
外国人を雇うときのルールは、入管法で決められており、ルールを破ると不法就労となり、雇用主である社長や事業主に懲役3年以下または300万円以下の罰金が科せられます。
外国人の雇用が初めてで知らなかった、悪意はないがうっかり不法就労の状態になっていた、ということは一切通用しません。
在留資格、入国管理局の手続きや外国人雇用状況の届け出などについて正しく理解し、手続きをしなくてはなりません。
Q 単純労働は外国人はできないと聞きましたが本当ですか
A そうです。一部の在留資格を除いて、多くの在留資格を持つ外国人は単純労働(コンビニやスーパーでのレジ打ちなど)ができません。
概説
日本は移民を受け入れない国ですので、どんな仕事でもいいから日本で仕事がしたいと外国人が希望しても、入管局は就労の在留資格を許可しません。
単純労働のような仕事には、就労の在留資格がありません。現在の入管法では、「27種類の在留資格」に属さない業務があり、それらは「該当する在留資格なし」として在留資格が与えられません。
つまり、日本人と同じようには採用できない職種・分野があります。
対応方法
まず第一に、基本的に外国人は単純労働ができないことを把握しておかなくてはなりません。
その他にも、美容師やヘアメイク、保育士、救急救命士などは現時点では該当する在留資格がないので、働くことはできません。
しかし、中には単純労働が可能な在留資格もあります。
① 「留学」または「家族滞在」の在留資格をもっており、入国管理局で資格外活動の許可を受けた人
② 「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の在留資格を持つ人
まず①について、「留学」や「家族滞在」の在留資格を持つ人は、本来就労を認められていません。しかし、入国管理局へ申請をして「資格外活動の許可」を受ければ、週に28時間以内の就労が可能です。この場合、コンビニのレジ打ちなど単純労働に含まれる業務にも従事できます。
また、資格外活動の許可を得ていたとしても、
・キャバレー
・ホスト/ホステスがいる飲食店
・ナイトクラブ
・性風俗関連特殊営業
などの業種に関しては働くことはできませんので注意してください。
②については、これら4つの在留資格は、いわゆる「身分に基づく在留資格」です。これらの在留資格には就労に関する制限がないため、日本人と同じようにあらゆる職種に就くことができます。
本件ではどうすべきか
いわゆる単純労働に相当する業種で外国人を雇いたい場合は、単純労働が可能な在留資格を持つ(あるいは資格外活動の許可を得ている)外国人を雇用する必要があります。
ただし、資格外活動の許可を得て就労する外国人を雇う場合は、時間管理が非常に重要になってきます。
というのも、資格外活動の許可を得た場合週に28時間の就労許可がでますが、これは全ての労働を合算した時間です。
外国人本人がアルバイトの掛け持ちをしている場合などは、より慎重に時間の調整をしなくてはなりません。
本人に時間の管理を任せるのではなく、使用者自身も時間管理をきっちりと行う必要があります。
Q 外国人が従事する予定の業務が単純労働だと判断されないか不安です
A 就労可能資格を取得申請する場合には、外国人が従事する業務が高度で専門的であることを立証する必要があります。
対応方法
身分系の4つの在留資格を持つ人や、資格外活動の許可を得た「留学」と「家族滞在」の在留資格を持つ人以外を雇用する場合は、単純労働をさせることはできません。
そのため、就労可能な資格を取得申請する場合には、外国人が従事する業務が専門的かつ高度であることを立証しなくてはなりません。
実際の在留資格取得手続きは、書面に記述された内容によって行われます。よって、口頭で審査官に説明したとしても、有利な審査になるとは限りません。
さらに、入国管理局所定の申請書への記載だけでは十分な説明ができず、単純労働でないことを立証するのが難しいと考えられます。
特に、
・建設業
・機械製造業
・ホテル業
などにおいて外国人を雇用する場合は注意が必要です。
これらの業種においては、現場作業の業務が多く、入国管理局に「資格外活動(単純労働)をさせているのではないか」と誤解されやすいのです。
本件ではどうすべきか
在留資格を申請する時の所定の帳票では単純労働でないと立証するには不十分なケースが多いです。
よって、書式自由の別紙を用意し、外国人が実際に従事する業務内容を具体的に説明しなくてはなりません。
その際には、職務内容説明書や採用理由説明書などの資料があると効果的です。
また、外国人の学歴と、従事する業務を関連付けることも重要です。学歴については、卒業した大学名や学部名を記載するだけでなく、成績証明書やシラバスなどを活用して業務との関連性を主張します。
職歴に関しても同様で、これまでどのような仕事をしてきたか、どのような成果をあげてきたかを事細かに書面に起こします。
こうすることで、なぜ外国人を採用したのか、なぜその人でないとだめなのかという点をアピールできます。
企業にとってみては「なぜここまでしなくてはならないのか」という疑問が湧くかもしれません。
しかし、実際はここまで丁寧に対応しても、在留資格申請がうまくいかないケースもあります。
外国人の雇用が不法就労とならないためにも、業務が単純労働でないことを立証するよう最大限努力することが求められます。
Q 派遣社員として外国人を受け入れる際に注意すべき点はありますか?
A 基本的には日本人の派遣社員と同様の扱いとなります。ただし、単純労働を行わせると不法就労助長罪に当てはまるので注意が必要です。
概説
外国人を派遣社員として自社に受け入れる場合、基本的には日本人の派遣社員と同様の扱いとなります。
というのも、派遣先と派遣社員(外国人)との間では雇用関係はなく、派遣元と派遣社員(外国人)の間に雇用関係があるからです。
健康保険・厚生年金保険・雇用保険などに加入しているかを確認し、適切な雇用関係であることが必要です。
なお、「人文知識・国際業務」、「技術」など就労の在留資格の外国人が働く場合、従事する業務は「専門的・技術的な分野」に限られます。
「就労制限なし」であれば日本人と同様にどんな仕事にも就けますが、「在留資格に基づく就労活動のみ可」と記載があれば、在留資格で許可された範囲内での活動に制限され、違反すると「不法就労」になりますので注意が必要です。
対応方法
派遣社員を受け入れるときの手続きは、原則、日本人と同様です。
派遣会社と派遣先(受け入れ先企業)で労働者派遣契約を結んでから勤務を開始します。
下記については、日本人と同様です。
・派遣が可能な職種
・事前面接禁止
・派遣元管理台帳の作成義務あり
派遣先は派遣社員に業務の支持(指揮・命令)をしますが、直接の雇用関係はありません。もし派遣先で労災事故が起きた場合、派遣元が加入している労災保険で治療費や休業補償が行われます。
外国人が派遣社員として働くには、「派遣元との雇用関係が適正である」ことが前提です。
外国人から「私は派遣期間が2ヶ月なので、雇用保険に入っていません」というような話があったら要注意です。
平成22年4月からは31日以上の雇用見込みがある人は、雇用保険の加入対象者となっています。これは日本人も外国人もおなじ扱いです。
労働保険・社会保険は社員が希望する・しないに関係なく、法令で決められた内容に該当する場合には加入する義務があります。
外国人が社会保険への加入を拒否したり、派遣元が社会保険の対象者を加入させていない場合は問題です。
労働保険料・社会保険料の事業主負担が増えるので、派遣社員には労働保険・社会保険に加入させない、という派遣会社が時々あるようです。
労務管理がずさんな派遣会社では、会社と社員が守るべき法律上の義務・手続きを適切に行っていないことがあります。
外国人が日本の法令を守らずに働くことは、入管局が最も嫌う事柄です。その状態が続くと、外国人の在留状況が不良と判断され、在留資格の更新や変更が難しくなる場合があります。
本件ではどうすべきか
派遣社員として受け入れる前に、日本人の派遣社員と同様に社会保険等に加入しているか、雇用関係が適切かどうかを事前に派遣元に確認してください。
Q 外国人を雇用する時の社長(代表者)の義務と責任にはどのようなものがありますか
A 第一に不法就労をさせないことが重要です。最低限、入管法の決まりや制限、手続きの流れは理解しておくべきでしょう。また、外国人を雇用したときは、社員、アルバイトを問わず、「外国人雇用状況届」をハローワークに届け出る必要があります。
概説
不法就労させないために、入管法の決まりと制限を最低限理解しておくという責任があります。
日本人従業員を雇うときの法令をまもることは当然ですが、それに加えて入管法のルール、制限を守ることが必要です。
外国人が不法就労をすると、入管法により外国人本人が処罰されます。悪質な場合は退去強制(国外追放)され、日本への再入国が5年間禁止されることがあります。
さらに、不法就労をさせた者として、外国人を雇っていた会社の社長(事業主)も処罰されます。
入管法により、次の場合には3年以下の懲役か300万円以下の罰金が科されます(両方の場合もあり)。
・事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者(入管法第73条の2第1項第1号)
・外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者(同第1項第2号)
また、雇用対策法で外国人を雇った場合には、社員、アルバイトを問わず、「外国人雇用状況届」をハローワーク(職安)に届け出ることが義務付けられています。
これは、雇い入れたとき、離職したときに届け出をします(雇用対策法第28条)。
正社員など雇用保険に加入する外国人は、「雇用保険被保険者資格取得届」の備考欄に、国籍・地域、在留資格、在留期間、資格外活動の許可の有無、などを記入し届け出します。
一方、留学生のアルバイトは雇用保険に加入しませんが、その場合も「雇入れ・離職に係る外国人雇用状況通知書」を届け出ます。こちらも、アルバイトで採用した時と離職したとき、どちらも届け出る必要があります。
平成24年7月に入管法が改正され、外国人に関する届け出義務が増えました。
会社が外国人を雇ったり、雇い終えたときは「所属機関による届け出」として、入管局に届け出るように努めなければならない(努力義務)とされています(入管法第19条の17)。
ただし、この届出は「雇用対策法第28条による届け出」(ハローワークへの届け出)を行っていれば、あらためて入管局に届け出する必要はありません。また、就労に制限のない永住者などの外国人はこの届出は不要です。
対応方法
社員・アルバイトを問わず外国人を雇うときの社長・代表者の義務は下記のとおりです。
①日本人従業員と同様に、労基法などの法令を守り、社会保険・税務を正しく取り扱う。
②日本での外国人の在留を管理する入管法のルール、制限を理解し、守る。
「法律違反をするつもりは全くないのに、うっかり不法就労になっていた」とならないように注意が必要です。
下記のケースは全て不法就労にあたります。
①在留期限の切れた「不法滞在者」が働く
②「留学」、「家族滞在」、「短期滞在」など就労が認められていない在留資格の外国人が働く(あらかじめ「資格外活動の許可」を得ていれば就労可能。)
③在留資格で許可された範囲を超えて働く(例:「技術」の外国人が単純労働者として働くなど)
例えば、「資格外活動の許可」を得ていない外国人留学生に、許可を得ていないことを知らずに親切心からアルバイトを紹介しても不法就労になります。「知らなかった」というのは通用しません。
本件ではどうすべきか
労基法、最賃法などに従った条件で働かせ、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険に正しく加入し、所得税・住民税を正しく取り扱うことが必要です。
そして、入管法のルール、制限を正しく理解することが必要です。
また、社員・アルバイトを問わず、外国人を雇った時・離職したときは、「外国人雇用状況届」をハローワークに届け出ることも義務付けられていますので、忘れないように注意が必要です(雇用対策法第28条)。
特に留学生のアルバイトの場合、雇用保険には加入しませんが「外国人雇用状況届け」の届け出は義務となっていますので、要注意です。
外国人雇用に不安を感じたら弊事務所へご相談を
外国人雇用に関しては、日本人雇用の際に守らなければならない法律やルールに加え、外国人特有のルールや制限があります。
違反すると、不法就労助長罪に問われ、雇い主が罰せられる可能性もあります。
外国人雇用に関しては、非常に複雑な手続きが伴うこともあるので、できれば専門家に任せてしまいたいと考えていらっしゃる企業様も多いです。
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入管法は非常に複雑で、専門的な知識や経験を持つ弁護士はあまり多くありません。
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