技能実習法違反に対する制裁
2017年11月に施行された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」では、従来の制度と比べて不正行為に対するペナルティーが非常に重くなっています。
技能実習法を破った場合の制裁として有名なのが、事業者名の公表です。
実際、関係省庁が公表している事業者一覧を見てみると、日本の名だたる企業が並んでいるのがわかります。
大きい企業でも中小企業でも関係なく、不正行為をしたら事業者名が公表されるというのが現実です。
この記事では、
・技能実習法の不正行為に対する厳罰化の実態
・技能実習認定計画の欠格事由
について説明します。
不正行為に対する厳罰化
監理団体や実習実施者が不正行為を行った場合、
①監理団体の許可や実習認定の取り消し(技能実習法37条)
②監理団体や実習実施者に対する改善命令(技能実習法36条)
③監理団体に対する事業停止命令(技能実習法37条)
④①ないし③の場合の事業者名等の公表
などの制裁措置がとられます。
また、「改善命令や事業停止命令に違反した場合の罰則」も定められています。
事業者名の公表について
上記の制裁措置の④に、「監理団体の許可や実習認定の取り消し、監理団体に対する事業停止命令の場合の事業者名等の公表」があります。
実際に、出入国在留管理庁のホームページには、制裁措置を受けて事業者名が公表されています。(出入国在留管理庁ホームページ「行政処分等」)
以下の画像は、上記ホームページに掲載されている、「実習実施者に対する改善命令(第15条第1項)(EXCEL)」より一部を抜粋したものです。(令和3年3月26日現在のデータです)
この図を見ると、三菱自動車工業株式会社や株式会社日立製作所など、大企業の名前もあります。
このような事実を見て改めて考えさせられることが、いかに技能実習法や入管法に詳しい法律専門家が少ないか、ということです。
大企業でさえ、健全な実習実施のやり方をアドバイスしてくれる存在が不足しているのです。
事実、外国人雇用に関する知識や経験が豊富な弁護士はかなり少ないです。よって、顧問弁護士や付き合いのある弁護士に技能実習について相談しても、詳しい回答が返って来ない可能性もあります。
技能実習の実施や、外国人雇用を検討しているのであれば、その分野に精通している弁護士に相談することをおすすめします。
はからずも不正行為をしてしまい、事業者名が公表されると、企業としては極めて深刻なダメージを受けます。
最悪の場合、技能実施認定の取り消しに至る可能性もあります。
トラブルを未然に防ぐためにも、相談やアドバイスを求める相手は吟味しなくてはなりません。
罰則
技能実習法には、
・技能実習生の保護を図るための罰則
・技能実習の適正な実施を図るための罰則
の2種類の罰則が規定されています。
それぞれについてまとめました。
技能実習生保護のための罰則
技能実習生の保護のための罰則のうち、主な例として以下があります。
技能実習強制罪:暴行、脅迫、監禁、その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって技能実習を強制する行為(法108条)
→1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金
賠償予定罪:違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約を締結する行為(法111条4号)
→6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
通信等禁止告知罪:技能実習生に対し、労働関係上の不利益または財産上の不利益を示して、技能実習が行われる時間以外における他の者との通信もしくは面談又は外出の全部または一部を禁止する行為(法111条6号)
→6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
旅券等保管罪:技能実習生の意思に反して、旅券又は在留カードを保管する行為(法111条5号)
→6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
その他の詳細については、厚生労働省が公開している、運用要領をご覧ください。
技能実習の適正な実施を図るための罰則
技能実習の適正な実施を図るための罰則の主な例として、以下のものがあります。
改善命令等:法15条1項の規定による改善命令の処分に違反した者(法111条1号)
→6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
技能実習を行わせることが困難になった場合の届出等:法19条1項の規定による技能実習継続困難時の届出をせず、または虚偽の届出をした者(法112条3号)
→30万円以下の罰金
帳簿の備付け:法20条の規定に違反して帳簿書類を作成せず、もしくは事業所に備えて置かず、または虚偽の帳簿書類を作成したもの(法112条5号)
→30万円以下の罰金
その他の罰則については、外国人技能実習機構が公表している違法行為による罰則一覧を参照してください。
技能実習認定計画の欠格事由
技能実習実施者が特に注意しなくてはならにのが技能実習実施者が特に注意しなくてはならないのが、技能実習認定計画の欠格事由です。
技能実習法10条1号、12号では、技能実習計画の認定にかかる欠格事由について定められています。
欠格事由には、4つの分類があり、それぞれ
①関係法律による刑罰を受けたことによる欠格事由(法10条1号ないし4号)
②技能実習法による処分等を受けたこと等による欠格事由(法10条6号ないし8号)
③申請者等の行為能力・役員などの適格性の観点からの欠格事由(法10条5号、10号、11号)
④暴力団排除の観点からの欠格事由(法10条9号、12号)
です。
これらの事由にあてはまると、企業として大きなダメージを受けるだけでなく、技能実習の継続そのものが難しくなります。
技能実習実施者としては、あらかじめどのような欠格事由があるのか把握しておく必要があります。
技能実習に関するお悩みは弊事務所にご相談を
技能実習法に基づく新制度の特徴は「不正行為に対する厳罰化」です。
不正行為に対するペナルティーが非常に重く、事業者名の公表や、実習計画認定の取り消しなど様々な制裁が規定されています。
そのいずれもが、実習実施者に大きなダメージを与えるものであり、避ける必要があるものです。
トラブルなく技能実習を実施するためには、技能実習法や入管法に関する知識・経験が豊富な法律専門家にいつでも相談できる体制を整えることが必須だと言えます。
弊事務所には、外国人の雇用に関する経験豊富な弁護士が所属しており、事業者様に適切なアドバイスをすることが可能です。
既に顧問弁護士がついていらっしゃるという事業者様でも、セカンドオピニオンとして弊事務所の弁護士にご相談いただくことが可能です。
事業者様からのご相談は初回無料でお受付致します。どうぞお気軽にご連絡ください。