技能実習生におけるよくあるトラブルと予防方法

技能実習生 トラブル

技能実習生の受け入れについては、若く精力的な人材を確保できるというメリットがある一方で、様々な種類のトラブルが発生する恐れがあるというデメリットもあります。

これから技能実習生を受け入れる、あるいは既に受け入れている企業は、起こりうるトラブルについて把握しておき、事前の対策を行う必要があります。

技能実習生を受け入れる際に発生しうるトラブルや、その対策について説明します。

技能実習生のトラブルの現状

技能実習生とのトラブルの多くは、実習実施者(実習生の受け入れ企業)の法令違反や、実習生への配慮の欠如が原因となっています。

厚生労働省が発表した情報によると、令和2年のうちに、労働基準関係法令違反が認められた実習実施者は、監督指導を実施した8,124事業場のうち、5,752事業場でした。

つまり、監督指導を行った実施者のうち70.8%に法令違反が認められたのです。

主な違反事項は、

1:使用する機械等の安全基準(24.3%)

2:労働時間(15.7%)

3:割増賃金の支払(15.5%)

の順番に多かったようです。

さらに、重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検したのが32件もありました。

このような法令違反が相次いでいるのは、実習実施者の技能実習に対する意識が、この制度の本来の趣旨とずれていることが原因ではないかと考えられています。

技能実習は、本来企業での人材育成を通じ、実習生に母国へ技能を持ち帰ってもらう国際協力を推進することが本来の目的です。

ただ、受け入れ企業にとっては、人件費をたくさんかけずに若い働き手を調達できる手段だと考えている所が少なくありません。

このずれが原因で、様々なトラブルが発生していると考えられるのです。

実習生の受け入れ先としては、トラブルを防ぐために法令の遵守を徹底するとともに、実習生が働く環境、そして日本で生活する環境を整えるよう配慮が必要になってくるのです。

技能実習生のよくあるトラブル事例と解決方法

失踪

失踪は、技能実習において特に大きな課題となっているトラブルです。よくニュースになるので、ご存知の方も多いかと思います。

事実、近年失踪する技能実習生数は増加傾向にあります。平成25年には3,566人でしたが、令和3年には7,167人と、2倍以上に膨らんでいるのです。

主な失踪理由として挙げられるのが、「低賃金」です。日本に来るために大きな額の借金をしている実習生もいますし、家族に少しでも多く仕送りしたいと考えている実習生もいます。

近年では、「今働いている場所より、もっと稼げる場所がある」と甘い言葉で失踪を促す悪質なブローカーも増えています。自国民のコミュニティで誘われるとつい乗ってしまう事例もあります。

続いて、「暴力・暴言」「長時間の労働」を理由に失踪する実習生もいます。このような事例の多くでは、受け入れ先の企業が労働基準関係法令違反をしています。

失踪を防ぐためには、実習実施者がきちんと労働基準関係法令を遵守することはもちろん、実習生に対する配慮が重要になってきます。

また、ブローカーからの誘いにのってしまわないよう、日本の在留資格制度などについてきちんと説明することも大切です。

万が一実習生が失踪してしまった場合、警察へ行方不明届出書を提出するとともに、速やかに監理団体に連絡しましょう。

コミュニケーション

技能実習生と上手くコミュニケーションがいかずにトラブルになることもあります。

大きな原因としては、言語の壁が考えられます。

日本人従業員が話す内容が聞き取れず、不安になったり不満を感じたりするケースです。日本語での指示がわからずに、仕事でミスをしてしまうこともあります。

コミュニケーションのトラブルを防ぐために、技能実習生はあらかじめある程度の日本語を勉強してから来日します。しかし、専門用語が多用される職場ではとまどうことも多いようです。

わからなければ聞き直せばいい、と思うかもしれませんが、日本人従業員に厄介がられたり怒られたりするとそれも難しくなります。

日本語でのコミュニケーションがトラブルに発展しないようにするには、ゆっくりわかりやすい日本語を使用する、理解できているか都度確認する、重要な事項については実習生の母語での案内も行う、などの工夫が必要です。

病気

技能実習生が病気にかかってしまう可能性も考えられます。

その際には、できれば誰かが付き添って病院に行くのが良いでしょう。技能実習生は日本の病院のシステムやどの科を受診すればよいかがわかりません。

また、医師に自分の状況を正確に伝えることも難しいかもしれません。

職員が付き添うことで、いくらか不安も和らげられると考えられます。

症状によっては、実習生保険が適用されるかもしれません。保険が適用されれば、実習生が負担なく治療を受けられる可能性もあります。

(詳細については、外国人技能実習生総合保険のご案内 を参考にしてみてください)

また、実習生の中には「病気になると仕事をクビになるかもしれない」と不安になって、病院へ行くことを渋ることもあります。今後の対応も含めてきちんと説明しておきましょう。

初めてでどうすれば良いかわからない場合は、監理団体に相談しアドバイスを受けましょう。

喧嘩

実習生と実習生、あるいは実習生と実習先の社員がケンカをすることも考えられます。

実習生たちは、寮生活をしていることが多く、一つの部屋で複数人が住んでいると日常生活のなかでどうしても喧嘩が発生してしまうこともあります。

平成30年には、実習生が同僚を刃物で切りつける事件も発生しています。

寮でも全員がストレスなく過ごせる環境を整えることが重要です。

近隣住民と実習生が喧嘩をしてしまうこともあります。

日本に来てから間もない技能実習生は、日本での生活に慣れていません。ゴミ出しや交通ルールなど基本的なこともわかっていないため、それが元で近所の方とトラブルに陥る可能性もあります。

トラブル化を防ぐために、基本的なルールや日本での生活文化について伝えておくと良いでしょう。

金銭トラブル

過去には金銭トラブルが発生したケースもありました。

とある実習実施者では、寮の家賃の管理を1人の技能実習生にまかせていました。しかし、その実習生が家賃の着服を疑われ、会社に居づらくなって1年で帰国してしまったことがありました。実際には、その実習生は着服はしておらず、会社側の勘違いだったとされています。

このような金銭トラブルを防ぐためには、実習生の家賃は給与からの引き落としにする、金銭の管理は会社の人事労務担当者が行うなどの徹底は不可欠です。

トラブル防止のために受け入れ企業が実施したいこと

送り出し機関・監理団体の適切な選定

送り出し機関や監理団体は、相手が信頼できるかどうかを事前に慎重に調べておきましょう。

法令を遵守していない送り出し機関や監理団体を活用した場合、最悪の場合では実習実施者までもトラブルに巻き込まれたり、法令上の罰則を受けたりします。

実際に契約を結ぶ前に、

・関係法令をきちんと遵守しているかどうか

・過去にたくさんの失踪者を出していないか

・実習生から不当なお金を徴収していないか

などについてしっかりとチェックをしておきましょう。

その他、現地での面接の仕方や教育の内容、契約内容をどう説明しているか、監理団体が実習生を大事にしているか、なども確認しておきましょう。

新型コロナウイルス感染症の影響もあってなかなか現地視察は難しいかもしれませんが、できる範囲で現地の様子を知っておくとよいでしょう。

実習生の日常生活への配慮

多くの実習生にとって、日本という外国での生活は文化や習慣がこれまでとは大きく異なります。

心身に思っている以上のストレスがかかりますので、受け入れ先企業はできるだけ気にかけるようにしましょう。

また、自社に受け入れてからも、日本での生活のルールは改めて伝えるようにしましょう。

しっかりと理解できていないと近隣住民とトラブルになってしまう可能性があります。

反対に、日本人従業員の側が、実習生の文化を理解しておくことも重要です。どちらかがどちらかのルールを押し付けるのではなく、相互理解をした上で

技能実習生の相談先の確保

技能実習生が困ったときに相談できる先を用意しておくことも重要です。

受け入れ先企業内で気軽に相談できる相手がいることも重要ですが、なかには受け入れ先企業の人にはなかなかできない相談もあります。

たとえば、賃金の相談やハラスメントに関する相談は同じ会社で働く人には話すことが憚られます。

外部に相談先を用意することで、より実習生が働きやすい環境を整えることができるでしょう。

弊事務所がサポートできること

弊所では、

・技能実習生に関するトラブル発生を予防する仕組みづくり

・実際にトラブルが発生してしまったときの解決・再発の予防

の2つの観点から御社のサポートが可能です。

既に技能実習生を受け入れている、あるいはこれから受け入れる予定の企業に関しては、受入状況を法的な観点からチェックをいたします。

今後監査や立入検査が行われた場合に、処分や改善命令等の対象にならないように現時点での問題点を洗い出した上で、適法な体制構築に向けて必要な対応をアドバイスします。

継続したアドバイスも可能ですので、少しでも不安がある方はお気軽にご相談ください。

実際にトラブルが発生している状況でのご相談も可能です。トラブルへの対応が不十分な場合、技能実習生や特定技能外国人の受け入れが禁止されたり、その他の外国人雇用を禁止されてしまう可能性があります。

そのような事態にならないように、必要な施策をアドバイスいたします。

是非、トラブル対応のために専門家をご活用ください。

お気軽にご相談ください
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