技能実習計画の認定の取消
技能実習実施者が法令違反をした場合に、課される行政処分の一つが「技能実習計画の認定の取消」です(技能実習法16条)。
その他の行政処分に比べて、特に実施者に対するペナルティが大きいことでも知られています。
というのも、一度計画の認定を取消されるだけで
・計画の認定の取消の事実が公表され、事業者名が周知の事実となる(技能実習法16条2項)
・取消しを受けた実習計画が実施できなくなる
・取消を受けた実習実施者が受け入れている全ての実習生が実習継続できなくなる
・取消を受けた日から5年間新たな技能実習計画の認定が受けられなくなる(技能実習法10条7号)
というペナルティがあるからです。
企業のブランドに傷をつけるだけでなく、今後の技能実習生受け入れにも大きな影響を与えます。
よって、技能実習実施者にとって、実習計画の認定取消は特に避けなくてはならない行政処分といえるのです。
本記事では、具体的にどのようなケースで認定取消が行われるのかについて、主なものをまとめて説明します。
認定取消事由
一度認定を受けた技能実習計画であっても、主務大臣が以下の条件に当てはまると判断した場合は取消処分を行うことができます。
①実習実施者が認定計画に従って技能実習を行わせていないとき
②認定計画が認定基準のいずれかに合致しなくなったとき
③実習実施者が欠格事由のいずれかに合致したとき
④主務大臣の命令に対する報告/帳簿書類の提出をしない あるいは 虚偽の報告/帳簿書類の提出をしたとき
⑤機構が行う報告や帳簿書類提出の求めに、虚偽の内容を記したものを報告・提出する 機構職員に対して虚偽の答弁をしたとき
⑥改善命令に違反したとき
⑦出入国・労働に関する法令に関して不正、または著しく不当な行為をしたとき
上記に該当する場合には、実習認定の取消がとなる可能性が非常に高いです。
では、それぞれ具体的にどのようなケースが含まれるか、特に多い事例を中心に説明します。
実習実施者が認定計画に従って技能実習を行わせていないとき
最初に認定を受けた実習計画から変更がある場合は、すみやかに変更認定(技能実習法11条1項)や変更の届出をしなくてはなりません。
これらの手続きが必要にも関わらず、届出をせずに技能実習を続行した場合は、「認定計画と実際の実習の内容に齟齬がある」と判断されます。
よって、実習計画認定の取消事由となるのです。
実習実施者が技能実習法の認定欠格事由に該当したとき
技能実習法10条1号~12号には、技能実習計画の認定欠格事由が定められています。
具体的には、
①関係法律による刑罰を受けたことによる欠格事由
②技能実習法による処分等をうけたことによる欠格事由
③申請者等の行為能力・役員などの適格性からの欠格事由
④暴力団排除の観点からの欠格事由
があります。
関係法律による刑罰を受けたことによる欠格事由
このケースには主に
①禁錮以上の刑に処され、その執行から5年を経過しない者
②技能実習法、出入国もしくは労働に関する法令の規定により、罰金の刑に処され、その執行から5年を経過しない者
③健康保険法、船員保険法、労働者災害補償保険法、厚生年金保険法、労働保険の保険料の徴収等に関する法律または雇用保険法の各関連規定により、罰金の刑に処され、その執行から5年を経過しない者
などが該当します
技能実習法による処分などを受けたことによる欠格事由
こちらのケースには
①実習認定を取消され、その取消しの日から5年を経過しない者
②実習認定を取消されたのが法人である場合、当該取消の処分を受ける原因となった事柄が発生した当時、法人の役員だったもので、取消から5年を経過しない者
③認定申請の日から前5年以内に出入国または労働に関する法令ににかかる不正または著しく不当な行為をした者
などが該当します。
②の役員に関しては、実際に法人の役員に形式上なっている人物だけでなく、事実上法人に大きな支配力を持つと認められる者も含まれます。
申請者等の行為能力・役員等の適格性の観点からの欠格事由
この項目には、
①成年被後見人、被保佐人または破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者
②営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であって、その法定代理人が欠格事由に該当するもの
③法人であって、その役員のうちに欠格事由が該当する者があるもの
が含まれます。
主務大臣による報告徴収などに対する不対応
機構が求めた報告や帳簿書類の提出に関しては、虚偽の報告あるいは虚偽の帳簿書類の提出、虚偽の答弁をした場合などに認定取消事由となります。
しかし、主務大臣からの命令に対して、
・報告をしない
・帳簿書類の提出/提示をしない
・質問に対して答弁をしない
・検査を拒否したり、妨げたりする
といった行為は、それだけで欠格事由となり得ます。
技能実習に関する相談は弊事務所まで
技能実習を行うにあたっては、技能実習法をはじめ、多くの法令を遵守しなくてはなりません。
法令違反が発覚した場合は、大きなペナルティが待ち構えており、今後しばらく技能実習そのものができなくなるリスクがあります。
技能実習制度の複雑さについては、日本の大手企業がペナルティを受け、違反の事実を公表されていることからもわかります。
つつがなく技能実習を実施するためには、関連法令に対する知識のある専門家と連携してアドバイスを受けることが重要です。
弊事務所には、技能実習制度や外国人雇用に関する知識が豊富な弁護士が在籍しております。
企業様からのご相談は初回無料でお受け付けしますので、どうぞお気軽にご連絡ください。