改善命令
改善命令とは、実習実施者が技能実習計画に基づいて実習を行っていないとき、あるいは技能実習法やその他関連法令の違反があったとき、などに発せられるものです(技能実習法15条1項)。
改善命令は行政処分です。それだけでなく、一度改善命令を受けた実習実施者は、その旨を公示されます。
(その他の行政処分については「法令違反をした場合の行政処分」の記事を参照ください。)
本記事では、具体的にどのような場合に改善命令が発せられるのかについて説明します。
改善命令事由
主務大臣が、適正な実習が実施されていないと判断した場合、
・改善命令が出されるのか否か
・実習計画の認定の許可を取り消すのか否か
については、その案件ごとに法令違反の状況や悪質性等を総合的に考慮し、判断されます。
法令違反内容別の判断材料
それでは、実際にどのような点が考慮され、改善命令事由の判断材料となるのかについて具体例をあげます。
これらはあくまで参考例であり、これ以外の要素が判断材料となることもありますので、ご注意ください。
賃金不払い(労基法24条)・割増賃金不払い(労基法37条)
・不払い賃金が、実習生1人あたり1万円を超えていないか
・不払い賃金の総額が10万円を超えていないか
・最低賃金の改定を知らずに従来の金額で賃金を算定していないか
・労基署からの指摘で初めて産業別最低賃金が適用される業種であったと認識していないか
・指摘を受けたあと、速やかに是正したか
労働時間(労基法32条)・休日(労基法35条)
・法定労働時間を超える時間外労働や休日労働の合計が1ヶ月100時間を超えていないか
・法定労働時間を超える時間外労働や休日労働の2~6ヶ月間の平均が、1ヶ月あたり80時間を超えていないか
入国後講習の不履行(講習期間中の業務への従事)
・実際に行った講習時間が、第1号技能実習時間全体の6分の1を満たさないか
・入国後講習を履行していなかった機間に実習実施者にて業務に従事させていたか
技能実習計画との齟齬
・実際の実習と計画の齟齬が、技能実習計画全体に占める割合はどれくらいか
・実際に行われた作業と、計画に記載されていた作業との関連性
・実際に行われた作業と、実習実施者の業務との関連性
技能実習計画との齟齬
改善命令事由として特に気を付けたいのが、技能実習計画との齟齬です。
つまり、実際に行われている技能実習が、事前に認定を受けた技能実習計画の内容と相違ないかという点です。
技能実習法では、事前に認定を受けた技能実習計画とは違う内容の実習を行う場合
・変更認定を受ける
・変更の届出
をすることが必要です。
重要な変更の場合は変更認定が必要となり、通常の変更の場合は変更の届出が必要です(技能実習法11条1項)。
通常の変更とは、職種・作業や目標に関連がなく、認定計画に従った技能実習の実施に大きな影響を与えない変更を指します。
特に変更認定が求められるような場合には、必要な措置を行っていないと、大きな齟齬が発生してしまいます。
なかでも多いのが、以下の5つのケースです。
1:技能実習の職種・作業・分野に齟齬がある場合
2:技能実習の目標に齟齬がある場合
3:実習期間に齟齬がある場合
4:実習時間数に齟齬がある場合
5:監理を受ける監理団体に齟齬がある場合
1:技能実習の職種・作業・分野に齟齬がある場合
一度認定を受けた技能実習計画に記載された職種や作業に新たなものを追加して行う場合は変更認定を受けなくてはなりません。
また、通常、一度認定を受けた実習計画と全く異なる職種や作業へと変更するというケースは想定されていません。その場合、技能実習計画の「変更」という形ではなく、新規の技能実習計画の認定が必要となります。
2:技能実習の目標に齟齬がある場合
一度認定を受けた技能実習計画に記載された「技能実習の目標」を変更する場合は、変更認定を受けなくてはなりません。
3:実習期間に齟齬がある場合
実習の延べ期間が最初に提出した実習計画から延長する場合は、変更認定を受けなくてはなりません。
4:実習時間数に齟齬がある場合
基本的に、技能実習において「時間外労働」は想定されていません。
業務上の都合などでやむを得ず時間外労働をさせる場合は、実習の時間数に時間外労働等の労働時間を含めた内容で、変更認定を受けたり、変更の届出をしなくてはなりません。
時間外労働による実習時間数の齟齬は、実際の現場でも見落とされがちなケースです。
実習実施者は、常に実習生一人ひとりの労働時間を把握しておかなくてはなりません。また、ダブルチェックを得るためにも、定期的に監理を受ける監理団体に実習時間の報告をしておくとよいでしょう。
特に、以下のケースについては変更認定が必要ですのでご注意ください。
・月ごとの合計時間を30時間以上延長する場合
・必須業務/関連業務および周辺業務として認識している具体的な業務ごとに見て、合計時間数を予定の50%以上変更する場合
上記のケースについては、変更の届出ではなく、変更認定を受ける必要があります。
5:監理を受ける監理団体に齟齬がある場合
監理を受ける監理団体が変更/交代する場合には、変更認定が必要です。
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