監理団体向け|近年の入管・機構による調査と取消事例

近年、技能実習や特定技能制度の見直しを進める動きが活発化しており、これからは従前よりもさらに取締りが厳しくなることが予想されています。

そのため、入国管理局(入管)や外国人技能実習機構(機構)による調査が増えたり、監理団体の認定許可取り消しなどのリスクも高まっているのが現状です。

この記事では、監理団体に向けて近年の入管や機構による調査の実態と、実際にあった取消事例について説明します。

近年の監理団体の取消件数の傾向 

直近の監理団体取消の例

直近の監理団体の許可取り消しとしては、

・傘下の実習実施者に対する監査を、三月に一回以上の頻度で実施していなかった、また監査の終了後遅滞なく監査報告書を機構に提出していなかった

という例や、

・傘下実習実施者に対する技能実習計画の作成指導に関し、習得等をさせようとする技能等について言っていの経験又は知識を有する役員又は職員にこれを担当させていなかった

といった例があります。

出入国管理庁のHPより)

技能実習制度の見直しによる取締り強化の可能性

技能実習制度、特定技能制度については、現在制度そのものの見直しが進められています。

4月28日には、第7回の「技能実習・特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が開催され、中間報告書(案)が公表されました。

下記が、変更が検討されている内容です。

【技能実習制度に関する変更内容】

現行(変更前)変更後(予定)
制度目的人材育成を通じた国際貢献労働力確保と人材育成
日本に在留する期間自国への技能移転のため 最長5年の滞在想定 (目的から帰国が前提)特定技能移行も含めた 中長期的な滞在想定
対象職種・分野87職種に細分化特定技能の分野区分と 統一予定 
転籍制限原則不可一定の制限内であれば転籍可能

制度の見直しを受けて、監理体制や支援体制に関する方針にも変更が加わる見通しとなっています。

新たな制度においては、監理団体は国際的なマッチング機能など、外国人に対する支援等の機能を適切に果たせる優良な団体のみが認められるようにするため、受け入れ企業等からの独立性・中立性の確保や、監理・保護・支援に関する要件を厳格化する方向で検討されるべきである、とされています。

ここからわかるように、国の方針としては、監理団体の監理の質を確保するよう要件を厳格化することが予想されています。取締りはさらに厳しくなり、それに応じて許可取り消し等のリスクも大きくなると考えられるのです。

実際に行われる調査方法

今後予想される、取締りの強化、厳格化に対応するためには、実際に調査が入った場合にどのような点に着目すべきなのかを事前に把握しておくことが重要となります。

技能実習機構による調査

機構の手元資料の確認・調査

機構による調査においては、手元資料が主な調査対象となります。監理許可申請をした際の膨大な書類や、送り出し機関との書類、実施者とやりとりをした際の書類、各実習生の技能実習認定計画申請書などに不備がないか注意が必要です。

これらの書類については、機構に提出する前に内容に誤りがないか、書類同士で記載に齟齬がないかを必ずチェックしておきましょう。

また、管理する体制をきちんと構築できているかどうかも確認されます。実習計画に記載された業務と、実際に従事する業務との違いがあればすぐにわかるので、その点の齟齬も無いよう務めなくてはなりません。

機構による実地検査

機構による実地検査は、基本的には、実習実施者→監理団体の順番で行われます。

監理団体に検査が入るときには、すでに実施者で裏取りをした後だと考えた方が良いでしょう。事前に実習実施者にどの点での調査があったかを確認して、指摘された事項に対して監理団体側に不備がないかを確認しておきます。

万が一重大な不備が指摘されたとしても、証拠隠滅などをすることは絶対にやめてください。

不備が指摘された場合には、当該不備に対してどのような改善案があるか方策を立て、改善計画書を作成して提出します。監理団体での改善計画書の作成が難しければ、専門家に依頼するのも1つの方法です。

機構からの呼び出し

場合によっては、機構からの呼び出しがあります。

タイミングとしては実地検査を行った後に行われることが多いため、機構の目的は調査で確認した事実の証拠化だと考えられます。

呼び出しでは、実地検査で実習実施者から聞き取りをした内容と、監理団体の陳述に齟齬が無いかを確認します。

機構による証拠集めはかなり慎重に行われます。技能実習法上で作成の義務がある書類だけではなく、実習実施者と実習生のLINEのやり取りなどデジタルデータも事前におさえていることがあります。個人的なやり取りのレベルで確認されることを想定しておいた方が良いでしょう。

入管による調査

入管の手元資料の確認・調査

入管による調査も、まずは入管に提出された資料を元に実施されます。入管側が持っている資料としては、在留資格の申請書類や、添付書類(実習計画などを含む)、社会保険の番号などがあります。

特に社会保険に関しては、原則職場が変わっても使い続けるものなので、これがあれば当該外国人が以前どの在留資格でどのような仕事をしていたのかも把握することが可能です。

入管による実地検査

入管による実地検査も、機構による検査と同じ様に実施者→監理団体の順番で行われることが多いです。

電話を使った検査が行われるケースもあり、就労している外国人本人に先に電話をして、

「入国後講習中に仕事をしていませんでしたか?」と確認したり、同僚の外国人に電話して「彼(彼女)はどんな作業をやっていますか?」と確認したりすることもあります。

雇用先が把握できないうちに捜査されていることも十分にありえるのです。

実際に起きた取消事例について

監理団体の認定取消事例については、出入国管理庁のHPにて情報が公開されています。下記にいくつかの事例について紹介します。

事例1

概要

技能実習を行わせようとする者に不正に技能実習計画の認定を受けさせる目的で、虚偽の技能実習計画認定申請書を外国人技能実習機構に提出したこと、傘下の実習実施者に対し、適切な技能実習計画の作成指導を行っていないこと、及び出入国若しくは労働に関する法令の規定に違反する事実を隠蔽する目的で、虚偽の監査報告書を同機構に提出したことから、技能実習法第37条第1項第1号(同法第25条第1項第2号(同法第39条第3項(同法施行規則第52条第8号イ(同法第9条第6号(同法施行規則第12条第2項第1号))及び第11号)))及び第4号(同法第39条第3項(同法施行規則第52条第8号イ及び第11号))に規定する監理団体の許可の取消事由に該当するため。

事例2

概要

外国の送出機関が、団体監理型技能実習生等の本邦への送出に関連して、団体監理型技能実習に係る契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約をしていないかについて、確認をしていなかったことから、監理事業を適正に遂行することができる能力を有するものとは認められず、技能実習法第37条第1項第1号(法第25条第1項第2号(法第39条第3項(同法施行規則第52条第5号)))に規定する監理団体の許可の取消事由に該当するため。

事例3

概要

傘下の実習実施者に対する監査を、三月に一回以上の頻度で実施していなかったこと、監査の終了後遅滞なく、監査報告書を外国人技能実習機構に提出していなかったこと、及び提出期限までに事業報告書を同機構に提出していなかったことから、技能実習法第37条第1項第1号(同法第25条第1項第2号(同法第39条第3項(同法施行規則第52条第1号)))及び第4号(同法第42条第1項及び第2項(同法施行規則第55条第2項))に規定する監理団体の許可の取消事由に該当するため。

許可取り消しとならないために注意すべきこと

書面等の偽造を実施しないこと

まず何よりも気をつけなくてはならないのが、書面の偽造です。

そもそも、作成された書類は、「名義人が作成し、真実が記載されている」ということが技能実習制度においては大前提となります。

この前提を覆すような行為を、機構や入管は非常に嫌います。

悪意を持って虚偽の記載をしたわけではなくても、実施者が一度作成したものに追記したり、内容を付け加える行為は、偽造や変造と判断されることもありますので注意してください。

労働安全衛生法等の違反を防ぐ

労働安全衛生法の違反にも注意が必要です。こちらについては、違反が発覚すると、検察の誘導により略式起訴になり、罰金刑を受ける可能性があります。

しかし、検察官の多くは、技能実習生が関与する労働安全衛生法違反がどのような結果をもたらすかを理解していません。

場合によっては、実習実施者は技能実習計画の取消、監理団体は監理許可の取消となる可能性がありますので、未然に違反を防ぐようにしなければなりません。

専門家による定期診断

書面の偽造変造や、労働安全衛生法等の違反の他にも、許可取り消しとならないために注意すべき事項はいくつもあります。

リスクを減らすためには、監理団体の運営や、入管法、技能実習制度に詳しい専門家に相談することをおすすめします。

特に、定期的に運営状況のチェックを受けることで、入管や機構に指摘される前に、改善策を講じることができます。

許可取消への不安は専門家にご相談ください

現在の監理団体の運営方法に疑問がある、許可取り消し事由に該当するのではないかと不安に感じている、などのご状況にあるのであれば、ぜひ弁護士法人iへご相談ください。

技能実習制度に精通した弁護士が、御社のご状況を伺い、適切なアドバイスをさせていただきます。

顧問形態でのサポートもさせていただいており、平常時の法的な相談やトラブルを未然に防ぐためのアドバイスや、実際にトラブルが発生してしまった際の対応と再発防止のアドバイスもいたします。

初回のご相談については、無料でお受けいたしますのでお気軽にご相談ください。

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