外国人留学生を正社員で雇用できるか?雇用の注意点とケーススタディ

外国人を雇用する企業様は、優秀な人材を外国人留学生から見つけ出して雇用したいと考えていらっしゃるケースがとても多いです。

 

しかし、外国人留学生を社員として雇用する手続きは、日本人学生を社員として雇用するときほど簡単な手続きではありません。

面接時に、在留カードの確認をして在留資格をチェックしたり、ハローワークに外国人雇用状況の届出を提出しなければなりません。

複雑かつ厳しいルールを守る必要があります。企業としては、常に自社がルールをクリアしているか確認する必要があります。

また、たとえ外国人を雇用したとしても、日本人と同様に労働基準法が適用されますから、社内の労務管理も徹底する必要があります。

 

この記事では、外国人留学生を正社員で雇用できるかどうかについて、ケーススタディ形式で説明を行います。

 

Q1 大学中退の外国人留学生を正社員として雇用することはできますか?

Q 大学中退の外国人留学生を正社員として雇用することはできますか

 

A 1 概説

できません。

留学生を正社員として採用する場合、就労の在留資格を得てから働かなければいけません。そして、正社員として採用する場合「人文知識・国際業務」、「技術」、「教育」などの在留資格は大卒の学歴(卒業証書)が無ければ許可されません。

高卒で許可されるためには「10年以上の実務経験」が必要です。在留資格が許可されずに働くと不法就労になります。

 

また、留学生が資格外活動の許可を得て行うアルバイトも、大学等に在籍中に行う場合に限って許可されています。留学生が学校に在籍していることが前提となりますので、中退すると除籍され、中退後は資格外活動の許可が無効となり、アルバイトを続けることはできなくなります。

 

2 対応方法

留学生が日本に来る前に、本国などで大学を卒業し「学位」を得ているときは、その大学の卒業証書を使うことで、就労の在留資格を得ることが可能な場合があります。それには大卒で「学位」を得ている必要があります。

 

例えば、中国では、「○○電視大学」などの名称で、日本語で表すと「○○放送大学」に当たる、働きながら学べる学校がありますが、卒業しても「学位」が出ないところがあります。外国人が本国で大学を卒業していると言っても、「学位」を得ていない場合は「人文・国際」、「技術」などの在留資格が許可されません。

「留学」の在留資格は、日本で教育を受けるために許可されたものですので、学校を退学した場合は、学生の立場を失い、この前提を失うことになります。

 

また、「留学」の本来の活動を3ヶ月以上行わない場合には、正当な理由が無ければ、在留資格が取り消されることがあります(入管法22条の4第1項第6号)。取消になると、外国人の本国に帰国するしかなくなります。大学を中退した留学生が、すぐに他の大学に転入するなどの、その後の自分のキャリアプランがない場合、不法滞在につながるおそれもありますので注意が必要です。

 

例えば、中退した留学生が他の大学に転入し直したいというようなケースでは、「留学」の在留資格を続けることを検討することがありますが、勉強するのは嫌だけど、このまま日本に住みたいと希望しても「留学」の在留資格は更新できません。また、原則、他の在留資格への変更もできません。

もし「留学」の在留期限が切れ、そのまま日本に留まると、不法残留(オーバーステイ)になります。

 

3 本件ではどうすべきか

大学中退の外国人留学生を正社員として雇用することはできません。就労の在留資格を得てからでないと働けません。得ずに働くと不法就労になりますので注意が必要です。

 

Q2 飲食店でフロアチーフのバイト留学生を社員で雇うことはできるか

Q 居酒屋・レストランでフロアチーフのバイト留学生を社員として雇用することはできますか

 

A 1 概説

できません。入管局は専門的、技術的な仕事でなければ、就労の在留資格を許可しないので、アルバイトと同じ業務のフロアチーフの仕事では、就労の在留資格は許可されません。

入管局はどのような仕事に対しても在留資格を許可するわけではありません。大学や専門学校で勉強したことに関連する専門的、技術的な仕事に就かなければ、在留資格は許可されません。「単純労働に従事することを目的とした在留資格はないから、許可できない」というわけです。

 

飲食店では、アルバイトでの評価が高いと卒業後はうちで社員として働きませんかということも珍しくありません。日本人なら、卒業後にフロアチーフとして社員で入社しても何も問題有りませんが、外国人は入管法の基準に合った業務に就かなければ、在留資格が出ません。日本人が大卒で社員として就職することもあるから外国人も大丈夫、と簡単にはならないのです。入管法の基準をクリアしなければいけません。

 

2 対応方法

例えば、経済学部の留学生が卒業後はフロアチーフの仕事をしたいと希望しても、入管局からはフロアチーフの業務は「人文知識・国際業務」やその他の在留資格の「活動内容」に当てはまらないため許可できないといわれます。「人文知識・国際業務」の在留資格は、法学、経済学、社会学などの人文科学の知識を必要とする業務をする場合に許可されるのです。

 

入管局の回答は、「人文科学の知識を必要とする業務ではない。だから「人文知識・国際業務」の在留資格は許可できない。他にピッタリ当てはまる在留資格もない」となります。

法的には、「在留資格の該当性を満たしていない」という理由で許可されません。

留学生を社員として雇う場合には、専門的、技術的な仕事での雇用とする必要があります。

 

3 本件ではどうすべきか

大学・専門学校で専攻した知識を活かせる専門的な業務を担当する社員での雇用なら、可能なケースもあります。

フロアチーフの仕事に就くのではなく、「人文知識・国際業務」の基準を満たした専門的な業務に従事する場合は、在留資格が許可されることがあります。

例えば、経理専門学校の留学生が経理・会計担当者として勤務するような場合です。ただし、どのような場合も個別に審査がされます。

 

Q3 コンビニでレジバイト留学生を社員で雇うことはできるか

Q コンビニでレジ・販売担当のバイト留学生を社員として雇用することはできますか

 

A 1 概説

できません。入管局は専門的、技術的な仕事でなければ、就労の在留資格を許可しないので、アルバイトと同じレジ・販売担当の仕事では、就労の在留資格は許可されません。

 

コンビニの店舗運営はアルバイトスタッフなしでは成立しません。優秀なアルバイトスタッフは、能力・責任感や人間性が評価され、大学・専門学校卒業後に正社員として採用されることもあります。日本人であれば、最低賃金の適用や労働社会保険への加入を適切に行っていれば、法的には何の問題も有りませんが、外国人は入管法の基準に合った業務に就かなければ、在留資格が出ませんので、日本人と同じようには採用できません。

 

日本人が大卒で社員として就職することもあるから外国人も大丈夫、と簡単にはならないのです。入管法の基準をクリアしなければなりません。

 

2 対応方法

在留資格が許可されるには、外国人が社員として働くときの仕事の中身が「人文知識・国際業務」、「技術」などに当てはまることが必要です。

専門的・技術的な業務でなければ許可されないのです。これは入管局の審査の大切なポイントです。そして大学・専門学校で専攻した知識と関連性のある仕事、または語学などを必要とする業務であることが必要です。

このような許可基準をクリアしなければ在留資格は許可されません。

 

入管局はコンビニのレジ・販売担当の業務は、「人文知識・国際業務」の専門的な業務ではない、と判断します。

そのため、レジ・販売担当の仕事をしたいと希望しても、在留資格は許可されません。学校卒業後にはその仕事に就くことができません。

 

留学生を社員として雇う場合には、専門的、技術的な仕事での雇用とする必要があります。コンビニでも、専門的な知識を必要とする業務の担当者として就職する場合は、許可されることがあります。

 

3 本件ではどうすべきか

留学生の専攻によっては、店舗経営や経理会計などの専任者として許可される場合があります。

レジ・販売担当として勤務することはできませんが、経営学部の留学生が店舗経営や企画、マーケティングの担当者として勤務するケースや、前任の経理担当者の欠員を補うため経理専門学校の留学生を経理会計の専任者として採用するなどのケースであれば、許可される可能性があります。

 

なお、正社員として雇用されたあとは「人文知識・国際業務」で申請した業務以外の仕事をすることは認められません。

入社後の業務内容を決めるときは、このような入管法の基本を十分理解して進める必要があります。

 

Q4 海外出張をアテンドする外国人を雇用できるか

Q 中小メーカー幹部の中国出張をアテンド・補佐する外国人スタッフを雇用することはできますか

 

A 1 概説

外国人がどんな仕事に従事するかによります。経営学部の出身者が営業・企画に従事する場合や、中国出身の大卒者を通訳・翻訳として採用する場合は、「人文知識・国際業務」の在留資格を、理工系学部出身者を専攻分野の技術者として採用する場合は「技術」の在留資格を検討するのが一般的です。

 

近年、中国やアジア諸国と事業での関係が深まり、相手国の外国人を社員として採用し、海外担当の人材として働いてほしいというケースが増加しています。その際に重要な点は、在留資格「人文知識・国際業務」や「技術」の業務に該当する「専門的・技術的な業務」の社員を採用する、ということです。

在留資格が許可されなければ、採用内定しても雇用できないのです。

 

2 対応方法

まずは従事業務を決めてから、就労の在留資格が許可される可能性のある外国人を採用します。例えば、海外営業に従事する人材を採用するのであれば、通訳・翻訳の能力の高い人を求める、理工系分野を専攻した大卒者を技術者として採用したいなどの場合は、「専門的・技術的分野」での採用を予定し、その仕事に就くことが可能な大学などで専攻分野を学んだ人を探す、という流れが一般的です。

 

このように、まず従事業務を決め、就労の在留資格が許可される学歴や専攻分野のある外国人を採用するという考え方は、留学生の新卒採用、転職希望のどちらにおいても同じです。

 

3 本件ではどうすべきか

中小メーカー幹部の中国出張のアテンド・補佐の業務内容が中国語の通訳・翻訳担当ということであれば、中国出身者を採用する場合、大学院・大学・短大を卒業した外国人なら、3年以上の実務経験がなくても通訳・翻訳の担当として採用可能です。

このとき入管局の審査では、「人文知識・国際業務」のうち「国際業務」の活動内容で審査されます。

 

アテンド・補佐の業務内容が営業・事業企画などの担当として採用するケースでは、入管局が審査するときは「人文知識・国際業務」のうち「人文知識」の活動内容で審査されます。

経営学などの人文科学を専攻した外国人が、その知識を必要とする業務に就く場合に許可されます。

 

また、アテンド・補佐の業務内容が技術者として採用するケースでは、「技術」の在留資格を検討することとなります。

「技術」は理系出身者の与えられる在留資格です。機械工学を先行した外国人を、機械メーカーの技術者として採用する場合などに許可されます。

 

まずは中国出張のアテンド・補佐の具体的な従事業務を決めてから、就労の在留資格が許可される可能性のある外国人を採用すべきです。

 

Q5 旅館のフロント業務で外国人を雇用できるか

Q 旅館やホテルのフロントスタッフとして外国人スタッフを雇用することはできますか。

 

A 1 概説

「人文知識・国際業務」の在留資格の許可が前提となりますが、専門学校のホテル学科の卒業生をフロント担当として採用することが可能です。

ただし、「人文知識・国際業務」が許可された外国人は、在留資格が許可されたフロント業務に限定されますのでホテル内のレストランでの接客業務や現場業務には従事できません。

 

具体的には、観光・ホテル関係の専門学校のホテル学科でホテル業務を学んだ「専門士」、観光学部のある大学でホテル業務を勉強した大学生が対象になります。専門学校のホテル学科を卒業すれば「商業実務分野」の専門士の卒業証書があたえられます。

 

そして、給与・労働条件や勤務先の事業の安定性・継続性なども含めて審査され、「人文知識・国際業務」の在留資格が許可されれば、就労が可能になります。

労働基準法などの労働法令を守っていれば、交代勤務などのシフト制で働くことも可能です。

 

2 対応方法

「人文知識・国際業務」は専門的な知識を必要とする業務や外国語を使う業務にだけ許可される在留資格です。フロント業務で採用された外国人は、レストランの接客業務や宴会場での接待係、客室の清掃業務等、入管局が単純労働的と判断する現場作業に従事することはできません。

法令に従わなければ不法就労になりますので、注意が必要です。

 

そのほか、外国人をホテルのフロント担当としてではなく、海外からのお客様を増やすための営業担当や、通訳・翻訳担当として採用するケースや、大学経営学部の出身者を、国内外の旅行会社や観光業界への営業担当として採用するケースもあります。

 

3 本件ではどうすべきか

「人文知識・国際業務」の在留資格が許可される外国人を「フロント担当」として使用することが可能です。そして、従事する業務内容は、在留資格が許可されたフロント業務に限定されます。

 

Q6 ホテルのレストラン部門で外国人を雇用できるか

Qホテルのレストラン部門で、ホールの接客担当や外国人シェフとして外国人を雇用することはできますか。

 

A 1 概説

留学生をフロア・ホールの接客担当の正社員として採用することはできません。就労の在留資格が許可されないからです。

外国人シェフ(西洋料理、中華料理等)を採用するときは「10年以上の実務経験」のある人に「技能」の在留資格が許可されれば採用可能です。

日本で調理・製菓専門学校を卒業した留学生でも、10年以上の実務経験がなければ、日本で料理人として働くための「技能」の在留資格は許可されません。

調理師専門学校を卒業しただけでは「技能」の在留資格は許可されないのです。「人文知識・国際業務」の在留資格も許可されません。

 

留学生のアルバイトなら、レストランでフロア・ホールの接客担当、ウェイター、ウェイトレス、配膳、調理(補助)、清掃、レジ担当などどんな業務に就いても構いません。

しかし、専門学校卒業後に正社員としてこれらの仕事に就くことは、該当する在留資格がないという理由で、就労の在留資格が許可されません。仮に「人文知識・国際業務」の在留資格を申請しても不許可になります。

 

2 対応方法

外国人のシェフ(調理人)や製菓技術者、ソムリエなどを採用するときは「技能」の在留資格を検討することになります。「技能」の在留資格は、「特定の分野で熟練した技能を必要とする業務」を持つ外国人に与えられる在留資格です。

中華料理、フランス料理などのシェフの場合は、10年以上の実務経験が必要です。この10年以上の基準はどの国や地域の料理人に対しても同様です。

ただし、タイ料理のみ協定により5年以上に短縮されています。

ソムリエは、5年以上の実務経験に加え、国際ソムリエコンクールの出場または国などが認定する資格保持者であることが必要です。

 

3 本件ではどうすべきか

ホテルのレストラン部門で外国人を雇用する場合は、シェフや製菓技術者として10年以上の実務経験があり、「技能」の在留資格が許可された者をシェフや製菓技術者の正社員として採用することを検討すべきです。フロア・ホールの接客担当の正社員として採用することは出来ません。

 

もしくは、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者などの「一定の身分・地位を持つ人に与えられる在留資格」の外国人は、就労の制限は無いので、日本人と同様にどんな業務にも就職可能です。

 

Q7 中小食品製造業でバイト留学生を社員として雇用できるか

Q 中小食品製造業でまじめに働いてきたバイト留学生を社員で雇用することはできますか。

 

A 1 概説

アルバイト業務の延長では社員として雇用できません。入管局が「単純労働的」と判断する業務には、在留資格が許可されないからです。

専門的、技術的な分野の仕事に就くのでなければ、在留資格は許可されません。

 

例えば、大学の経営学部出身者が、販売・営業、マーケティング、事業企画などの業務に従事する場合は「人文知識・国際業務」の在留資格を検討することがあります。

アルバイトとして数年間働き、勤務態度や能力などが評価され、卒業後は社員として採用したい、というケースは少なくありません。

しかし、留学生の場合はそういうわけにはいきません。アルバイトと同じ仕事で正社員になりたいと本人が希望しても、入管局は許可しません。

 

留学生が日本で就職するときは、学校で勉強した専攻と関連性のある専門的・技術的な業務に就くことが必要となります。入管局の審査でもこの点は重要です。

社員としての採用は、大学や専門学校を卒業した人でなければできない専門的な仕事に就く場合に限り、在留資格が許可されるわけです。アルバイトでもできる簡単な仕事ではダメだということです。

 

2 対応方法

食品工場の精算・加工の業務、調理や弁当箱への箱詰め、工場内外の運搬・配送などのアルバイトをしていた場合、「人文知識・国際業務」や「技術」の在留資格が許可されたあとは、それまでのアルバイト業務はできません。

行うと「資格外活動」を行ったとして不法就労になることがあります。

 

留学生が大学や専門学校での専攻を活かした業務に就く場合には、社員として雇用できる可能性があります。

例えば、食品製造業の会社で正社員として働く場合、以下のようなケースでは可能性があります。

 

大学や専門学校での専攻 業務
大学の経営学部出身者 販売・営業、マーケティング、事業企画など
経理専門学校の卒業生「専門士」 経理部門の会計・経理の業務
情報処理・情報工学 情報システムの業務

上記は、入管局の審査ポイントである次のⅠ Ⅱを満たしたものです。

Ⅰ:従事する業務が、「人文知識・国際業務」、「技術」の業務に当てはまる専門的・技術的な業務であること。

Ⅱ:大学・専門学校で専攻した分野と関連性のある業務であるか、「人文知識・国際業務」や「技術」の在留資格は許可されません。

 

3 本件ではどうすべきか

正社員として雇用後に従事する業務が、

 

・「人文知識・国際業務」、「技術」の業務に当てはまる専門的・技術的な業務である。

・大学/専門学校で専攻した分野と関連性のある業務であるか、または語学などの外国人の思考・感受性を必要とする業務である。

 

ならば、「人文知識・国際業務」や「技術」の在留資格が許可される可能性があります。

 

Q8 スーパー・量販店で場内運搬・配送担当のバイト留学生を社員として雇用できるか

Q スーパーや量販店で場内運搬や配送担当のバイト留学生を社員として雇用することは可能でしょうか

 

A 1 概説

場内運搬・配送担当の社員としては採用できません。入管法には単純労働に従事することを目的とした在留資格は設けられていません。

したがって、入管局が「単純労働的」と考える業務には、就労の在留資格が出ません。

 

仮に「人文知識・国際業務」や「技術」の在留資格の申請をしても、入管局は、場内運搬・配送担当の業務は、専門的な知識を必要とする業務ではないから、運搬・配送の仕事に該当する在留資格はないと判断し、不許可となります。

入管局は在留資格を審査するときに、外国人の仕事が専門的・技術的な業務なのか、そうではない業務=単純労働かどうか、という視点で判断するのです。

 

2 対応方法

採用には在留資格の許可が前提となりますが、大学・専門学校を卒業した留学生をトラック運転手や事業所構内のフォークリフト運転担当者として採用しようとしても「技術」や「人文知識・国際業務」の在留資格は許可されません。

その他の就労の在留資格も許可されません。

 

留学生をスーパー・量販店で社員として採用する場合、例えば、大学経営学部で流通・マーケティングを学んだ留学生を営業や物流企画担当など、「人文知識・国際業務」の基準に合った業務の担当者として採用するようなケースは、在留資格が許可される可能性があります。

もちろん給与・労働条件や勤務先の事業の安定性・継続性・適正性の要件を満たしていることが前提です。

小売・流通業では海外からのお客様の増加や獲得を図るために、通訳・翻訳や海外取引業務の担当として「人文・国際」の在留資格が許可された外国人の採用を行うこともあります。

 

3 本件ではどうすべきか

バイトの留学生を場内運搬・配送担当の社員としては採用出来ませんので、どうしても採用したい場合は大学の経営学部で流通・マーケティングを学んだ留学生を営業や物流企画担当など、「人文知識・国際業務」の基準に合った業務の担当者として採用する方向で検討することになります。

 

Q9 不動産会社で留学生向け営業担当の外国人を雇用できるか

Q 学生街にある不動産会社で留学生向けの営業担当として外国人を社員として雇いたいときはどうすればいいですか。

 

A 1 概説

近年、外国人留学生の増加に伴い、外国人の母国語で不動産の契約内容などを説明するニーズが増えています。

留学生が学生マンションなどの賃貸物件に入居すると、卒業まで安定した家賃収入が見込めます。しかし、毎月の賃料だけでなく、不動産の賃貸借、売買、仲介などは日本独特の商習慣があり、入居時の敷金・礼金・保証金の取扱を入居希望者に性格に説明し、理解納得してもらわないと、後々のトラブルにつながります。

日本語に不慣れな外国人には母国語で説明すれば納得・理解を得やすく、同業他社との差別化にも繋がります。

 

そのため、中国人留学生の多い地域では、不動産会社で中国人留学生を社員として採用することが増えています。留学生も母国語で説明を受けられるため、安心して契約まで進むことが多いようです。

 

そのように不動産の物件紹介や入居の手続きを、例えば中国人のお客様に中国語で説明し、契約書を作成するのは通訳・翻訳の業務にあたります。

 

大卒・短大卒の留学生が通訳・翻訳業務に従事するときは、給与・労働条件や勤務先の事業の安定性・継続性の要件を満たしていれば、「3年間の実務経験」がなくても在留資格「人文知識・国際業務」が許可されます。この場合は、「国際業務」の基準で審査されます。

通訳・翻訳や語学の指導の業務に就くときに限り、大学・短大を卒業していれば出身学部・学科を問わず、3年間の実務経験が免除されます。

 

大学・短大を卒業してすぐに通訳・翻訳の仕事に就くための「人文知識・国際業務」の在留資格が許可される可能性がある、ということです。

また、留学生が大学法学部で法律や契約を学んだり、経営学部などで不動産業を勉強しているときは、不動産の営業・販売担当として「人文知識・国際業務」を検討することもあります。

この場合は、「人文知識」の基準で審査されます。

このように、留学生の出身学科や専攻内容を活かせる従事業務を検討することがポイントです。

 

Q10 経営学部出身者を営業担当で雇用できるか

Q経営学部出身の外国人を営業担当で雇用するときの注意点はありますか

経営学部出身者が営業・販売の業務に就くときは「人文知識・国際業務」の在留資格を得て働くのが一般的です。そして入社後は大学で専攻した専門知識と関連性のある就くことが前提となります。

 

A 1 概説

「人文知識・国際業務」は文系出身者のための在留し買うです。一般的に、経営学部、経済学部などの留学生が営業の仕事に就くときは、この「人文・国際」を検討します。

この「人文知識・国際業務」の在留資格は、入管局の審査基準によって「人文知識」と「国際業務」の2つに中身が別れています。

 

「人文知識」は、法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する知識を必要とする業務に就くときに、この基準で審査されます。具体的な業務は、営業・販売、企画、マーケティング、財務、会計などの業務です。

「国際業務」は、外国の文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする業務に就くときに、この基準で審査されます。外国人の母国語を活かした翻訳・通訳、語学の指導や、海外取引業務、デザインなどの業務に就く場合です。

 

入管局が在留資格を審査するポイントの一つは、会社で従事する業務が、大学等で専攻した専門分野との関連性がある業務(「人文知識」の基準)かどうか、または語学など外国文化に基盤を持つ思考・感受性を必要とする業務(「国際業務」の基準)かどうかです。国際業務の基準は、外国語を使った業務や、日本人にはない外国人の感性がなければできない業務かどうか、ということです。この他に、給与・労働条件や勤務先の安定性・継続性・適正性なども審査のポイントとなります。

審査は外国人の申請ごとに、個別に審査されます。こういうケースは絶対大丈夫、というものはありませんので注意が必要です。

 

Q11 大学理工学部出身者を技術営業の仕事で雇用できるか

Q 大学の理工学部出身の外国人を技術営業の仕事で雇用するときはどうすればいいですか

一般的には、「技術」の在留資格を検討します。営業でも理工系の知識を必要とする営業職は、「人文知識・国際業務」ではなく「技術」の在留資格に該当するのです。

 

A 1 概説

経営学部出身者が営業・契約の仕事に就くときは「人文知識・国際業務」の在留資格が一般的です。理工学部出身者が、理工系の専門知識がなければできない営業職に就くときは、一般的に「技術」の在留資格が与えられます。営業のしごとなら、必ず誰でも「人文知識・国際業務」の在留資格になるというわけではありません。

 

理系出身者が、大学で学んだ専門的な知識・技術を要する業務で文系出身者ではできない仕事に就くときは、「技術」の在留資格を検討します。会社によって部署名や業務内容の名称はそれぞれ異なると思いますが、外国人が「人文知識・国際業務」、「技術」のどちらの在留資格になるかは、一般的に事務系職種の人にはできない仕事であれば「技術」の在留資格になると考えるとよいです。自然科学の分野に属する技術または知識を要する業務ということです。

このように「技術」の許可基準を満たすことが大学の理工学部出身者を技術営業職で採用する際のポイントとなりますが、会社側の給与水準や事業の安定性、継続性、適正性なども入管局が在留資格を審査する際のポイントとなります。

 

そして、入社後に部署の配置転換をしたときは、在留資格の変更が必要なこともあります。技術営業、機械の設計・開発、機械工場の生産管理や品質保証などの業務間での配置転換であれば「技術」の在留資格が継続されると考えられます。

その外国人が人事異動で会社の中の海外事業全般に関する通訳や翻訳、海外取引業務の担当者に異動するような場合や「人文知識・国際業務」への変更が必要になる場合があります。

 

「技術」から「人文知識・国際業務」への変更が必要な場合は、変更すべき状態になったら速やかに変更手続きをするのが原則です。

 

Q12 大学工学部出身者を「翻訳・通訳」業務で雇用できるか

Q 大学の工学部出身の外国人を「翻訳・通訳」の仕事で雇用するときはどうすればいいですか

大卒・短大卒以上であれば出身学部、学科を問わず「翻訳・通訳」の仕事ができます。「人文知識・国際業務」の「国際業務」の基準で在留資格の審査がされます。

 

A 1 概説

外国人が母国語の通訳・翻訳をしたり、母国語の語学学校の講師などの仕事に就くときは、「人文知識・国際業務」の「国際業務」の基準で審査されます。

「国際業務」の仕事に就くときは、原則3年以上の実務経験がなければ、「人文知識・国際業務」の在留資格は許可されませんが、大卒者等が通訳・翻訳、語学の指導のしごとに就く場合は3年以上の実務経験がなくても許可されます。

短大・大学・大学院を卒業していれば、出身の学部・学科を問わず3年以上の実務経験が免除されます。短大卒以上なら、どの学部でも通訳・翻訳の仕事に就けるということになります。

ただし、この「大卒者等」に「専門士」は含まれませんので注意が必要です。

 

大学の工学部の出身の留学生を「通訳・翻訳」の担当者として雇うときは「人文知識・国際業務」が許可されるのが一般的ですが、入社後の社内部署異動で、機械開発担当や設計担当などになったときは「技術」の在留資格への変更が必要になる場合があります。

「技術」の在留資格は、自然科学分野に属する技術・知識を必要とする場合の在留資格です。社内異動がある際は注意が必要です。

 

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