外国人雇用の基礎知識 在留資格とビザ・外国人雇用できるビザ

 

外国人を雇用しようと考えたとき、最初にぶつかる問題が「ビザ」いわゆる在留資格です。

適したビザが許可されていない外国人は、日本国内で働くことができません。それだけでなく、許可されていないまま滞在していれば、不法滞在となります。

 

在留資格は、入管法によって定められ、入国管理局が審査・許可します。

 

この記事では、外国人を雇用する際にまず知っておくべき事項

・入管法とは

・在留資格とは

・外国人雇用体制が問題でビザが下りない場合

について、説明致します。

 

入管法とは

入管法とは、正式名称を「出入国管理及び難民認定法」といいます。

入管法は、本邦における、すべての日本人と外国人の出入国の管理、及び、全ての外国人の在留の管理を図るとともに、難民の認定手続を整備することを目的とします(入管法1条)。

 

2018年12月8日に改正入管法が成立し、2019年4月1日に施行されました。

 

入管法改正の中でも重要なものとしては、在留資格「特定技能1号」および「特定技能2号」が新設されたことが挙げられます。

 

特定技能1号とは、相当程度の知識または経験を要する技能を持つ人に与えられます。

最長5年の技能実習を修了するか、技能と日本語能力の試験に合格することで取得できます。

在留期間は通算5年で、家族の帯同は認められません。

 

一方、「特定技能2号」は、高度な試験に合格し、熟練した技能を持つ外国人に与えられます。1~3年ごとの期間の更新ができ、更新時の審査を通過すれば更新回数に制限はなく、長期就労も可能となります。また、家族の帯同も認められます。

 

その他にも、今後外国人の受け入れを支援するために、様々な規定が新設されています。

これらの制度の整備に伴い、より一層外国人労働者の雇用が拡大していくことが見込まれています。

 

近年の外国人労働者の増加に加え、入管法改正による外国人受け入れ制度の整備に伴い、外国人労働者の雇用がさらに拡大していくことが見込まれます。

例えば、「特定技能1号」による外国人の受け入れは、5年間で最大34万5150人を目安として行われる予定となっています。

在留資格とは

 

在留資格制度は、全ての外国人の入国と在留の公正な管理を行うために設けられたもので、日本国籍を離脱した者または出生その他の事由により上陸許可の手続きを受けることなく日本に在留することとなる外国人も、在留資格を持たなければなりません。

 

よく、在留資格のことを指して「ビザ」という方がいらっしゃいますが、正確にはビザと在留資格は異なります。

 

ビザ(査証)とは、外国にある日本の大使館あるいは領事館が発給するものです。

大使館ないしは領事館では、外国人のパスポートを確認し、その人が日本に入国しても問題ないという「推薦」をします。

簡単な言葉でいうと、ビザとは、日本の大使館や領事館が発行する日本入国のための推薦状なのです。

 

一方、在留資格は、入国審査時にビザに記載された日本での滞在理由を踏まえて、在留する資格を付与するものです。

ビザの発給は外務省(日本大使館や領事館は外務省管轄です)が担当しますが、在留資格を与えるのは法務省が管轄する入国管理局です。

外務省と法務省では、それぞれに独自の審査基準があります。

よって、ビザが発給されたからといって、必ず望んだ通りの在留資格が付与されるわけではありません。

その点には十分注意してください。

 

現在、在留資格には28種類あります。そのなかには、日本での就労が可能な資格と、不可能な資格があります。

次の項目では、就労可能な資格と就労不可能な資格について説明します。

就労可能資格と就労不能資格

まず、以下の画像をご覧ください。

在留資格一覧表

これは、法務省が公開している、在留資格の一覧表です。

この一覧表にはそれぞれの資格が就労可能かどうかについて詳しく記載されています。

 

在留資格は、大きくわけて

①就労可能な資格(活動制限あり)…表の部分

②就労可能な資格(活動制限なし)…表の部分

③就労の可否は指定される活動によるもの…表の水色部分

④就労が認められないもの…表のオレンジ部分

にわけられます。

 

このように在留資格は、就労できる人とできない人、あるいは就労できるが就ける職業に制限がある人、に区別します。

付与された資格で許可された範囲を超えて就労した場合は、資格外活動罪(入管法70条1項4号 もしくは73条)が成立します。

また、不法就労活動をさせた者についても、不法就労助長罪(入管法24条3号の4イ)が成立するのです。

そのため、就労可能な資格と就労不可能な資格の分類を把握することは、外国人を雇用する上で非常に重要なことなのです。

 

※ポイント

上記の表内オレンジで示されている「就労が認められない在留資格」については、資格外活動の許可を受けた場合は、一定の範囲内であれば就労が可能になります。外国人留学生をアルバイトとして採用する場合などは、資格外活動の許可を受けてもらってから雇用することとなります。

 

実際に企業と入国管理局との間でとくに多く起こるトラブルには、

・他企業から外国人労働者を受け入れた場合に起こるもの

・「短期滞在」の資格でも従事できる業務か、就労可能資格が必要な業務かの判断を誤ったことが原因で起こるもの

 

の2つがあります。

 

これらのケースとはどのようなものなのか、また不許可処分が出た場合にどのような対応をすべきかについて説明します。

特に多い事例

冒頭でも説明したとおり、企業と入国管理局との間で起こりやすいトラブルは、

 

①他の企業から受け入れた外国人労働者の就労資格が問題となるもの

②「短期滞在」資格と就労可能資格で従事できる仕事の違いに理解が無かったことが問題となるもの

 

の2パターンが多いです。

これらは、どちらも外国人の労務管理体制が整っておらず、不備があったことが原因で引き起こされたものです。

 

たとえば、①に当てはまる具体例をあげると、

他社から(派遣や業務委託の形で)外国人を受け入れていたが、本人が持つ在留資格では従事できない業務に就かせていたケース、などがあります。

 

続いて、②にあてはまる具体例をあげると、

海外に拠点がある関連企業や取引先などから外国人労働者を「短期滞在」資格で何度も日本に呼び寄せ、実際には自社で就労させていたケースなどがあります。

 

不許可処分を受けたまま放置するとどうなる?

上記①や②のように、外国人労働者の労務管理体制をおろそかにしていると、入国管理局から不許可処分を受ける可能性があります。

 

万が一、不許可処分を受けたとしても、そのまま放置すべきではありません。

というのも、放置し続けると企業にとって大きなリスクが発生するからです。

 

不許可処分を受けたまま放置すると、企業の名前などが入国管理局のデータベースに登録されます。

そして、それ以降企業が新たに申請などを行おうとしても、データ登録の事実が考慮され、不利になる可能性があります。

いわゆる、「ブラックリスト入り」のような状態になるのです。

 

入国管理局による審査では、外国人を雇用する企業そのものが、法律に則って事業運営をしているかどうかも審査の対象となります。

よって、外国人の労務管理に不備があると致命傷になりかねません。

放置した不許可処分を受けた外国人とは全く別の外国人に対する申請についてでさえも、不許可処分を受ける可能性が格段に上がるのです。

不許可処分を受けたときにすべき対応

外国人労働者の労務管理の不備が原因で在留資格申請の不許可処分を受けた場合は、そのまま放置しないことが鉄則です。

 

では、具体的にどのような対応をすればよいのかというと、正確な事実の調査と具体的な改善策を提示することが重要となってきます。

 

提示の場として最適なのは、不許可処分を受けた外国人の再申請を行うとき、あるいは別の外国人の在留資格取得のための申請時です。

 

不許可処分を受けたら、次の申請を行うまでに、

 

1:なぜ不許可処分を受けたのか、原因となる事実は何か。そして、どうしてその原因が発生したのか。

2:不許可処分の原因となる事実が、再び発生しないためにはどのような改善が必要か

 

の2点について調査を実施します。

 

そして、それらをまとめたものを改善計画書として提出することで、一度不許可処分を受けた件でも、許可がおりる可能性が高まります。

 

1の不許可処分の原因をあげる際は、

・他社から外国人を受け入れたときに、その外国人が持つ在留資格と従事する業務の照らし合わせが不十分であった

・入管法における「短期滞在」資格で就労できる業務範囲の知識が不十分であった

などの内容を、できるだけ詳しく記述することが重要です。

 

2の改善策については、

・入管法の知識を会社全体で徹底していく

・外国人の受け入れ業務に関して、社内でトリプルチェック体制を整える

など、こちらも同じくできるだけ詳細に記述することがポイントです。

 

詳細な記載があり、今すぐにでも実行可能な改善計画書を作成・提出できれば、外国人の労務管理に不備がある企業として判断されず、入国管理局のブラックリストに登録されずに済むケースが多いのです。

外国人雇用に関するお悩みは弊事務所へご相談ください

 

弊事務所では、これから外国人を雇用しようと検討されている企業様からのご相談を受け付けております。

 

入管法は非常に複雑な上、専門的に取り扱う弁護士が少ないのが現状です。

今、御社に懇意にしている弁護士がいたとしても、必ずしも入管法に詳しいとは限りません。

 

弊事務所は、外国人雇用に関するセカンドオピニオンのようにも活用いただけます。

 

初回相談料は無料ですので、どうぞお気軽にご連絡ください。

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