外国人を派遣形態で雇用する際の注意点

外国人を派遣で雇うときの注意点

日本企業が外国人を従業員として雇う場合、

・正社員として雇う

・アルバイトとして雇う

・派遣社員として雇う

といった方法が検討できます。

なかでも最近注目されているのが、「派遣社員として外国人を雇う」方法です。

この形態で人材を雇うと、雇う側の会社、雇われる側の外国人の両方にメリットがあるのです。

ただし、メリットがあるのと同時に注意しなければならないデメリットもあります。

この記事では、派遣形態で外国人材を雇う時のメリットと、注意しておくべき点について説明します。

外国人の雇用方法

外国人を雇うときには、

・正社員

・アルバイト

・派遣社員

などの方法で雇用することが考えられます。

正社員

日本で正社員として働く外国人は、年々増加の傾向にあります。

外国人雇用の活発化の裏にあるのが、日本の人手不足の問題です。労働人口の低下が著しい日本においては、外国人労働者を正社員として雇うことで、貴重な労働力を確保しようという動きが出てきています。

また、国籍を問わずに人材募集をすることで、専門的な知識や経験を持つ人を雇い入れられます。

また、語学力が豊富な人材を雇うことで、社内のグローバル化を推し進めることができます。

将来的に海外事業を展開する予定がある企業では、外国人の採用を積極的に行う傾向にあります。

ただし、外国人を正社員として雇用する場合、雇用に伴う手続きが面倒というデメリットもあります。

日本で外国人が働くためには、いわゆる「就労ビザ」と呼ばれる就労可能な在留資格の取得が不可欠です。

在留資格を就労に適したものに変更しなければならない場合、たくさんの資料を集めた上で入国管理局に申請しなければならないという手間がかかります。

また、外国人が持つ在留資格で認められた範囲外の仕事をさせた場合、「不法就労助長罪」(入管法73条の2)に該当する恐れがあります。

就労可能な在留資格を取っておしまい、ではなく、その後も適法な状態を維持できるようにアフターフォローしなければなりません。

アルバイト

外国人留学生をアルバイトとして雇用している企業も増えています。

正社員の場合、外国人は在留資格の認められた範囲内でしか働くことができません。就労ビザでは、外国人が単純労働をすることを認めていませんので、レジ打ちや飲食店のホールスタッフなどの働き方はできません。

一方、留学の在留資格を持つ外国人であれば、「資格外活動の許可」を申請して得ることができれば、いわゆる単純労働も可能となります。

(ただし、パチンコ店やキャバレー、ホステスやホストのいる飲食業、いわゆる風俗営業でアルバイトすることは禁止されています)

幅広い業務を任せることができるのが、外国人をアルバイトで雇うことのメリットと言えます。

一方で、「資格外活動の許可」を得て働くアルバイトには、「週28時間以内しか働けない」という制限があります。

しかも、この28時間というのは、残業時間を含みます。またその外国人が複数の企業でアルバイトをしている場合は、全てを合わせて週28時間です。

決められた時間を超えて働かせた場合、雇った企業が不法就労助長罪として処罰される恐れがあります。

様々な業務に就ける利点がある一方、細かい時間管理をしなければならないのがデメリットとなります。

派遣社員

外国人を派遣社員で雇うと、正社員として雇う場合に比べて企業側のリスクを減らせるというメリットがあります。

たとえば、外国人を正社員として雇う場合、日本語でのコミュニケーション能力が低く仕事の指示が上手く伝わらない、価値観の違いで早期退職してしまう、といっったリスクがあります。

派遣社員として雇えば、これらの問題を最小限に抑えることができます。

派遣形態での雇用は、外国人本人にもメリットがあります。日本に長期滞在するための在留資格が得られるという点や、派遣経験が今後のキャリアの第一ステップとして適している点がメリットにあたります。

よって、企業と外国人双方がウィンウィンの関係性を築けるのが派遣社員で雇う場合の特徴といえます。

一方で、デメリットとしては、長期間続けて働きたいという人が集まりづらいことが挙げられます。退職することを前提に入社される方が多いため、人材が長くとどまりづらいという問題があります。

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派遣形態で雇用する際のメリット

近年、外国人を派遣形態で雇用されている企業が増えている理由として、リスクを抑えつつ外国人材を自社に受け入れられるメリットがあるからだと考えられます。

上記でも簡単に触れましたが、改めて派遣形態で外国人を雇用する場合の利点についてご説明します。

ミスマッチなど、リスク回避ができる

外国人を日本企業で受け入れるとなると、いくつかのリスクが発生します。たとえば、

①日本語力のリスク

②価値観のミスマッチのリスク

③仕事に関する考え方のリスク

などがあたります。

①日本語力のリスク

外国人雇用の際は、彼らが持つ日本語能力の高さが仕事の効率に直結します。

たとえ、面接したときは何ら問題ない受け答えをしていたとしても、いざ一緒に仕事をしはじめてみると細かいニュアンスが伝わらず、指示が理解できないことも有りえます。

派遣社員として雇えば、派遣会社が日本語能力をチェックしているケースが多いため、安心して受け入れられるのです。

②価値観のミスマッチのリスク

外国人の方の価値観は日本人と全く違うこともあります。

宗教観や習慣、仕事への向き合い方など様々な部分で企業の雰囲気とのミスマッチが発生する恐れがあります。

例えば、面接では積極的で明るい雰囲気に見えた方でも、実際は仕事とプライベートの区別をはっきりとする方で、周囲の人間と馴染もうとせずに淡々と仕事をこなそうとする場合などが考えられます。

③仕事に関する考え方のリスク

外国人を雇用した場合に発生しやすい問題として、早期退職があります。

そもそも、終身雇用という考え方は日本独自の文化です。海外においては、より良いキャリアが築けそうな職場が見つかれば、今の職場はためらいなく辞めて次に移った方が良いと考える傾向が強いです。

実際に正規職員として迎え入れた外国人が早期退職してしまった場合、もし人材紹介などで紹介料を支払っていたのであれば、そのお金が無駄になってしまいます。

外国人を派遣社員として受け入れれば、これらのリスクを抑えて外国人材の確保が可能です。

外国人側も長期で日本に在留が可能

外国人側にも派遣社員として働くメリットがあります。

まず、派遣の経験は日本での就労経験にカウントされる点です。多くの日本企業は就労経験のない外国人の雇用を避ける傾向があります。

派遣形態だと比較的採用されやすいため、日本でのキャリアの第一歩として選ばれることが多いのです。

また、派遣社員として働いていれば、日本に長期滞在が可能な在留資格が得られます。例えば、「技術・人文知識・国際業務」や「特定活動」などが考えられます。

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派遣形態での雇用時のリスク

派遣形態で外国人を雇用すると大きなメリットを得られますが、リスクもあります。

特に考えられるのが、複雑な入管法や在留資格制度を把握しないままに雇用したことが原因で不法就労をさせてしまうことです。

外国人に不法就労をさせると、外国人本人だけでなく、雇っていた会社も不法就労助長罪に問われる可能性があります。

不法就労助長罪に問われた場合、事業主は3年以下の懲役または罰金300万円以下の罰金(入管法第73条の2)が科されます。

さらに、不法就労助長罪の摘発で増えているのが、これまで多かった「従業員が不法就労状態だと知りながら働かせていた事業主」だけでなく、「不法就労だと知らなかった事業主」の摘発です。

近年では、「不法就労状態だと知らなかった」という言い訳は通用しません。

下記では、実際にあった違反事例について、「派遣会社の違反事例」と「派遣元への違反事例」に分かれてご説明します。

派遣会社が労働者派遣事業の許可を取り消された事例

下記は、厚生労働省がホームページ上で公開している情報を抜粋したものです。

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厚生労働省は、令和3年11月30日付けで、株式会社ベスト・パートナーの労働者派遣事業の許可を取り消しました。詳細は以下のとおりです。

1労働者派遣事業の許可の取消しを行った事業主

(1)名称 株式会社ベスト・パートナー

(2)代表者職氏名 代表取締役 菅野 重幸

(3)所在地 馬県桐生市相生町5丁目271番地の26

(4)許可に関する事項
 労働者派遣事業
 許可年月日 平成20年12月1日
 許可番号 派10-300263

2処分内容
 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「労働者派遣法」という。)第14条第1項第1号の規定に基づき、令和3年11月30日をもって、労働者派遣事業の許可を取り消す。

3処分理由
 株式会社ベスト・パートナーは、出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号。以下「入管法」という。)第73条の2第1項の規定に基づき罰金の刑に処せられ、令和3年2月13日に刑が確定し、労働者派遣法第6条第1号に規定する欠格事由に該当することとなったため。

厚生労働省HP より

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このように、違法な形態で外国人労働者を派遣させた場合、入管法違反で罪に問われる可能性があります。

また、罰金などの刑にとどまらず、労働者派遣事業の許可が取り消されることもあります。

入管法違反に関する取り締まりは年々厳しくなる傾向にあります。

よって、自社へ外国人を派遣社員として受け入れたい場合は、きちんと法令遵守している派遣会社と契約するとともに、専門知識のある第三者からのチェックが必要です。

外国人派遣労働者を受け入れていた企業が書類送検された事例

派遣会社だけでなく、外国人派遣労働者を受け入れていた企業が処罰されるケースもあります。

例えば、2021年12月には、食品メーカーの中村屋が不法就労助長容疑で書類送検されています。

下記は、ニュースサイトの引用です。

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ネパール人を工場で不法就労させたとして、警視庁組織犯罪対策1課は17日、入管難民法違反(不法就労助長)容疑で、食品メーカーの中村屋(東京都新宿区)と、同社埼玉工場(埼玉県久喜市)の採用担当の係長(52)を書類送検した。係長は容疑を認め、「違法と分かっていた。人手不足解消のためだった」と話しているという。

送検容疑は2018年11月~21年6月、通訳などの在留資格で来日した20~30代のネパール人6人について、資格外の業務と知りながら同工場で不法就労させた疑い。
 同課によると、同工場は肉まんやあんみつを製造する拠点工場で、18年5月以降、さいたま市の人材派遣会社を通じ、外国人約20人を作業員として受け入れていた。労働時間や業務内容は実質的に中村屋が決めていたという。
 中村屋は取材に対し、「派遣会社に依頼していたので詳細を把握できなかった」とコメントした。

JIJI.COM より引用

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本来、派遣社員と派遣先企業の間には、直接の雇用契約はありません。そのため、雇用形態の管理などをおざなりにしてしまいがちです。

実際、中村屋の件でも、「派遣会社に依頼していたので詳細を把握できなかった」とコメントしています。

しかし、実際には外国人を直接雇用していた派遣会社だけでなく、派遣先企業も処罰対象となる可能性があります。

派遣社員を受け入れている企業が処罰されるのを防ぐためには、不法就労に関するチェックを派遣会社に完全に委ねてしまうのは避けた方がよいでしょう。

外国人従業員を受け入れる場合は、その外国人の在留資格申請にあたって、派遣会社がどのような内容で申請し、どのような許可が得られているのかについてすり合わせをした方が後々にトラブルへと発展するのを防げます。

受け入れ企業側に入管法に関する知識を持つ方がいない場合は、専門家の意見を聞くことも重要です。

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外国人を派遣形態で雇用する際の注意点

上記でも説明しましたとおり、外国人を派遣形態で雇用する場合は、メリットがある一方で注意すべき点もあります。

具体的には、

・在留資格内容の確認

・外国人雇用状況の届け出の提出

・派遣終了後の退職証明書の発行

などが考えられます。

在留資格内容の確認

外国人が派遣の形態で働く場合、入国管理局は在留資格該当性について、派遣先での業務内容によって判断されます。

ここでいう在留資格該当性とは、外国人が行う活動が、入管法別表に記載された在留資格ごとに定められた活動に当てはまることを指します。

派遣社員の場合、外国人の在留資格を申請するのは直接雇用関係のある派遣会社となります。派遣会社が派遣先の業務内容に基づいて外国人の在留資格を申請していれば問題ありませんが、もし実際の業務内容と違う内容で申請していた場合、後から在留資格取消となる恐れもあります。

全てを派遣元会社にまかせてしまうのではなく、外国人が取得した在留資格が、派遣先の業務内容でも有効かどうかを事前に派遣会社と確認しておく必要があります。

外国人雇用状況の届け出の提出

外国人雇用状況の届け出とは、外国人を雇い入れる企業がハローワークを通じて厚生労働大臣に申し出るものです。

この届出は全ての事業主に義務づけられており、怠ったり、虚偽の届け出を行った場合には、30万円以下の罰金の対象となります。

この届出は、外国人を正社員として雇う場合ではなく、アルバイトや派遣社員として受け入れる場合にも必要です。

派遣社員として雇う場合は、直接の雇用主である派遣元会社に届け出義務が発生します。

派遣社員を受け入れる場合は、派遣元会社がきちんと届け出を行っているか確認しておくとよいでしょう。

派遣終了後の退職証明書の発行

外国人が退職するときには、退職証明書が不可欠です。外国人が在留資格を変更したり、就労資格証明書の交付を申請したりするときに、添付資料として提出する必要があるからです。

こちらも、発行は基本的に直接雇用関係がある派遣会社が対応します。が、きちんと対応されているか確認しておけば、後にトラブルとなることを避けられます。

派遣形態での外国人雇用を検討されているなら弊所へご相談ください

ここまで何度もお話をしておりますが、外国人を派遣社員として受け入れる場合は大きなメリットもある一方で、デメリットもあります。

自社で直接雇用していなくても、派遣契約や業務委託契約で自社に受け入れる外国人にも入管法の規制が適用されるからです。

事実、派遣会社を受け入れていた企業が入管法違反で罰せられるケースも増えています。

受け入れ企業としては、トラブルが発生するよりも早く、正しい知識を持つ専門家に相談することが重要です。

しかし、実は全ての弁護士が入管法に詳しいわけではありません。

むしろ、外国人労務に関しては、知識や経験が豊富な弁護士は少ないのです。

弊所では、外国人労務に関する経験と実績を持つ弁護士が皆様のご依頼をお受けします。

使用者様からのご相談は初回無料でお受け付けしております。

どうぞお気軽にご連絡ください。

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